第3話 来栖学園を獣魔が強襲する
「キジョウくん、わたしを慰めてくれないか?」
来栖レイはかすかに口角を上げた。
桜色のくちびるが白い顔に映えている。
国丸キジョウは吸い込まれるようにその手を伸ばした。
―― 緊急事態! 緊急事態! 獣魔が本学園に侵入しました! 防御壁を作動させますので、全校生徒ならびに全職員は、至急校内へ避難してください! ――
「な……」
「獣魔がここへ来たっていうんですか!?」
レイはガラス窓越しに校庭を凝視し、そして目をくもらせた。
「あれは……あいつは……!」
「会長?」
「キジョウくん、君はここにいなさい。この執務室は特別な作りになっているし、その窓も特殊な強化ガラスでできているから、防御壁はめったなことでは作動しない」
彼女は上着のコート風バトルジャージを脱ぎ、足早に扉を開け放って体質した。
キジョウはポカンとその様子を見ていたが、すぐに校庭を見るため窓のほうへと走った。
「う、げ……」
校庭のど真ん中から、校舎の3階まで届くような「植物」が顔を出している。
毒々しい色合いで、触手のような枝葉がうねうねと動いていた。
そのひとつの上に、これまた植物を連想させるコスチュームの「女性」が立っている。
「レイ! 出てきなさい! あなたを血祭に上げ、この学園は掌握させてもらうわ!」
その女は腰に手を当て、かしましく宣言した。
「始まったようだな」
「――っ!?」
すぐうしろに銀髪の少女が腕を組んでいる。
いつの間にとキジョウは驚いた。
「わたしはリン、白銀リン。レイのサポート役さ。君のことは全部聞いてるから安心しな」
少女はポニーテールをフワリと揺らし、シルバーのバトルジャージのすそをいじった。
「リン、さん……あいつは、あのバケモノは……?」
彼はびっくりしながらも、出現した獣魔についてたずねた。
「あの女の名はアルラウネ、獣魔を使役する秘密結社・ブラックビーストの幹部のひとりさ。来栖学園には鉄壁の防御網が張られているんだけど、まさか地下から入り込んでくるとはね。一本取られたってとこだよ」
「ブラックビースト……獣魔を、使役する……?」
白銀リンは深くため息をついた。
「わたしたちが獣魔を殲滅しようとしているのに対し、逆にやつらを利用しようとしている勢力もあるってわけ。いまどき世界征服だなんて、はっ、どうかしてるよ」
正気とは思えない。
あのバケモノたちを利用して、世界征服だって?
それほどの力を持つブラックビーストとは?
キジョウの頭は混乱した。
「アルラウネ! よくもぬけぬけとわたしの前へ現れたものだな!」
レイの怒号に、彼はわれに返った。
「久しぶりだね、レイ。ぶいぶんかわいく育ったじゃないか。ほんと、そっくりになってきたよ、あの女にね」
アルラウネは薄気味悪い笑顔を浮かべている。
「今日こそはその息の根を止めてやる! 貴様の手にかかって殉死した偉大なるジャージ戦士・クルスゴールドの魂にかけてな!」
彼女の顔は憎悪に満ちている。
悪の幹部はますますニヤニヤとした。
「そういうところもね、ジュンにそっくりだよ? レ~イ♡」
「貴様、許さんっ! アルラウネ、いや、かつてのジャージ戦士・クルスブラックこと黒瀬レイア! 母の仇――っ!」
キジョウの頭は真っ白になった。




