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黒瀬部長は部下を溺愛したい  作者: 桐生桜


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22/32

CASE:22 俺の隣にいてくれるか?

 莉央の風邪が治って数日後の金曜日。

 その日は社内の軽い飲み会があった。

 部署も役職もバラバラ、他愛もない話題で盛り上がっていたとき……。


「そういえば、白石さんって、最近めっちゃ可愛くなったよな~」

「わかる! 雰囲気も柔らかいし、あの笑顔……あれは可愛いって」

「俺、けっこう気になってるんだよね~。あのタイプ、めちゃ好み」


 軽いノリの、男同士の会話。

 誰もいないと思っていた背後に男は気づいていなかった。

 グラスを片手に……慧が立っていたことに。

 低く、鋭い声が、その場を凍りつかせる。


「お前ら……」


 その声に全員が振り返る。

 慧は、静かに笑っていた。

 でも、目は笑っていない。


「そういう発言はセクハラになりかねない。気をつけろ」

「あ……はい」

「すみま……せん」


 空気が、ピリッと張り詰める。

 慧はグラスを置いてお手洗いへと姿を消した。

 ちょうどその時、莉央が戻ってきて……。


「慧さ……あれ? なんか機嫌……」

「莉央、ちょっとこっち来て」


 飲み会を抜けて、静かな人気のない場所。

 慧は、手を引いたまま、莉央の顔をじっと見つめた。


「慧さん、どうかしたんですか?」

「さっき……莉央のことが気になるって言ってたやつがいたんだ」

「えっ……」

「別に、莉央が悪いわけじゃない……でも、俺、やっぱ無理」


 莉央が何か言う前に、慧はそっと抱き寄せた。


「……俺、莉央のことになると、全然余裕ないわ」

「……慧さん……」

「誰にも触れさせたくないし、見られるのも嫌。俺だけが、莉央の隣にいたい」


 抱きしめる手が、強くなる。

 まるで、もう二度と離さないとでも言うように。


「莉央が、俺の彼女だって言いたくて仕方ない」

「……でも、今もずっと慧さんの彼女、ですよ?」

「………」


 ほんのり赤い頬の莉央が慧を見上げる。

 そのまま、軽く唇が触れる。


「ん……」

 

 愛しさがあふれて、止まらなくて……。

 何度も、何度も莉央の唇を追う。


「莉央、大好き……」


 その言葉に、莉央の頬が赤く染まって、目が潤んだ。


「……ずるいです。そんなの、私のほうが嫉妬しちゃう」

「なら、ずっと俺の隣にいてくれるか?」

「……はい」


To be continued

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