Gating
keyA-2をお持ちの方、このまま読み進めてください。
keyA-1をお持ちの方、しばしお待ちを。
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第6部より抜粋
Tips~人における「名」
「名」とは、存在を識別するための記号である。そのため、二つ以上の独立した「個」が存在しない限り、それは意味を成さない。
それはつまるところ、「名」とは根本的に「関係性」を内包する存在であり、このことを特に意識して「名」とする場合、「名」のことを「真名」と呼ぶ。
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ごちゃごちゃしたことを取っ払って簡単に言うと、人と人との間における「真名」とは言葉に依存するのではなく、あくまでも、関係性に依存するということ。
それはつまり、「にいさま」と言ったような「名」であってもーーーそれを発した者とそれを受け取った者との間に然るべき縁があれば、「真名」となる。
故に、「個」を指す「真名」の数は、その「個」が有する「関係性の数」だけ存在し、また、その「関係性の強度」に依存して、「真名」は互いの「個」に強い影響を及ぼす。
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共鳴連鎖の真名励起:幸せの力:東利也
俺の名は、「東 利也」。
……すくなくとも俺は、それが俺の名だと想っている。
それに、俺の恋人の由香だってーーーそう、想ってくれているはずだ。
でも、この「東 利也」という名は、施設の育て親がくれた、「仮名」だ。
捨て子だった俺には両親がいるわけもなく、当然ながら、名前なんて無かった。
だからこその、仮名だった。
その裏返しに、本来の俺は、「東 利也」ではないんだろう。
もちろん、戸籍上俺は、「東 利也」だ。そういう名の人間として、立派に社会に認められている。だから、俺がこの名に関して引け目を感じることはないのかもしれない。
けれど、それでも。
それでも、自分が「東 利也」でない可能性が、頭をちらつく。
だって、俺の本当の両親がどちらも「東」の性でなければ、俺は「東」を名乗れないのだから。
つまりは、俺は「東 利也」を名乗ることは、本来ーーーいや。
ーーーそれでも、俺は「東 利也」だった。
それが、俺の名だった。
理由なんて、単純だ。
俺が「東 利也」である理由ーーーそれは。
それは、家族が俺を「そう」呼んでくれたから。
偽物の両親に、寄せ集めの兄妹。
つぎはぎだらけの家族だけれど、
そんな家族が、俺のことを「利也」と呼んでくれたから。
そのことが、俺にはどうしようもなく嬉しくて、誇らしくて、だから。
「それ」が、俺の本来の「名」でなかったとしても。
それでも、積み上げられてきた、このーーー「幸せな思い出」が、俺とともにいてくれるなら……
「ーえーf−f−f−」
ーーー幸せな思い出がーーーその、想いが。
俺に、「東 利也」の名を名乗ることを許してくれるのなら。
「ーーう、あーーー」
きっと、「あいつ」を想うこの心だって、間違いじゃないはずだ。
正しくはないかもしれない。けれど、間違いだけでは、ないだろう。
「あいつ」に泣いてほしくないと想う、この心。
「あいつ」には笑っていてほしいと想える、この願い。
そして。
「にいさま!」
ーーーーそう呼ばれることがむず痒くて、でも、どこかで嬉しくて。
そして、誇らしくもる、その言葉がーーーもし、それが、許されるなら。
「お兄ちゃんでしょ!!!!」
君が、世界がーーー世界が、それを許してくれるのなら。
俺は、「それ」を選びたい。
この心に刻また、あの日の想いでのままに。
この、心のままに!
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
俺は、手を伸ばした。
必死に、「あいつ」へと。他の誰でもない、俺が笑っていてほしいと想える、あの、憎たらしくて愛おしい、俺のーーーー
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アカシックレコード:key-兄
東利也が、兄であることを選択しました。
魂傷による真名励起を確認。
「憎悪の念」より、「魂傷の補正」でもって、
「寿 小羽」の"抽出"を施行します。
ハッピーエンドまで、あと少し。
あと少しで、「寿 小羽」が、救い出されます。
そう、世界の定義する、「寿 小羽」がーーー