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ギルド

ギルドについてダラダラ書いています

矛盾を見つけた方や質問のある方はどうぞご連絡ください




とりあえず大きな通りとその通りが集合している町の中心の建物だけでも見学しようと、ひたすらただひたすら歩き続けている。

クロックという呼び名の通り、店先にはその店の目印となる特徴的な掛け時計や立派な置き時計が目につく。

店によっては日時計や水時計、色鮮やかな砂時計など変わったものを置いてある店もある。

魔法屋らしき怪しい雰囲気の店先には淡い紫色の中に時間が映し出されている時計があったり、ペット?馬?を売っている店先には時間を告げる籠の鳥がいたりと日本ではお目にかかれない珍しいものもある。

そういえば、飲食店【猫の目】の店内にも振り子のついた木造の掛け時計があった。

その驚異の時計率のせいか、店も時計専門の雑貨屋や小さな個人経営の工場が目立つ。

なんというか、ここまで時計だらけだと宗教めいて見えるから不思議だ。ここでポイントなのはただそう見えるだけであって、別に時計に拝礼していたりはしないという事。

そして特筆すべきは、0から11まで全ての通りの始まりの地点にあたる場所。

町の真ん中にあり、町全体をなだらかな山の頂から見下ろしている神殿チックな場所だ。

建物自体はそれ程高くない。だが菓子売りのおばちゃんの話によれば、地表に出ているのは建物のほんの一部だという。

地の精霊の加護を施し、なだらかな山の地盤をくり抜いて、そこに核シェルターのような地下施設をつくってあるのだとか。

緊急時には一般人を避難させたり、有事の際は地下要塞として機能するようにしてあり、普段は貴族や政治家が、政治のための中枢機関としてつかっている。

それにしても驚いた。山一つ丸ごとくり抜いて町を作るなど現代じゃ考えられない。力学やら地質学やらあるだろうに、その問題点全てを精霊の加護とで片付けてしまうのだからなんとも始末が悪い。

【加護】なんて曖昧な言葉、どこからどこまで効果があるのかわかったものではないだろう。イメージでは精霊の善意や心付けといった感じがある。

この土地に根付いている精霊がいるとして、見返り無しで人間の味方なんてするんだろうか。

なんせ人間が住むと土地が汚れる。生活用水、農耕、工業、汚染原因は様々だ。その汚れを排出する人間を精霊が好んで【加護】なんてものを与えるだろうか。

…余程人間好きな精霊なのか、それとも人間が土地を汚さないように相当努力しているか。

生活に関しては、またフローに聞いてみよう。

その精霊という存在に関しても聞きたいことは山ほどある。



そうこう思考を巡らせているうちに、三番通りの壁近くにある、白く巨大な建物にたどり着いた。

これが噂のギルドか。

大きさとしては丁度小学校の体育館くらい。剣と盾の繊細なレリーフが彫り込まれた白石造りの壁が印象的である。

木でつくられた大きな扉は開け放され、昼間ということもあり旅人や傭兵のような姿をした人間や獣人たちがひっきりなしに出たり入ったりしている。

なかなか繁盛しているようだ。人の流れに沿って中に入ると、ふわりとほのかに花の匂いがするエントランスホールが広がっていた。

ホールの中心には幾つかに分かれた長い掲示板。ホールの左右は本棚がずらりと並んでいる。掲示板の向こう側、ホールの置くには銀行のようにカウンターで仕切られた窓口が並んでいる。

受付は八人、少し離れて一人。一人を除いて、八人の受付の前には何人かの冒険者たちが並んでいる。

名前はギルド、雰囲気はハローワーク…って例えが生々しいな。

掲示板に貼られている紙を眺めている人に混じって同じように紙を見てみたが、如何せん文字がわからない。

英語?ロシア語?アルファベットに似ているが見たことのない文字が所々見られる。しかも依頼者の紙は手書きらしく丸文字から行書体まで個性たっぷりで読むにはコツがいりそうだ。

しょうがないな、こっちはまた勉強してから見直そう。

とりあえず掲示板は無視して、九つあるうちの一番人のいない窓口へと足を運んだ。

メガネをかけた茶色い天然パーマの髪をした30代の働き盛りの男がこちらに気付いて顔をあげる。


「いらっしゃいませ、派遣系ギルド、クロック支部へようこそ。何かお困りでしょうか?」


「それがこういったところに来るのは初めてで…。ギルドについて簡単な説明を受けたいんだが。」


「承りました。本日は足を運んでいただき、誠に有難う御座います。こちらは派遣系ギルドといいまして、クラスト神聖帝国にあるギルドを拠点としまして全地域に支部があります。ギルドにご登録することで、こちらで利用者の方の力量に応じて安全に仕事を受けていただくことができます。仕事内容は、警護系、討伐系、生活支援系、その他と大きく分類され、利用者の方と依頼者の方双方のご希望される系統を選んでいただけます。お客様は登録を希望されていますか?」


「その予定です。」


「はい、有難う御座います。仕事の一連の流れは、ギルドで掲示板から希望する依頼紙を窓口に持って行き認定を受け、現場へと向かいます。仕事が終了しましたらまた認定印を押した依頼紙を持ってギルドの窓口までお越し下さい。依頼紙に完了印を押して報酬をお渡しします。

登録されるに至って幾つか注意事項がございます。その一、依頼を受けた後、何らかの理由で依頼が完遂できなかった場合。違約金として報酬の半分を支払うことになっています。また依頼紙を紛失されると報酬は支払われません。ご注意ください。二、保証、保険の類は一切ございません。三、依頼者とのトラブルは必ずギルド職員にご報告ください。その他細やかな規律等はこちらの書類をご覧ください。」


はい!に渡されたパンフレットのようなものを受け取る。…が、何一つ読めない。タイトルすら読めない。

くっ…読めないものをよこすなんて…嫌がらせか…?いや…嫌がらせじゃない、親切だ…親切なんだこれは…!

アルファベットのような字が威圧的に並び、眺める気すら失せたので折り畳んでポケットにしまった。

とりあえずギルドの全容は掴めた感じだ。後は利用してみてのお楽しみといったところ。


「有難う御座います。今回ギルドを初利用されるとの事ですが、ご登録されますか?用紙に記入するのみですので、お時間は取らせませんが。」


ここでまさかの問題発覚。

書類記入か…面接なら良かったのに。

はいどうぞと羽ペンと枠で区切られた用紙を差し出してくる職員に曖昧な笑顔を向ける。


「…申し訳ない。実は今、字が書けないのだ。代筆を頼んでもいいだろうか。」


黒の長袖を着ている右腕を意味深に撫でてみせると、職員が気の毒そうな顔をして頷いた。


嘘は言ってない。いや本当に。


「これは気が付きませんで、誠に申し訳ありませんでした…。では代筆致しますね。」


名前、性別、出身地…までは、かなり不振そうな視線を向けられつつもなんとか大丈夫だったんだが。


「では、魔力の測定に入ります。ここに腕をいれてもらえますか?」


生まれてこのかた魔法どころか魔力なんて感じたことも使ったこともないわけだが。

職員がカウンターの下から取り出した腕を通す型の血圧計のような機械を取り出した。

いや実際にはもっとギミックが露出していてメカメカしいデザインだが。

上部に数字が回転するメーターのようなものがついていてこれで数値を測るようだ。

ええい、なんとかなる!魔力が無いなら無いでなんとでも言いようはあるだろう。

右腕は負傷設定なので、左腕をそっと輪に通してメーターに注目する。

カタカタカタカタ…と勢いよく数字が回転していく。

1…10…100…1000…1500…1700…10000…12000…まできて、ピタリと止まる。


…壊れてんじゃないのか、これ。


有りもしない力が測れるわけがないのに。それか何か別の力を間違えて測ったんじゃなかろうか、霊能力とか。

職員がサラサラの流暢な字で記入していくのを見ながら、少し胡乱気な視線を機械に送る。


「はい、これで終わりです。左手を出してもらえますか?」


差し出した左手に、職員が少し幅広い銀色の腕輪をパチンと嵌めた。

腕輪は手首まわりに少し猶予があり、中央部分に丸い透明な宝石がついている。

光を反射しない鈍い光を放つその石にどことなく不思議な感じがする。


「ご登録有難う御座いました。最後にランクについて説明させていただきます。その腕につけた宝石が現在のランクを示すものとなります。最低ランクは無色。依頼をこなし、完了印をもらうたびに完了印の魔力に反応して色を帯びてきます。暖色系から寒色系へ、最終的には黒までランク上昇します。依頼紙には目安としてランクの色が示されていますので是非参考になさってください。また依頼紙に色のないものは無色の方向けのものです。ご質問はございますか?」


黙って首を振る。

まあまずはランク云々より文字を読めるようになくてはならないがな。


「お疲れ様でした。これで登録は全て完了です。どうぞ、これからも当ギルドを宜しくお願い致します。」


営業スマイルに軽く会釈して、窓口を後にする。


…それにしても疲れた。

説明内容を脳みそフル回転させて叩き込んだため、ちょっと頭が痛い。

それにしたって一気に説明しすぎだろう…懇切丁寧なのはいいけれど。

期末試験の後のような精神的疲労を感じたため、勉強とギルド探索についてはまた明日にしよう。

気怠げな昼時の三番通りを、宿屋【猫の手】に向かってゆっくりと足を進めたのだった。





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