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風紋のアーツ ~魔剣の頂を求めて  作者: だるは
第一章 魔術学園編
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第五話 静止

個人戦があることをすっかり忘れていた俺たちは足早に宿へ向かい眠りについた。


急いで学園に向かうと多くの生徒と校長が待っていた。

 「おはよう諸君、今日の個人戦の舞台はあれじゃっ!!」

校長に指さされた方向にはなにもない野原だった。

 「…は?」

どんな魔法を使ったのかは分からないがそこに巨大な競技場が形成されていた。巨大な壁に囲まれ観客席のようなものまである。

 

周りの生徒達が目を輝かせるのが伝わってきた。

 「第一回戦はドルメインVSロアンじゃっ!!!」

気づけば俺とドルメインと呼ばれた生徒が競技場の中心に、他の生徒は観客席に飛ばされていた。

 

 「ルールを説明します。」

メガネを掛けた厳格な女性が声を上げる。

 「どちらかが戦闘不能、もしくは敗北宣言によって勝負を決します。」

 「始めっ!!!」


合図とともに抜剣し駆け出す。剣を振り上げ斬りかかるが、ドルメインは動く素振りを見せない。

 「はあっ……!!!」

刃がドルメインの胴に凄まじい勢いで迫る。


―――が、その剣がピタリと止まった。

 「っ!?」

ドルメインの打ち出した炎が身を焼き、後ろに飛び退く。ドルメインの体に触れた感覚はなく剣が空中で静止したのだ。

 「……なんだ今のは?」

 「教える訳無いじゃんかあ! いやいやびっくりしたよ、急に突っ込んでくるから止めちゃった。」

ドルメインが下卑た笑みを浮かべて言った。もう体は何事もなかったかのように動く。

 「なるほど物体操作の応用か?」

 「……良くわかったねえ! ま、意味ないんだけどね!」


 「《物体停止(リ・ムーヴェント)》」

またもや体の動きを止められ、ドルメインがゆっくりと迫ってくる。

 「はい、おしま――」

俺の背後から小さな竜巻が発生しドルメインを強襲する。

 「へえ、予め準備した魔法を時間差で発動か……やるじゃん!」

 「さっさとかかってこいよ、チビ!」

 「な……!! チビだと!! 舐めるなあ!!!」

罵られたドルメインが表情を怒りに染め魔力を開放する。

 「《物体停止(リ・ムーヴェント)》オッッ!!!」

奴が怒りに任せ突進する。

 「は!?」

俺はドルメインを剣で弾き飛ばしていた。

 「なんで……なんで止まらないんだ!?」


 「……お前には見えないか? この”風”が!!!」

ドルメインが絶句し目を疑う。

 「こ……れは……」

それは吹き荒れる10の竜巻の群れが今にもドルメインを引き裂かんとする姿だった。

 「か、数でやり過ごそうったってそうは行かないよ……!!」

全ての風が四方からドルメインに迫る――


 「ふふっ、《全物体停止オール・リ・ムーヴェント》!」

猛然とした勢いで迫っていた風が全て完全に停止する。

 「全部止めれば関係ないもんね~! これで本体を焼け、ば………?」

ドルメインは俺を見失った。魔法の発動直前に逃げた? その可能性は自分の魔法への自信が否定する。

 

 「に、逃げた? はは、僕のか――」

 「お前の敗けだ。」

背後から現れた俺がドルメインの首もとに剣を突きつける。

 「は!? どうやって……」

 「簡単だ。お前の全物体停止には数の制限があった。」

 「でも10ぐらいなら簡単に……」

 「それがお前の敗因だ。俺の竜巻は一つに幾重もの竜巻を重ねていた。100くらいな。」

 「そん……な……僕の敗けだ……」


 「勝者ロアン!!!」

観客席中から大歓声が巻き起こる。良かった。負けたらどうしようかと思っていたのだ。


それから様々な熱い試合を見て散々盛り上がり、ついにある試合が始まった。


 「うーん、まさか君と戦うことになるなんてね。」

そこにいたのは竜胆の少女だった。

 「そうね。組み合わせが良くなかったわ。まあ試合だから本気で行くわよ!」

 「こっちもだ。」

双方剣を構え睨み合う。


 「始めっ!!」

合図と共に一斉に駆け出し剣を衝突させる―――


 「「……は?」」

高速で迫った剣と剣はぶつかり合うことなく止められていた。

 「……お前は何者だ?」

剣同士の衝突が起こるはずだった場所にたっていたのはシルクハットに杖を持ったスーツ姿の者。特徴的なのは顔を隠すように付けられた仮面だ。

 「見ての通り、道化でございます。」

そういうと同時に人差し指で俺たちの剣を吹き飛ばし大仰にお辞儀した。

 「観客席の皆さん! ようこそ私――魔王直属の配下ベルゾームの会場へっ!!!」

観客席のざわめきが伝播していき逃げ出そうとするものが数人。

 「お客様! 途中退場はご遠慮ください!!」

大袈裟に言うと、競技場の出入り口が全て土の塊で塞がれ脱出が不可能になる。まずい、実力のあるものは会場の中にはかなり少ない。生徒だけで対処するしかないだろう。


 「……ベルゾームが何のようだ?」

そう問いかける俺の顔を凝視する。 

 「おんや? おやおやおやおやぁ?! これはとんでもない偶然です!!」 

 「……何がだ?」

道化が可笑しそうに口をおさえ、吹き出すのを我慢するかのように言う。

 「あなた、森の引きこもりの弟子さんでしょ!!」

 「!? 何故それを……」

 「ふふふっ!! じゃあ最近弱ってるのも分かるよねえ?」

何が言いたいのか意図がつかめない。だがこいつは師匠を知っている?

 「ああ……」

ついに我慢の限界と言った様子で高笑いする。と思えば急に静かになる。

 


 「それ、やったの魔王だよ。」

仮面の顔を歪め、そう言い放った。

師匠の衰えの原因を知ったロアンは何を思うか。



お読みくださりありがとうございます。

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