第1話 国丸キジョウは夜の公園で来栖レイに助けられる
「ふん――っ!」
「ぐあぁ――っ!」
夜の静寂を破り、公園の中に轟音が響きわたった。
金髪の少女が眼下に視線を送る。
純白のジャージが闇の中に映えていた。
「人間に擬態するとは知恵をつけてきたじゃないか。おまえたち獣魔に強力なブレーンがついた、そうだろう?」
胸もとを踏みつけられる山犬のような怪物は、呼吸も絶え絶えに悶えている。
「さあ、ねぇ……なんの話をしてるんだか……」
「ふん」
「ぐあっ!」
その少女・来栖レイはさらに強く力を加えた。
「言え、情報はとっくに割れているのだ。前に倒したやつが吐いた、ビースト・シンギュラリティとはなんのことだ?」
怪物がにわかにヘラヘラとしだす。
「俺たち獣魔が、おまえら人間の能力を凌駕するのさ……あとちょっと、あとちょっとなんだ……すでにデータは、集まりつつある……あのお方が、おまえたちを、八つ裂きに……」
なにやらもごもごとわけのわからないことをつぶやいている。
「もういい、話にならん。どの道おまえたちは、一体残らず殲滅させてもらうからな」
「へへっ、そいつは無理だなぁ……おまえらクルス機関は、これから地獄を見ることになる……おまえの大切な、来栖ハーレムの連中もなぁ……」
「もういい、貴様は用済みだ。消えろ」
「があああああ――っ」
出現した光球に焼かれ、山犬の怪物は消し炭になっていく。
「悪……魔……」
最初から存在しなかったように、すっかり灰になってしまった。
「そうだ、わたしは悪魔だ。おまえたち以上のな。獣魔を根絶やしにするためなら、喜んで魔道にでも堕ちよう」
彼女は軽くジャージのほこりを払った。
「さて、国丸キジョウくん。われわれの存在を知ってしまったからには、もうもとの生活には戻れないが、かまわないね?」
来栖レイの周囲には、同じくジャージを身にまとった少女のシルエットが5つ。
「まあ、おそらくそうなるだろうとは、思ってましたから……」
「よろしい。明日の朝一番でわたしの部屋に来なさい。アポは取っておくから顔パスだ。君にはこれから、想像もつかないだけの地獄を見てもらうことになるだろう」
悪魔。
さっき倒された獣魔の最期の言葉が脳裏をよぎった。
「わたしの二つ名をごぞんじかな?」
「……ジャージを着た、悪魔……」
こうして俺の学園生活は一変したのである。




