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無限想歌  作者: blue birds
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keyB-2,3共通:歪曲する因果Q:届かぬ想い、断ち切る覚悟:寿小羽(黒)vsマイク

 積み重なった想いに価値はあれど、意味は無く。

 故に、想いは届かないのです。

keyB-2,3共通:歪曲する因果Q:届かぬ想い、断ち切る覚悟:寿小羽(黒)vsマイク




 あと少しでねぇ様を殺せるところだったのに、邪魔をされた。

 私が放った煙蛇は、確実にねぇ様を丸呑みにして、消化し尽くすはずだったんだ。



 なのに、私の蛇は突如現れた『光の男』に鷲掴みにされ、自由を奪われていた。



 ーーー男の風貌は、まさに、光の男ーーーとしか、表現の仕様がなかった。

 輪郭がかろうじてヒトであるだけで、その顔らしき部位には目もなければ鼻もない。もちろん、口も耳も。




「そこをどいてくださいまし、見知らぬお方。

そうすれば、今度の無礼は許しましょう」



 耳も口も無い者に、私は語りかける。

 彼の者が何者かは知らないが、彼は『神』である私の邪魔立てをした。

 本来なら、弁解の余地無く終わらせるところだ。




 けれど、私は慈悲深い。殺すことは容易いが、生かしてこその神だ。

 ーーーなればこそ、彼の者にチャンスを贖罪の機会を与えたのだ。




 まぁ、彼の者に耳が無いことから察するに、彼は私の温情を理解できないであろう。

 ならば、死ぬしか無い。そう、死ぬしか。





『ころせ』『神にたてつきおって!』『ころしちゃえ、おねぇちゃん!』

『我らは神』『神に逆らうなど』『思い知れ!』






 空いた手を、光の男に向ける。

 今度は、確実に二人を殺すため。



 私は、さきほどよりもほんの少しだけ力をこめ、『大蛇』を作り上げた。

 身の丈は、男が掴む蛇の10倍ほど。


 この大きさなら、二人を難なく飲み込める。

 そして、その大蛇を前にして、男は一歩も動かない。

 ただただ大蛇を見上げるばかりで、一歩も。




 それは、彼が立ちすくんでいるからなのか、彼自身の意思で動かないのか。

 表情の無い彼からは、そのどちらが正解なんてこと、汲み取ることができない。




 なら、死んでもらわなければ。

 神の名のもとに。





「死ね」






 すーっと、手を落とした。

 それを機として、大蛇は二人に突進する。



 蛇と彼らの距離は、10メートルほど。

 それは、蛇の全長よりもよほど短い。すなわち、鎌首を持ち上げた蛇は、そのまま体重をのせて二人に迫ったのだ。


 





 

 あとは、二人が運命を受け入れるばかり。そう、死という運命を。

 それで、物語は終わる。この物語は、それで、おしまい。

 罪人と不快な者が消えて、めでたしめでたしと……えっ?






「なに、を、した……?」






 物語は、終わるはずだった。

 神の使わした大いなる蛇が、全てを飲み込み、そして。

 そしてーーー










 俺が放たれた二匹の蛇を握りつぶした瞬間、カケラの息を呑む音が聞こえた。

 まぁ、握りつぶしたのは小さい方で、でかい方はグーパンで木っ端みじんにしてやったから、この表現は正確には間違いだな。

 しかし、いずれにせよ。





「あ、あ、あ! そんな!!!!」


 

 後ろで叫ぶ女ーーーこいつが、伊吹ってやつか?

 ベッドで寝てた伊吹って女そのまんまの格好だから、まぁ、そうなんだろう。



 とにもかくにも女は、俺の後ろで悲痛な叫びを上げた。

 理由はおそらく、目の前の化け物の半身がはじけ飛んだことにあるんだろうが、だからどうしたって話だ。女に取って、あの化けもんはそれなりに価値のあるやつらしいしが、俺に取っては無価値だ。

 というか、逆にいない方がいいくらい。




「やめてください! こはねちゃんに、ひどいことしないで!」




 正体不明の俺にすが身つく、女。おれはそれを素知らぬ顔でシカトするーーー

 まぁ、俺がやったんだけどな、たしかに。しかし、あいつ、もろすぎだろ。

 ちょいと光玉ぶつけただけで、あれか?





 ……化け物に取り付いている『今回のやつ』は、『以前のご主人に取り付いたもの』と同種のはずだ。波動が明らかに『以前のやつ』のそれだし、実際、タイムトラベルなんて馬鹿げた道理をズブの素人に許している。

 しかし、いかんせん直接的な介入がない。

 本体なら、あの光玉程度じゃ揺らがんはずだ。

 ーーーてことは、カケラっぽいな。霞達の話だと、この手のパターンはいくらかあるらしい。だが、これじゃあ意味が無い。やつをやっても、根元が生きているなら、「いくらでもやつは生まれてくる」。




 ……しかし、それはそれとして、どうする?目の前の化けもんを殺して、女だけ連れ帰るか?

 シロの話だと、こいつと目の前の化け物ーーー加えて、一緒にここに飛ばされた東ってガキは、前世からの因縁でつながれた、縁者らしい。

 霊視のガキの見立てだと、こいつらのこの状況は、悲しいすれ違いに端とも言っていたな。

 互いを大切に想い合っていた嘗ての三人は、当時の世の流れに呑まれて、絶望の中、命を落とした。しかも、それで終わること無く三人の魂は輪廻により引き裂かれ、さらには何の因果か、別離の根源である、その輪廻の果てにーーー再び会合を果たしたらしい。だが、しかしいかんせん、歪んでいる。




 輪廻はあくまでも、魂の行く末を探るためのシステムだ。少なくとも、神となった二人の少女はそれを望んで、輪廻というシステムを作り上げた。

 ーーーαで魂に記述された物語を、別世界のβで「不完全」に漂白する。そして、不完全な傷を抱えたまま魂はαに舞い戻り、再び物語をーーー傷を、その魂に刻み込む。そして、時がくればβへと至り、そして、再びαへ。


 そうやって、不完全な傷を溜め込みながら、閉ざされた輪の中で、魂はーーー延々と、傷を魂に溜め込んで行く。深い傷であればあるほどに深く濃く、魂に蓄積し、その果てに。


 その果てに、輪廻は魂に刻まれる最も深き傷を、魂のたどり着く場所として、世界へと示す。





 ーーーーばかばかしい。

 魂の行き着く先なんて、どれも同じだ。輪廻なんて馬鹿げた法則を生み出さなくても分かっているもんだ。そう、前を見てみればいい。





「ゆる、さ、ないーーー神、へのろう、ぜき、

神罰を」






 目の前でブスブスと汚らしい煙を上げながら復元する、『悪意』。

 あれが、魂のたどり着く場所だ。自身の始まりを失い、『前へとしか進めなくなったもの』。

 



 あいつの始まりが何で、そして、それをどうやって喪失するに至ったかなんて、興味は無い。ただ分かるのは、あいつは憎んだ。何かを、憎んだ。未だに色濃く大気の充満する憎悪の気配が、それを物語っている。そしてその憎悪は最終的に、伊吹由香という形を得たんだろう。しかし、結果はアレだ。




 今のやつからは、まるで「憎悪」が感じられない。

 あるのはただただ、「おとしめたい」という感情。

 あるいは、「負」の感情といってもいいかもしれん。それが、やつの躯から吹き出している。





「やめて! こはねちゃんは何も悪くないの! 小羽ちゃんは、なにも!」






 ーーー小羽ちゃんは何も悪くないと、女は叫んでいる。

 必死に俺の手にすがりつき、これ以上やつを傷つけさせないと。




 ・・・・・・こいつは、自分の姿を鏡で見ても、そう、想えるのだろうか。

 復元しているためか、確かに外見上こいつに傷は無いが、しかし、「俺の目」からは明らかな『痕』が見て取れる。

 普通なら、心を殺されているほどの傷痕だ。発狂していても、不思議は無い。






 しかし、女の目には明らかな理性の色がある。

 そして、夢物語を口走るーーー『憎悪』は、悪くないと。

 





(たしかに、『憎悪』は問題ねぇ。お前がやつに八つ裂きにされる理由、そして、それをやつが成すワケーーーそれには、ある種の正当性があるんだろう。

そう、『始まりの上にある負の感情』は、生き物として、当然の感情だ

ただなーーー)






 ただ、『悪意』はその限りには無い。

 『憎悪』や『憤怒』、あるいは『嫉妬』のように負の感情一種である『悪意』だが、しかし、これだけは例外だ。




 『悪意』には、根源が無い。あるいは、『根源なき負の感情』を『悪意』と呼ぶ。

 だからこそ、『悪意』には救いが無い。

 




 悪意は、結果だ。そう、結果のみの存在。

 どれほどの因果の可能性を悪意に示そうが、やつらは同じ場所にしか行き着かない。

 いや、同じ場所にしか、たどり着けない。





 それが、『負』という、結末。

 『悪意』をもつものには、それ以外の選択肢が無い。はかり間違っても、ハッピーエンドなんてもんは望めない。








『てめぇのいい人は、あいつの腹ん中だ。

待ってろ。すぐに引きづり出してやる。そしたら、この世界ともお別れだ』





 すがる女の手を振り払い、俺は化け物に向き直る。

 半身を失って尚、化け物はそれなりの早さで復元してみせた。

 その速度は、正常のちょい上くらいのレベルだな。




 まるで、問題ない。殺そうと想えば、いつでも殺せる。

 しかも、やつを爆ぜた瞬間に、核のちかくに毛色の違う領分を見つけた。悪意の底にありながら、必死に己を手放すまいとする、強固な意志ーーーおそらく、東とかいう、もう一人のガキだろう。




 向こうに置き忘れられた躯から感じられた輝きと、同じものを感じた。

 





 さあ、これで終わりが見えてきた。

 ちょいちょい化けもんを削りながら、あと少し東少年の格納位置を特定する。

 んで、それが終わったら、やつから少年を引きずり出すだけ。

 そして、化け物を退治して、元の世界へ。




 それが、最善手だ。それが、ハッピーエンド。

 さて、めでたしめでたしまで、もうすぐ。




 あと、一踏ん張りーーーだな。

 悪意は、様々な者の意図により、生み出されました。

 その意図の網を、縁と物語では定義します。



 そして、それと向き合うのはーーー東君の仕事です。

 次回、連想歌:迷走する想い:名を呼ぶこと:東利也ーーーです。

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