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ライト

※爬虫類が出ます

 現状チェスカリナが目立つのは、皇子一行が現状唯一関わる相手だからだ。皇子一行が関わる相手が増えればそれだけ、チェスカリナへ向けられる視線も減るはず。

「実技なら武術系だな。特に剣術なら領を継ぐにしても騎士を目指すにしても必須だから、取る生徒が多い。取るなら宮廷剣術だな。身になるのは実戦剣術だが、顔を広げるなら宮廷剣術の方が、貴族の継嗣が多い」

 ぱらりとシラバスをめくって、チェスカリナがひとつのページを開く。

「領主の子弟と顔繋ぎじゃなく、引き抜き人材を探すなら、実戦剣術上級だけどな。こっちは逆に、貴族の三男以下の、騎士や兵士として身を立てる気の奴らしかいないから。槍術もそうだな」

「なるほど?」

「戦術指揮や領地経営学なんかも、領主の継嗣の必須科目だな。お前ならどうせもう修めてる内容だろうから、上級でも理解出来るんじゃないか?初級中級を修了した奴しか受けられない授業だから、優秀な奴が多くて話し相手には良いと思うぞ。卒業の必修は中級までだから馬鹿はいない。馬鹿の相手は嫌いだろ?」

 ぱらぱらとシラバスをめくって、チェスカリナは首をひねる。

「官吏系の引き抜きにも領地経営学上級は良いだろうな。あとは、経済学と統計学も、官吏を目指す生徒が多くいる。学者や研究者を引き抜きたいなら数学上級や魔術論上級、科学上級だが、これは専門用語の見本市だからな、ゼタでもバウドル語じゃ厳しいだろ」

「ちぃたんは受けないの?」

「私はその辺は去年受けた」

「ちぇー」

 頬を膨らませ唇を尖らせるゼタを黙殺して、チェスカリナはさらにシラバスをめくる。

「女子生徒と関わるなら、詩歌か舞踏だが、詩歌は言い回しが独特だからな。舞踏にしておくのが無難だろう。刺繍や茶、花や儀礼の授業もあるが、あれは女子向けだからな。男子生徒が混じると悪目立ちする」

 ひとつのページを開いたチェスカリナが、苦笑した。

「これやこれなんか面白いんだけどな。色彩学の授業だ。こっちは室内の装飾、こっちは衣装や化粧の組み合わせを、色彩学と貴族の常識を組み合わせた観点から指導してくれる。ためになると、女子生徒から人気の高い授業だよ」

 その辺失敗すると笑いものになるから女子も大変だと、チェスカリナは他人事のように言う。

「フェリシラに誘われて受けたけど、私が聞いても興味深かったよ。ちょっとした色選びの違いで、受ける印象が全く変わるんだ。あれは、政治的にも役立つ視点だと思う」

 顎に手を当ててチェスカリナは語る。

「たとえば会談の場だ。相手の心が開き易い場を作るか、緊張を高める場にするか、目的に合わせて部屋を変えれば、結果にも違いが出るかもしれない。あるいは、騎士や兵士の制服だな。同じ服を着ると言うだけでも結束を高める効果はあるが、それに更に効果を足せるなら、利用しない手はない。特に近年は戦争がなく兵全体の危機感も下がっているからな。いざ戦うとなったとき、士気を高め気分を高揚させる色を取り入れるのは、と、話が逸れたな」

 すまんと笑って、チェスカリナがゼタに目を向ける。

「たしか王女殿下はまだ受講していない授業だったから、もし興味が出たなら誘って受けてみても良いと思う。先生は専門用語を避けたわかりやすい言葉で説明してくれるし、持っていて損はない視点だ」

 今年は同じ先生のもっと高度な授業を取るつもりなんだと、チェスカリナは楽しそうに言った。

「俺も、」

「色彩学の初級と上級を修了していないと受けられない授業だからゼタは無理だ。色彩学なんか修めてないだろ」

 無理に受けても専門用語と専門知識が多過ぎて理解出来ないと、にべもなく切り捨てるチェスカリナ。

「私が今年取るのはそう言う授業が多いよ。伊達に二年も通ってない」

「ちくしょう」

 ゼタか悔しげに机を叩く。

「まあまあ。私が今年受ける授業で、ゼタも受けられてためになりそうなのは、そうだな」

 シラバスは毎年改訂して配られるが、教員の入れ替えでもない限り、内容が大きく変わることは少ない。チェスカリナはシラバスを見るまでもなくすでにほぼ、今年受ける授業を決めている。

「動物学上級と植物学上級とかどうだ?上級と言っても扱う動物や植物が変わるだけで、難度自体は中級と変わらない。上級だと地域の固有種になるんだ。ルスカダにはいない生き物が突然現れることもあるだろうし、ルスカダにはない植物が、役立つこともあるかもしれない」

「うん。それは、受けたい」

「あとは風土農学と風土医学か。農学と医学の知識がいる授業だが、修めてるだろ?」

 疑いなく問われた言葉に、ゼタは頷いた。

「ひととおりは。軽くだけど」

「十分だよ、名前でわかるだろうけど、風土農学はバウドル各地の土着の農法や作物を学ぶ授業。風土医学は風土病や民間療法を学ぶ授業だ」

「ぜひとも得たい知識だな」

「だろ?」

 にっと笑ったチェスカリナが、持っていた鞄から紙束とペンを取り出す。

「やる」

 紙束のなかから数枚を手元に残して、ゼタに差し出した。それは、すでに格子が書き込まれ、一部は文字や数字も書き込まれた、

「ん、時間割か」

「そ。いくら取りたい授業を決めても、分身は出来ないからな。あと、組み合わせの問題もある。武術のあとの座学は辛そうだぞ」

「他人事だな」

「取ったことないからな、武術の授業」

 あっけらかんと言いのけるチェスカリナに、ゼタが胡乱な目を向ける。

「必須じゃないのか」

「試験に受かれば免除だ。馬鹿らしいだろ、程度の低い奴らに合わせるのは。まあ、そうは言っても顔繋ぎで受ける奴がほとんどだけど」

 肩をすくめたチェスカリナが、シラバスをめくりながら時間割を書き込む。

 寄宿学校の授業期間は短く、前期が9月から12月の4ヶ月、後期が2月から5月の4ヶ月だ。

「休暇期間や休日にある短期集中の授業を除くと、履修期間は最短半期、最長で通年。さっき言ったみたいに基礎的なものを履修しないと取れない授業もあるから、入学時にある程度履修計画を立てる生徒がほとんどだけど、ゼタの場合は留学生だしその辺は融通利くだろ。時間割が破綻しないようにだけ気を遣って、年間計画立てとけ」

「ん」

「人気のある授業だと、同じ授業を曜日違いでやってたり、半期履修のものを各期でやってたりするから、まずはそうじゃない、時間固定で取りたいやつからあてはめてくと良い」

 口と手を同時に動かしていたチェスカリナが、ふと顔を上げてゼタを見る。

「ゼタって、ルスカダでは学校行ってたのか?」

「いや、ルスカダだと皇族は皇室教師が付くから学校には行ってなかった。行きたいって言えば行かせて貰えるけど、教室に座っているより、野山を駆ける方が、俺は性に合うから」

「その辺はゆるいんだな」

 ふーんと呟いて、チェスカリナは時間割に顔を戻す。

「バウドルじゃ、王族も貴族も学校を卒業しないと家を継げない。貴族向けの学校はここも含めて三校あるから、そのどれかに王族も通う」

「ここがいちばん名門って聞いた」

「名門って言うか、家柄重視だな。平民の入学が許されてないのは三校のうちここだけだし、貴族でも、学校側から入学許可が降りなきゃ入学出来ない」

 チェスカリナのもとには入学許可証が届いた。腐っても辺境伯令嬢だからだろう。

 逆に、新興貴族や悪い噂のある家の子だと、いくらお金を積んでも入学許可証が手に入れられなかったなんて話も聞く。

 誰が決めているか知らないが、なにかしら基準があるのだろう。

「よく俺の留学の許可が出たな」

「自分で言うなよ。王女殿下がここの生徒だったからだろ。三校のうちいちばん守りが堅いのがここだ。今代の王女はみんなここの生徒だよ」

 王女を移すか、皇子を受け入れるか。安全性から言っても、皇子を受け入れる方が楽だろう。

「ん。こんな感じかな。私の時間割は決まったから、ゼタの時間割見るよ」

「早い」

「だいたい決めてたから」

 ぺらりと四枚時間割を振って、チェスカリナはゼタが自分の前に置いた時間割を指差す。

「上級の授業は通年のものが多いんだ。時間割もだけど、先生との相性もあるからな。同じ名前の授業でも、担当教員でぜんぜん評判が違ったりする」

「さっきちぃたんが言ったのは、絶対取るから。動物学上級と植物学上級と、風土農学に風土医学」

「全部通年だ。埋まるのが、ここ」

 チェスカリナが手を伸ばして、ゼタの時間割へルスカダ語とバウドル語両方で授業名を書き込む。

「……これだと週に二日しか会えないな。ほかにちぃたんと受けられそうな授業ない?」

「えー?二日で良くない?」

「二日で良くない」

 即答で否定されたチェスカリナが、自分の時間割を見下ろす。

「馬術上級」

「取る」

「これ、授業時間中ただひたすら早駆けするだけの授業だけど?」

「運動不足解消にぴったりだな」

「まあ取ってる奴だいたいみんなその目的だけど」

 息を吐くチェスカリナの横から、チェスカリナの時間割を覗き込んだゼタが問う。

「これは?体力育成上級」

「教師に指定された経路をただひたすら走り続ける授業」

「取った」

「もの好きだな」

「お互いさまでしょ」

 自分の時間割を書き込みながらゼタは笑う。

「あ、と、はー、ん!この、畜産実習と、農耕実習ってやつは?」

「ゼタは無理だ」

「なんで」

「近隣の農家の手伝いだから」

 皇子にさせられることじゃないと首を振る。本人が望んでも、周りが許さないだろうし、実習先の農家も哀れだ。

「やりたい」

「だぁめ」

 お茶を飲み干したチェスカリナのために、おかわりを注ぐヨルハの目が、ゼタを止めてくれと訴えている。

「つかさ」

 仕方がないとチェスカリナは折れる。

「どうせ予習復習一緒にやんだから、良いだろ、授業は被らなくても。授業なくても顔は合わせるよ」

 チェスカリナから見た正直な意見として、第二王女殿下は頭が良くない。決して悪くはないが、十人並みのご令嬢よりちょっとマシ程度の頭脳と知識だ。留学生であるゼタの勉学の補佐が出来るほどの頭の出来はしていない。

 だから、ゼタが本気で授業を理解しようとするならば、チェスカリナが補佐に付くほかないだろう。おそらく皇子御一行を除いた学内で、最もルスカダ語が得意なのがチェスカリナだから。

 もちろん、教員直々に見る、と言う方法もなくはないが、教員は担当教科の知識は豊富でもルスカダ語が達者とは限らない。正しく訳せる保証もない通訳を通すくらいなら、チェスカリナが説明してしまった方が良い。

 え、と目を見開いたゼタが問い返す。

「予習復習一緒にやってくれるのか?」

「知り合いが落第するところは見たくないからな」

 ぱっと目を輝かせたゼタが、長い腕でチェスカリナに抱き付く。

「ありがとう!ちぃたん愛してる!!」

「おいそれ絶対に他所よそで言うなよ!?」

 怒鳴ったチェスカリナの横で、ほっと息を吐いたヨルハが、微笑んで言う。

「では、ちぃたんと被る授業の、前日と当日の放課後は予習復習の時間にして頂きましょうか。可能であれば、お互いの都合の合う休日も」

「ん、私は構わないけど、本来の目的は交流なんだから、交流の機会があるときはそっち優先しろよ?」

「ええ、もちろんです。もし、都合が合わなくなった場合は、分かり次第、彼らに伝言を頼みます」

 彼ら、と言ったヨルハの首元から、ちょろりと顔を出す小さな銀の生き物。

「ティスプーン」

 チェスカリナが手を伸ばせば、ぴょこりと飛び乗って来る身体は、ひんやりと冷たい。そして、続けてもう一頭が顔を出す。

「シュガートングも。連れて来てたのか」

「ええ。この国でいちばん信頼出来る相手は、ちぃたんですから」

 するするとチェスカリナの腕を登った二頭が、ちょん、とチェスカリナの頬に鼻先をあてる。

「はは、冷たいよ」

 チェスカリナはくすぐったそうに笑ったが、振り払いはせずにすり寄る2頭を受け入れた。

 鼻先から尻尾の先までがチェスカリナの指先から手首の長さほどの、金属光沢を放つ銀色の蜥蜴。雪蜥蜴と呼ばれるそれは、名前こそ蜥蜴だが極小の竜だ。最も動物に近い精霊種とされる竜ゆえに、雪蜥蜴は極寒の雪の中でも冬眠することなく活動が可能で、知能も高い。

 冬場は数日間続く吹雪が繰り返しあるオリザ辺境伯領では、冬場に空を使った移動や情報のやり取りをすることが難しい。このため基本的に陸路が発達しているが、陸路は空路に比べて時間が掛かる。

 その、情報伝達に掛かる時間を短縮する手段として、アルトゥール家が取り入れたのが、雪蜥蜴だ。アルトゥール家では数百頭の雪蜥蜴を飼育調教し、伝書鳩代わりに使っている。伝書鳩代わりの雪蜥蜴は、そのよく磨かれた銀食器のような見た目から銀食器カトラリーズと呼ばれ、個々に食器の名前を付けられている。

「元気だったか?うん。いつも遠くで頑張ってくれててありがとうな。しばらくは、近くにいられるから」

 カトラリーズはチェスカリナにいたく懐いていて、顔を合わせればこうしてすり寄って行くし、どんなに離れたところからでも、チェスカリナの許へは絶対にたどり着く。

 情報伝達手段としてヨルハに預けられていたカトラリーズ、ティスプーンとシュガートングも例に漏れずチェスカリナが大好きで、久し振りの再会を全身で喜んでいる。

 少女と蜥蜴のたわむれを、青年たちは微笑ましく眺めた。

「相思相愛だな」

「そうですね」

 ゼタの呟きに頷いてから、ヨルハがチェスカリナへ問い掛ける。

「こちらの都合がつかなくなったときは、彼らで連絡しますから、ちぃたんももしなにか用事があるときは、連絡して下さいね」

「ああ。チョップスティックスを行かせるよ」

 チェスカリナが片手を上げれば、するりと袖口から新たな銀の蜥蜴が現れる。

「ライト、よろしく」

 チェスカリナに声を掛けられた蜥蜴は恭しく頭を下げると、挨拶するようにチェスカリナとたわむれていた蜥蜴と鼻先を合わせる。

「ヨルハも覚えて。一応ほかの4人も」

 銀の蜥蜴のまんまるの目が、部屋の面々を見回した。そうしてこくりと、頷くように頭を上下させると、またしゅるりとチェスカリナの袖に戻る。

「ありがとう」

 チェスカリナは袖口に声を掛けると、さて、とゼタの時間割に目を戻す。

「じゃあ、私と被せる授業はこれで決まりで、あとはどうするんだ?」

「とりあえず、外野がうるさくならないように、第二王女といくつか被るように調整するか」

 嫌そうな顔でゼタが答える。

「あと、有力な領主候補とも」

 ふーん、と呟いて、チェスカリナがゼタの時間割を眺める。

「どのくらい、授業取るつもりなんだ?」

「授業があるからって、交流を断る理由になるくらい」

「おい」

 ゼタを半眼で睨みつつ、チェスカリナはゼタの時間割に授業を書き込む。

「今年いる領主候補ならここだな」

 書き込まれた授業は、昼前の授業が多い。

「昼前の授業を被せて、昼直後の授業を空けておいたら、昼食でゆっくり交流出来るだろ」

「なんでその思考が出来るのに、ちぃたんはろくに交流してないの」

「その思考を交流しないために使ってるからだな」

 チェスカリナが首を傾けて、空いている昼前の時間を指す。

「こことここに色彩学の授業があるから、王女を誘ってみろよ」

「うん」

「あとはまあ、埋めたきゃシラバス流し見して、気になる授業でも取ったら」

 ゼタたちが首を傾げると、チェスカリナが補足を付ける。

「同じ授業が気になる奴の方が、たぶん趣味も合うだろ」

「それもそうだね」

「あと、あんまりヨルハたちでがっつり囲むなよ。ここの警備はしっかりしてるからそこまで警戒はいらないし、親しい奴で固まられたら話し掛けにくい」

 ヨルハが頷いて、それなら、と言う。

「ちぃたんと一緒の授業のときは、誰かひとりが付くだけにさせて貰っても?ちぃたんがいれば、わたくしどもが離れても、国から咎められることはないでしょうから」

「構わないけど、そうか、そうだよな」

 チェスカリナが頭を掻く。

「護衛で来てんのに、迂闊に離れるわけにも行かないのか。なら、もうちょい授業被せるよ」

「良いのか?」

「ヨルハたちだって、息抜きの時間はいるだろ。興味がある授業を取ったって良いんだし、ゼタじゃなく、ヨルハたちと関わりたい奴だっているかもしれない」

 んー、と首を傾げて、チェスカリナが睨むのは、自分の時間割の空いた欄だ。

「ヨルハ」

「はい」

「ゼタに料理をさせるのは、問題ある?」

 チェスカリナが指差すのは、唯一空きのある昼前の時間だ。

「騎士を目指す生徒向けの、基礎的な内容の調理実習があるんだ。林檎の皮剥きから教えて、最終的に野営料理が三日分作れるようになるまで指導してくれるやつ。作ったものを自分たちで食べるから、昼前に設定されてるし、一緒に作って一緒に食べるから、交流もしやすい」

 苦笑したチェスカリナは、私は料理出来るし取る気なかったんだけどと言う。

「取ってないから取ろうと思えば取れる。あとはここ」

 次に指すのは別の日の、午後最後の二時限だ。

「解体の基礎を教えてくれる授業がある。こっちも、道具の扱いから教えて、魚、鳥、小動物に、最後は鹿や猪の解体までやらせて貰える」

「それもチェカにはいらない授業だね」

「うん。だから取ってない」

 ただまあ、とチェスカリナは首を傾げる。

「オリザ以外のやり方を知れるとか、効率の良い教え方を知れるとかは、無駄にはならないから」

 つっても、ゼタにやらせて問題なければだけどと、チェスカリナはヨルハを伺った。

「構いませんよ。持っていて悪い知識でもありませんし」

「だって。どうするゼタ」

「やる」

 チェスカリナの言葉を食い気味に、ゼタが答える。

「そ」

 頷いて、チェスカリナが自分とゼタの時間割を追加。

「んじゃ、あとはゼタたちで話し合ってよ。助言が欲しけりゃ、訊けば答えるからさ。あーあと、王女の都合は早めにお伺いしときなよ」

 言うだけ言って紅茶を飲み干し、未だチェスカリナから離れないティスプーンとシュガートングにおやつを与え始めるチェスカリナ。そんなチェスカリナのカップに紅茶を注ぎ足し、ヨルハはゼタへと目を向けた。

「王女殿下と被せるのは、色彩学ふたつと舞踏でよろしいですか?」

「ああ」

「わかりました。予定をお伺いして来ましょう」

「頼む」

 一礼して出て行くヨルハを見送って、ゼタは歯抜けの時間割を見下ろした。

拙いお話をお読み頂きありがとうございます


続きも読んで頂けると嬉しいです

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