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無限想歌  作者: blue birds
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keyA,B共通:想いの歪曲成就:巡る想い、断ち切る覚悟:絆vsマイク

互いを思い合う心は秩序のもとに理路整然と断罪され、報われること無く……


それも運命です。

けれど


Tips~迷子の想いと、約束の時



 届かない想いが在るからこそ、想いが届くという、ただそれだけのことにーーー価値が生まれる。



 そしてその裏返しに、全ての想いは、いつか届くんだよ。

 それが何時になるかなんて誰にも分からないけれど。


 けれど、想いは届く。それは、当初のカタチとはかけ離れたものになってしまっていることが多いけれど、それでも。




 それでも、迷子の想いが誰かの元に届けられたその時に。

 その、守られずはずもない約束の時に、その想いに関わった全てのモノが、幸せになれたらとーーー私は、祈っている。







keyA,B共通:想いの歪曲成就:巡る想い、断ち切る覚悟:絆vsマイク



 やつらの想いは、ここで断ち切る。

 たとえ、それが本来は報われるべきものであるとしてもだ。





「やめ、af、! か;。え」

「やめて!!!これ以上は……」






 ついさっき東とかいうガキを悪意から引き上げたときに、俺は、視た。

 悪意の底に沈む、もう一つの輝きを。少年の魂にすがるように手を伸ばす、一輪の願いを。それは少年の魂とは違い、まだ幼く。

 しかし、その心の手は、空を切ることになった。

 それは心の幼さ故ではなく、その心自身の選択だった。




 少年へとのばされた手は、途中でおろされたのだ。輝きの持ち主は、掴もうと思えば掴めたはずの少年の魂を、見逃したのだ




 ……多分あの手の持ち主は、「寿 小羽」と呼ばれたものの原型だ。

 こいつらが幸せであった頃に刻まれた絆のーーー享受者。それを、核と成す存在。少年と少女を愛し、運命を憎むことになった、化け物の原型。されども、堕ちたる者の、最後の輝き。そいつは、「手を下ろす」ことを選んだ。ならば。




「目をつむってろ、女! あと少しで終わる! てめぇはそいつを抱えてりゃいいんだよ!」





 すべて、断ち切る。

 はかり間違って紡ぎ直された物語を、ここで。



「……起きてよ、利也!」






 物語を、終わらせる。

 もう二度と、今回みたいな騒ぎが起きることのないように、徹底的に握りつぶす。

 そのために、やつの核をたたく。

 精度の問題だが、うまくやれれば、魂は消滅するはずだ。



 失敗は、許されない。



 

 

 化け物の魂が、輪廻の輪から解放されるようにと。

 すべてを忘れて、無へと帰れるようにと。

 もう、これ以上、その魂に痛みを刻まずにすむようにと願いを込め、俺は、力を振るった。

 そして。



 「お兄ちゃんでしょ!!!!」ーーーと。








 時間にして、数刻のずれだった。

 俺の力がやつの核に届くまでの、ほんの数秒に、その呪文は、詠唱された。

 それは本来、ただの言葉だった。それが、意味を持つことなどーーーましてや、俺の殺意をはね除けるほどの意味を、持つはずが無かった。それなのに。





「は!? まじか!!?」






 数千年という長い旅路を彷徨いながら、「魂の攻防」では敵なしであった俺の一撃を。

 正真正銘の、本気を。




「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」




 絶叫からなる絶対防御の概念が、俺の一撃を霧散させていた。

 絶叫を皮切りに励起した、魂の波動ーーーの、共振……?

 この力、連中のものか?





「っち! シロ! 引き上げろ!」




 ピーピーと、救命信号をあげる。

 二回ならせば、それは「引き上げろ」ということ。三回なら、「帰還を待たずにゲートを閉じろ」と。

 こちらに来る前にそう決めておいた、俺とシロとの緊急時の連絡方法だった。



 ……とにかく、異常事態だった。

 「あれ」に接触された悪意を捨て置くことは避けたかったが、いかんせん、状況がつかめない。まるで対応策が分からなかった。

 なにがどうして、こうなったのか。ただ500年を漫然と存在していただけの悪意に、それに呑まれ殺されかける少年少女。連中の魂が、おれをはじける道理なんて無い。


 真っ当に考えたら、それはあり得ない。だから、これは異常事態だった。

 本来の域を超えた、あり得ざる自称

 けれど、それをすべて丸く解決する方法がある。



 今なら、少年少女をつれてゲートの向こうに帰還できる。

 その上でゲートを閉じれば、問題は無い。「こちらの世界」には禍根を残すことになるが、「俺たちの方」のは、全くもって、無関係だ。



 だから俺は、脱出を決意した。

 俺と少年少女のあいだに細いパスを通し、ひとつの存在としてカテゴライズする。

 この状態で転移の対象となれば、三人揃って帰還成立だ。




 俺は転移魔法独特の揺らぎに、備える。

 すでに緊急信号をあげて1分ほど経過していた。

 術者のシロがテンパっているとしても、転移は、もうそろそろだ。



 ゲーティングが確立している時点で、魔術の施行は格段に難易度が下がる。

 それなのに。




(なにやってんだよ、あの馬鹿が!さっさと施行しろ!)




 焦る俺をよそ目に、肝心要の転移はーーー

 転移は、起きなかった。






 

 

 


 そのとき。

 マイクが、異世界で救命信号を打ち上げたその瞬間に。




 世界移動の魔法使いであると同時にシロの師匠でもあるイツキは、ゲートのジャミングを開始した。


 複数のユニットを、階層構造をもってゲートに打ち込む。

 それは針の穴に丸太を通すような作業で、本来イツキ以外の人間が行えば、ゲートを崩壊へと導くはずだった。



 しかし、依然としてゲートは存在していた。

 ただし、<魂の通行は特異的に不可>となっているが。




「「忘却の御手」の消失は許そう。

しかし「霊能力者」の損失は許されない。彼らには、それなりの投資をしてきた。もちろん、君にもだ」




 ーーーそう宣言する、成功者。

 彼らはーーー未来視の担い手も含めれば三人だが、彼らは、理事長室でどでかいモニター越しに、「マイク達の様子」を観察していたーーーそう、リアルタイムで。

 一秒のずれも無く、リアルタイムで異界の現象をモニター越しに見物していたのだ。



 そして、成功者と魔法使いは、彼らの事情でもって、マイクたちの帰還を阻んだ。

 けっして彼らのためではなく、自分たちのために。






 


 

 


 思索が交錯します。

 そのなかで、彼らは何を選択するのでしょうか

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