keyA-2,D-2共通:無限想歌2:ture end:とりあえずの、選択
あと、少し。
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「ーーーなにが起こった?」
俺は目の前で起こった現象を解釈しかね、一度思考を停止させた。
……事の流れは、単純なはずだ。
少女の放った言霊によって、念から引きずり上げた少年の魂が活性化。
それを皮切りに、少年少女、そして、念の魂が共鳴連鎖を起こしーーー今、俺の目の前には。
「……」
小さな女のガキが、地面に倒れ込んでいた。
そう、小さな、女のガキがーーーいや。
……念が、突っ伏していた。ついさっきまで暴力と悪意をばらまいていた、「あの念」が突っ伏し、倒れている。
姿カタチも変えず、先ほどのまま。煙蛇が引っ込んでいるという違いはあれど、しかし、見間違いようも無く、「怨念」そのものだった。
それが、地面に突っ伏しピクリとも動かない。
(魂の形状に変化は無い。ただ、気を失っているだけだ。あれは、念だ。念が、気を失って倒れているだけ……本当に、それだけか?)
先ほどの共鳴連鎖で生じたエネルギーは、明らかに魔法クラスのものだった。
実際、魔法の伝達者であるマナ共の歓喜を俺は耳にした。
その魔法を支える根源の出所は、共鳴を起こしたガキ共の魂と、500年ものの念。
連中は魔法にエネルギーを注ぎ込みすぎたせいか、ピクリとも動かない。
もはや、この世界で動いているのは俺と、遠くで同族を蹂躙する人間どもだけ。
(ありえない。
あれだけのエネルギーが励起され、世界に何の変化ももたらさずに消滅するなんてこと、絶対に)
現象をそのまま飲み込めば、連中の生んだエネルギーが念を昏倒させるのに利用されたとみるべきだろう。
単純に考えれば、それが順当なんだろうが、しかし、それにしては結果がしょぼすぎる。因に結果がついていっていない。
この状況を作り出すだけなら、さっきエネルギー量の1/1000でも十分すぎるほどだ。
等価交換が原則のこの世界では、因果に断層が生まれてしかるべき……なのに。
(なにも、異常はない。これが、等価なんだ。
魔法が引き起こした結果が、この状況……くっそ!)
異常なエネルギーの励起に、マナの歓喜。
それは、奇跡の成就を意味している。にもかかわらず、「奇跡なんてものは起こっていない」ーーーそれが、現実だ。
(どうする? 今なら、確実に殺れるはずだ……)
幸いにして、ガキ共は仲良く混沌中だ。
シロがこの場にいればゴネタだろうが、それもない。ただ、未だに転移が起動しないのも心配の種ではあるが……
(とりあえず・・・・・・殺しとくか)
俺の目はしっかりと念の核を捉えており、この状況で殺し損ねることはありえない。
百歩間違ったところで殺し損ねても、百一歩目で殺せる余裕すらある。そう、殺せるんだが・・・・・・
「さりとて、そなたは迷っておるようじゃの、旅人よ。殺せるものをーーー殺すべきものを殺すことを、そなたは・・・・・・
それが、そなたが未来にて刻んだ時なのじゃな?」
ふと、声のする方に視線を上げた。
火の粉が空から降り注ぐ中、翁の面を被った聖霊が、俺を見据えている。
・・・・・・なんだ?霊視女の式か?微かだが、あの女の匂いがするが・・・・・しかし、ゲートが使われた気配はなかったが?
「警戒を解いてくだされ、旅の人。このとおり、わしは神のなり損ないじゃ。
契約のうちでしか、自由は許されぬ身。そうそう好き勝手には、振る舞えぬゆえにの」
かかかと笑う、神になり損なったーーーー聖霊種。
そうピリピリするなと俺に笑いかけるが、胡散臭すぎる。
ただ、本人も口走っていたが、やつが相当の高位存在であることは間違いない。
おそらく、俺がガチでやっても、勝てる相手じゃない。
文字通り、手の届く場所に、あの聖霊はいない。
「契約で縛られた聖霊が、何の用だ?俺たちにかまってくれるなよ。
管轄外なんだろ?それなら俺も安心できるが、だが、あんたはこうして此処にいる。こうして干渉している以上は、これがあんたの管轄内であるーーーって、ことだろ?」
俺の言葉に、ふむと頷く聖霊。
「確かにの。そなたの言うとおりじゃ。『時』にこれだけの干渉をされた以上、わしは本来の役割を果たさねばならぬ。
ふむ。果たさねばならぬのじゃが・・・・・・・しかし、いかんせん、『上』の方が大人しいでの。本来なら、
こと今回の事象を『黄金の門』は許さぬはずなのじゃが、しかしの・・・・・・・そなたは、知っておるかの?
さきの魔法では、この事象は許されぬということを。『この結果を導く対価としては、先の因では及ばぬということを』」
やつの言っていることは半分以上理解不能だった。
・・・・・・にしても、さっきから不可思議なことを口走る、聖霊種だ。
この状況に、因が及んでいない?逆だろうが、どう考えても。
「あれだけ魔力の励起があって、この結果に不十分だってのか?
どういうことだ?あんた、「何」を視てる?」
聖霊種の懐を探るように、俺は目を細めた。
霊視能力者ほどではないが、俺とて魔術をかじった手前、やつらの真似事ぐらいできる。
・・・・・・だが、まあ、無理だった。
そら、そうか。身の程を超えすぎてるしな。
「・・・・・・ふむ。因が過ぎたるとな?
そなたの眼には、これはそう映るのか・・・・・・なるほどの」
ニタリーーーと、翁の面がゆがんだ。
いびつに歪み、俺ではなく、目の前の念を見つめる。
ーーーーこれは、なにか、まずい気が!!!
「っち!」
直感に身を任せ、俺は精霊種に突撃した。
さっきまで念を殺す気まんまんだった俺だったが、今は念を守るために体にムチを打っている。
なんとも筋のとおらない話だが、仕方ねぇ。
あの翁の正体が分からない以上、ここはこうするしかーーー