KeyA-2,D-2共通:最優先事象:その、先へ:true end rute
過去が未来を否定しても、未来が過去を救えるなら。
ending3:true end rute
繰り返す意味3:無意味な世界で意味を視る
汝の名を問う:存在という、存在
相克する因果:手を取り合う、二つの願い
相克する因果:答えー相克融和の幻想励起:寿小羽
「これで、いいの。それに、これ以上「私」は、生きていたくない。
間違いから始まったわたしは、ここでーーー(いつからだって、始められる)」
私を見送る「わたし」の声に重なるように、声が、聞こえた。
その声は銀色の声で、優しい声で。
そして、それは一筋の希望のように感じた。
だからこそ、私は口にしてみる。
「いつからだって、<私たち>は始められる!
だって、<私たち>は二人で、<私>なんだから!私が大丈夫なら、「あなた」だって大丈夫なはずなんだから!
ふたりで!ねぇ様が大好きな私と、ねぇ様が大嫌いな「私」で、初めて<私>……!」
受け売りで空っぽな言葉を、ただの感情で口にして、私は、理屈をこねた。
ただただ、受け入れられなかったから。目の前の「私」を見捨てることーーーそれが、全てを否定することに通じる気がしたから。
だから、理屈をこねてみた。感情のままに。
それは結果ありきのお粗末なもので、それがとおる道理なんて、世界のどこにもなかった。今のこの瞬間だって、十二分に奇跡だって分かってる。
こんなふうに「やり直せる」機会を貰えるだけでも、十分だってこと、分かってる!
けれど、でも、ぜったい、「それ」は、間違ってる!
私が正しくて、「私」が間違いだなんて、そんなこと、ぜったいに!
……だって!
「……そうだよ。間違ってなんかいない!
「あなた」が生まれたことが間違ってるなんてこと、絶対に、ない!そうだよ!そうだ!
だって、「あなた」の始まりは、ここにある!今も、ここに!だから、終われないんだ!終われるはずがない!だって、「あなた」は、「あなた」の始まりはーーー」
「それを、言うなーーー!!!!」
……目に涙を浮かべ、「私」が私を睨みつける。
そして、さっさと逝ってしまえと。ここから、出て行けとーーーーでも。
「私はねぇ様のことが大好きだよ!大好き!兄さまと同じくらいに、母様や父様、婆やと同じくらいに大好き!でも、だから……私は、『憎んだ』の!だから私は、<わたし>になったの。
裏切られたからなんて、そんなの、きっかけにすぎない!裏切られたと思ったことなんて、きっかけに過ぎないんだよ!たとえそう思ったことが間違いだったとしても!そのことが、間違いだったとしても、わたしはーーーわたしは……憎んだんだ!」
<因>
ねぇさまのこと、大好きだった――――
<果>
―――呪ってやる。
<因>
ねぇさまのこと、信じてた――――――
<果>
--------祟ってやる。
<因>
ねぇさまのこと、心から、愛していた―――――
<果>
--------たたり、のろい、そして・・・・・・
「ちがうちがうちがう!!!!
「私」は、愛してなどいなかった!「私」は、お前なんかと違う!おまえなんて、大嫌いだ!」
「そんなの、私だって同じだよ!私だって、「あなた」なんか大嫌い!」
力が、拮抗する。
私を救い上げようとする兄さま達の声ーーーそれを塗りつぶすように、<私たち>の間には。
兄さまと、姉様と、そして、わたしの間にある絆以上の絆が、<私たち>の間には在った。
それは、そもそもが間違いで。
その絆は、生まれたことが間違っていて。
それは、相克する因果だった。
ふとしたきっかけで、対岸に行き着いてしまった、誰かを思う、<わたしたち>の心。
あの時代、裏切りなんてもの、尊い命の息吹と同じくらいに溢れていた。
裏切り者なんて、それこそ、五万といたんだ。でも私は、彼らを憎んだりしなかった。
彼らがいることは知っていても、憎んだりはしなかった。軽蔑したりはしなかった。
だって、それが<因>ではなかったから。
憎いという<果>の、始まりでなかったから。
そう、<わたし>の始まりーーーそれは私で、そんな私の行き着いた先が、「わたし」。
大好きだったから、憎んだ。裏切られたからじゃない。
大好きだったから、憎むしか無かった。
「<私たち>は、離れちゃダメなの!
私は「あなた」で、「あなた」は私!
二人で帰るんだよ!そして、ごめんなさいするの!二人でーーー『でも兄さまは、「私」のことを呼んでくれてないじゃない!』」
わたしの声を無視して、「私」は叫び声をあげた。
苦しくて苦しくて、苦しくて。兄さまに、その名を呼んでもらえないことが苦しくて。
……大好きな気持ちがつながって生まれた「この奇跡」では、私は救われても、「わたし」は救われない。そう、分かっているから。
自分という存在が、どういうものか、分かっているから。だから、「私」はそれを望んだ。だから、私はそれを望んじゃいけないんだ。そのために、わたしたちは二つに分かれたんだ!
「兄さまが呼んでくれているのは、わたしじゃない!<わたしたち>なんだよ、「あの兄さま」が……兄さまじゃない「兄さま」が手を伸ばしてくれているのは、<わたしたち>なの!
信じて!あの、「兄さま」を!あの、「ねぇ様」を!私と一緒に!」
私は、いやいやと頭を振る「私」に手を伸ばした。
絶対に、離すまいと。ぜったいに、離れるまいと。
二人で。
二人で、あの二人のもとに、帰るのだとーーー
あらかたの問題提起は終わりました。
あとは、回収だけです。