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26話 愛しているよ(完)
瑠璃は、疲れたのか、すぐにウトウトと眠りにつく。
雨藍は瑠璃の前髪を払って、額を撫でた。
瑠璃が眠りにつくまで、手を握る。
やがて、穏やかな寝顔をたしかめると、ホッと息をついた。
「瑠璃。ゆっくりおやすみ」
優しい声で、瑠璃に囁く。
この愛らしい弟が、雨藍のすべてだった。
これから先、どれほど永い時を過ごそうと、瑠璃さえいれば生きていける。
そう固く信じていた。
スヤスヤと眠る瑠璃を、いつまでも飽くことなく眺め続ける。
「瑠璃」
雨藍は、繋いだ手を離さない。
いつまでも、どこまでも。
瑠璃と二人で、生きていくのだ。
+ + +
瑠璃は、一輪の薔薇を差しだした。
迅が受け取って、嬉しそうに笑ってくれる。
「愛している、瑠璃」
真摯な眼差しに、瑠璃は胸を焦がす。
ポロッとこぼれる涙を、無骨な指先が拭ってくれた。
「ぼくも、迅を愛しているよ」
瑠璃は、はにかみながら、愛を告げる。
たとえ、これが夢だとしても。
重ねた唇に、胸がいっぱいになった。
大好きな、迅。
ぼくの恋を、あなたにあげる。
だから、ぼくのこと、ずっと忘れないでね?
(完)




