Gating D-臨界点
選択を。
key-2を選んだ方のみ、読み進めてください。
key-1の方は別のお話へ分岐します。
Tips~chance:兄:汝の名を問うー君の名を、呼ぶ
「自分が何者なのか」っていう問いかけは、いいあえて妙なんだよね。
だって、何者なのかという問いの対象が「自分」でありながら、それでいて、その問いに答えるのもまた、「自分」なんだから。
一見すると、閉ざされた概念みたいじゃない? この質問って。
自分で問うて、自分で答えるーーーそれは、ある意味では完全な「個」という解に直結するんだろうけど・・・・・・でもね。
この問いかけに、そう臨むことは、本質的に間違ってると思うんだ。
だって、「自分」なんてものは、「他者」がいなければ生まれないんだから。「他人」がいて、「自分」がいる。「自分」がいるから、「他人」がいる?
ふふ、鶏と卵の問題みたいだよね?どっちが「因」で、どっちが「果」なのか。でもまぁ、それは今回は関係ない話か。
要は、「自分」という存在を成立させるには、「他者」という存在が前提に無ければならないってこと。だったら、「他者」を排して導きだした「自身」という答えは、そもそもがおかしいってことになるよね。
……だからね。
だからこそ、問い続けなければならないんだ。
それは、とてもつらいことだけれど。でも、それを成すことができれば。
そうすれば、自然と自分の「立ち位置」が見えてくるはず。
多くの場合、それは自身が幾重にも張り巡らされた縁に絡み取られて、身動きが取れなくなっていることを自覚させるだけで……終わるのだけれど。
でも、その上で。
その、縁のーーー張り巡らされた因果の網の中、それでも尚、君が何かに臨むのであれば。何かに臨むことを、望むのであれば。
君は、「誰か」に成るよ。
君は「誰か」に成って、そしてーーーその時君のそばには、「誰か」がいるはずだ。
「誰か」という君がいて、「誰か」という他者がいて。
そしてそこに、ほんの人に握りでもいい……互いを想い合う、心の縁が延ばされていれば。
君は、「世界の定義する君」ではなく、君として、物語を紡ぎ続けることができるはずさ。だから、屁理屈をこねるんだ。
彼はもう、「兄」であることを選んだ。
彼は、選んだんだよ。そして、それだけでは、物語は突破できない。本来はそれだけで十二分に奇跡なんだろうけれど、でも、その先がある。
けれど、彼が「兄」であり、君が「妹」であるだけでは、その先へは至れない。
彼は、彼だよね? 君が、君であるようにさ。
彼は「兄」であると同時に、彼なんだ。だから、お願いだ。
どうか、選んでほしい。君が、君であることを。
たとえ世界が許さなくとも、それでも。
君には、君でいて欲しいんだ。
keyA-2,B共通:相克する因果:breakthrough-汝の名を、問う:寿小羽
それは、私を呼ぶ声だった。
「私」ではなく、私を呼ぶ声。
でも、他の人が聞けば、それはただの叫び声にしか聞こえなかったかもしれない。
「これで、いいのよ。これで、間違いは正される。物語は、めでたしめでたしで括られるの」
渦巻く憎悪の中にあって、私を呼ぶ声は響き続ける。
必死に私へと、手を伸ばしてくれている。私には、分かる。あの声は、私を呼んでいると。「私」ではなく、私を。
だから、「私」は。
そう、目の前の「私」は、顔をくしゃくしゃにしながら、それでも、「これでいいの」とーーー
「ほら、聞こえているんでしょう?兄さまの、あなたを呼ぶ声が。あの声の方に手を伸ばせばいいの。それだけで、あなたはここから出られるわ。そして、兄さまやあの女と幸せに過ごすの。あの女を憎む「私」にそれは不可能だけれど、あなたならそれができる。多分このために、私たちは別れたのよ」
一つを二つに分けた意味ーーーそれは、私の中にあると、銀髪の少女は言っていた。その意味が、これなのだろうか?私の中にある姉様を憎む「私」を私から引き離し、おいていくーーーこの、悪意の渦の中に。
そうすれば、私は兄さまや姉様と幸せに過ごせるーーーの?
「あなたは「わたし」で、「わたし」はあなた。
けれど、「私」は、「間違えた私」だから。ありもしない妄想に取り付かれ、数百年という時を呪って過ごした、愚かな……でも、だから、これでよかったの。一つを二つに分けた意味は、ここにあったのよ。生まれたことが間違いだったのよ、「わたし」は。だから、それが正されるの。「私」は憎悪の渦に消え、あなたは優しき場所の帰る。ただ、それだけのことよ」
声が、聞こえる。私の名を呼ぶ、必死の声が。
それは、兄さまの心の声。兄さまの……いえ、兄さまと姉様の、魂の、叫び。
それは、私を呼ぶ声だった。まちがいなく、この、私を呼ぶ声。
けれど。
「ちがう……ちがうよ。たしかに、この声ーーー兄さまは、私を呼んでくれてる。
でも、違うの。兄さまが呼んでくれてるのは!必死になって手を伸ばしてくれているのは、私じゃない!」
私は、私呼ぶ声に、ぐいぐいと引き上げられそうになる。
そんな私をみて、目の前の私は「もう行って」と再び笑いかけてくれた。
……でも、そういうことじゃない!こんなの、絶対におかしい!
だって、だって!
「だって、こんなのおかしい!おかしいよ!
「あなた」は、私なんだよ?そして、私は「あなた」なの!
それなのに、わたしだけなんて!」
ーーー体が、浮き上がる。上へと。
声の方へと、引き寄せられる。このままなら、私は多分、救われる。けれど、私は納得してない。だって!だって!
(この運命の先でお前は、幸せになる)
あの銀髪の少女は、言っていたはず。過酷な運命の末に、<私>は幸せになれると。
その<私>は、私だけじゃない。ねぇ様が大好きな私と、殺したいほどにねぇ様を憎む「わたし」。
両方で、<私>なんだ!
(繰り返す命は幾度の漂白を超えて、<お前達>のもとに。
その意味を決して、はき違えるな)
<私たち>のもとに、兄さまと姉様はきてくれた!
私じゃなく、<私>のものとに!
だから、これでいいはずがない!だって、このままじゃ、私だけが!
「これで、いいの。それに、これ以上私は、生きていたくない。
間違いから始まってしまった「わたし」は、ここでーーー」
※
選択してください。
優先されるべき事象を、決定してください。
KeyD-1:最優先事象:世界の理
KeyD-2:めでたしめでたし
選んでください。
あなたの、意思で。この物語の、結末を。
いわゆるgood end ruteと、
true end ruteの分岐です。