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チェスカリナ・アルトゥール

 チェスカリナ・アルトゥール。かつては敵国であった、隣国ルスカダとの国境を守る、オリザ辺境伯の末子。

 過去には血で血を洗うような凄惨な戦いが繰り広げられたこともあったオリザ辺境伯領だが、そんな戦いも今は昔。五十年前に不可侵条約が結ばれてからは、戦を仕掛けることも仕掛けられることもなく、現在御齢四十五歳の現オリザ辺境伯が三十二歳で爵位を継いだ時には、ついに戦知らずの辺境伯が立ったと揶揄されたほどの平和な土地。

 その、辺境伯家で祖父母父母に加え三人の姉と三人の兄に溺愛された四女チェスカリナは、アルトゥールの寵児と褒めそやされ、末子でありながらオリザ辺境伯の後継者と、辺境伯領内で目されていた。

 このためチェスカリナが貴族の集まる寄宿学校で目指したのは、どこの嫡男にも言い寄られないこと。

 中肉中背で顔立ちも飛び抜けて美しいわけではなく、髪色も目の色も地味なチェスカリナ。そつなく学校生活を送っていれば、そうそう目を付けられることもないだろう。そう考えたチェスカリナは、その予想通り平穏な学校生活を送っていた。

 このまま行けば、問題なく卒業を迎えられるだろうと予測し、改めて学校生活を地味にやり過ごす決意を固めた矢先、夏季休暇中に届いた一通の手紙により、未来予想図は暗雲で覆われることになる。

 家柄が少し良い以外は地味で普通なチェスカリナ・アルトゥールの、唯一少し逸脱した経歴。

「なんで、ほぼ国交のない隣国の第一皇子が、突然留学して来ることになる」

 切り立った山が唯一途切れた元敵国との国境。そこを治めるオリザ辺境伯の娘だからこそ得てしまった、とんでもない偶然。

 チェスカリナは、かつての敵国ルスカダの第一皇子と幼い頃に出会い、今では親しいと言える程の友人同士だった。


 なんで突然留学なんてと返した手紙の返事によれば、五十年の不可侵の節目に、国交を始めないかと言う話が持ち上がったかららしい。

 とは言え上の世代では、まだまだ敵対意識もある。ゆえにまだ比較的偏見が少ないであろう、若い世代から交流を始めよう。幸いにも、次代を担う王族、ルスカダの第一皇子と、我が国バウドルの第二王女は同い年。それならば、留学と言う形で、お互いのことを知ってみてはどうだろうか。

 そんな考えから、第一皇子の留学が決まったらしい。

 王女ばかりで王子はひとりきりのバウドルと異なり、ルスカダは皇子が五人もいる。たとえ第一皇子だろうが、死んでも替えがきくと判断されたか。

『静かに暮らしたいから、学校では絶対に近寄らないで』

 同情の言葉など求められてはいないだろう。

 それにしたって随分な返信を書いて送り、返信が来る前に夏季休暇終了に向けて学校へと戻ることになった。

拙いお話をお読み頂きありがとうございます


続きも読んで頂けると嬉しいです

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