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始まりは赤
やりたいようにやる
いつだってそうしてきた。
自分の思うままに生きて、生きて、生きて…自己満足のために生きてきた。
だからこの結末にだって悔いなどないのだ、心からそう思う。
ジリジリと自分の命が焼けて崩れ落ちていく音と激痛に耐えて、網膜に焼きつく鮮やかな炎を睨みつける。
地下のライブハウスで、煙と炎に捲かれて死ぬなんて想像もしていなかったけどな。
小さなライブハウスだった。
駆け出しの友人が演奏するには広すぎて、集まったバンドのファンが逃げ出すには狭すぎた普通のホール。
楽屋から出火したのであろう。気がついたときにはとっくに退路など絶たれていた。
怒りや怨みの声、絶叫、か細い悲鳴が溢れる炎の処刑場で。
微かなギターの音が、シャラリと闇を撫でた。
綾野 竜樹
(アヤノタツキ)
享年21歳
地下ライブハウスにて、火事にまきこまれ、焼死
遺体の引き取り手なく、無縁仏として供養される。