【その14】素直がイチバン ~素直であることの大切さ~
最終回のテーマは「素直」。
それは、大切な人から贈られた、シンプルでありながら深く響く言葉である。
なぜその言葉がこれほど心に残ったのか――そこから、このエッセイは始まった。
このエッセイも今回で最終回となる。
いつもとタイトルの雰囲気が異なることに、違和感を覚えた方もいるだろう。
この“素直がイチバン”という言葉は、私の大切な人が私へと贈ってくれた言葉である。
言葉も意味もシンプルでストレート。
ただ、私にはこの言葉が不思議なほど響いた。
そして、その理由が気になった。
なぜ、この言葉が自分の心へ浸透するかのように響いたのかと。
大切な人の言葉だから響いたのではないか?と言われれば、それは否定できない。
もちろん、それもあると思う。
でも、それだけでは説明できないほどに、響くと同時に考えさせられた。
素直に生きてきたつもりだ。
少なくとも、うつ病を患って以降のこの数年は、素直で在ろうと日ごろから心がけてきた。
それは、自分に対しても、他人に対しても。
だからこそ、私は考えようと思った。
素直とは何か?何に対して素直にならなければならないのか?と。
実は、これが、このエッセイを書き始めたきっかけである。
えっ?どういうこと?と思われたかもしれない。
これも順を追って説明する。
その時、私が真っ先に考えたのは、素直にならなければならない対象って何だ?ということだった。
色々なことに対して素直に向き合うことは大切だが、その中でも一番大切な向き合うべき存在は何か?
おそらく、心や素の自分であろう。
でも、心や素の自分って何だろう?となったのである。
前回も書いた通り、その段階ではイメージが浮かばなかった。
そこで、私は自分の内面に関わる事象を深掘りすることで、糸口を探すことにした。
ここまで、13個のお題を考えてきた。
それぞれ、アプローチは違えど、素の自分を探す旅であった。
単なる自分探しではない。
“素”の自分である。
素の自分は、何処にいるのか?どんな存在であるのか?それを一心に探してきた。
そして、お題を考えていくうちに、毎回、たどり着くエリアが同じであることに気がついた。
それが、前回書いた“素の自分”であり、“心”である。
自分のこう在りたいというシンプルで純粋な想いが集まる場所。
私はこのシンプルで純粋な想いこそが心であると思った。
すべての思考や行動の原理は、この想いに帰結する。
つまり、この想いたちが人間の根源であり、人間性を形作る大前提であると。
これらの想いは、感情とも違うし、理性とも違う。
どういう状況であっても、揺らぐことのない想いとして存在している。
でも、人間はこれを見失う。
なぜか?
それは、素直であることを忘れるからだ。
年齢を重ねるにつれ、人は様々な経験をし、知見を得ていく。
これらの知見は、心のまわりに殻のように何重にも層を作っていく。
それ自体は、自然なことだし、悪いことでもない。
ただ、それらの層はレンズとなり、光を屈曲させ、心たる想いたちの姿を歪ませる。
これらのレンズはフィルターでもあるから、心から発する光が届かなくなることもある。
このエッセイは、歪んだ光と失われた光を一つずつ解き明かしていく過程であった。
心は常に光を発している。
その光を見失うな。
認知というレンズの歪みを取り、磨くことを忘れるな。
うつは、心の光が見えなくなった状態である。
自分のシンプルで純粋なこう在りたいという想いが分からなくなっているのである。
だから、探し出すのだ。
自分だけの至高の光を。
私たちは、宇宙から見れば、ちっぽけな存在かもしれない。
でも、私たちは一つの生命として、今、この瞬間も生きている。
世界がどうなろうと、社会がどうなろうと、組織がどうなろうと、生きているのだ。
人が集まると、どういう訳だか、正義と呼ばれる概念が生まれてくる。
この概念は、如何にも、もっともらしく語られる。
だが、これはあくまで、人の集団を管理するための暗黙のルールに過ぎない。
組織目線の概念であって、個人に主眼を置いたものではないのだ。
だから、自分と向き合う時には、そんなものは取っ払って考えればいいのだ。
そもそも、人間は千差万別。
すべての人間が、その正義なるものに当てはまるわけがない。
つまり、他人に合わせなくていいということ。
他人は他人、自分は自分。
他人がそうであるからといって、自分もそうであるということはない。
信念という名の心の光を見つけ、それに素直に向き合い、在りたい自分を目指して生きていけばいいのだ。
人生はこれに尽きると、私は思う。
「“素直”とは、“素”の自分に“直”に向き合うこと」
彼女は、私を見て、素直と理性の間で葛藤しているように感じたのかもしれない。
でも、あなたもそうでしょう?
私はあなたからも確かな信念の光を感じた。
だから、私もあなたに伝えたい。
“素直がイチバン”
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
私自身も思い悩みながら書いてきたエッセイでしたが、その過程で気づかされることも多くありました。
最終回のタイトルの通り、“素直な気持ちと素直な考えを、素直に言葉にしていく”ことを大切に綴ってきました。
もう少し、文章を整理してから投稿するべきかとも思いましたが、自分が考えた過程をそのまま書く方が臨場感あったので、そのまま投稿することにしました。
このエッセイが何かの気づきになれば幸いです。
来週から、長編小説の連載を開始します。
そちらもお楽しみに!
A08_Studio