止まない不思議
せっかくのまろやかな朝なのに。
整え忘れた髪先を感じられるほどに後ろに迫る人。
せっかくの緩やかな昼なのに。
擦れて赤焼けの鼻先を感じられるほどに前を掠める人。
せっかくの軽やかな夜なのに。
漏れた思い出をなぞる指先を感じられるほどに心を混ぜる人。
何故から始まる、知らない不思議。
どうしてかって、止まらない不思議。
どうしたらって、止まない不思議。
まろやかな憎しみが、服従を忍ばせて完成させる。
暖かい憎しみが、復讐を隠して完成させる。
軽やかな憎しみが、逆襲を遺して完成させる。
わたしも、あなたも、完成させる。
街も、世界も、星も、完成させる。
星の輪郭、柔らかい頬を撫でる手、無償の愛に忍ばせて。
街の遠景、かわいい声を掬う舌、無償の愛に隠して。
世界の望遠、真実を浴びる心を頬張る口、無償の愛に遺して。
何故から始まるわたしの不思議、きっとあなたが完了させる。
どうしてかって、どうしたらって、無情な愛には敵わない。