息をするように嘘をつく
中絶をしたのは16歳の頃だった。
父親の首を絞めたのは18歳。
婚約破棄は20歳。
殺されかけたのは22歳。
デキ婚したのは24歳。
平凡そうに見える主婦を演じ続けて14年が経とうとしている。
周りから見たわたしは『良い娘』『良い妻』『良い母』だと自覚するくらい、毎日を嘘で塗り固めている。
今日も、嘘を嘘で上書きすることに忙しい。
わたしは生まれながらの偽善者。そう、確実に。
高校デビューなんてすることもなかった、ごく普通の目立たない女子。出会い系サイトが流行っていて、そこで彼氏を作るのも怪しい友達をつくるのも当たり前だった時代。
地味子でも【女子高校生】というブランドがあるだけで、男が釣れる。
16歳のわたしは、25歳の伸一と出会った。
車に疎いわたしでもわかるようなスポーツカーに乗り、背も高くて端正な顔立ちをした彼にハマるのは簡単だった。
世間も知らない女子高校生が食いつかないわけがない。
「はじめまして。伸一です。どこ住みですか?」
「はじめまして。ノノカです。B市に住んでいます。伸一さんは、どこ住みですか?」
そんな他愛もない自己紹介から始まった、腐った片思い。