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2話目 高木くんはワルそうだ

ドルンドルンとエンジン音が造形棟に響いた。


「来た!」


白昼の光に当たり、黒光りするバイクから降りたのは全身真っ黒のライダースーツ姿の長身の男だった。

男はいつも通り颯爽と漆部屋へ向かった。


「高木くん······」


なめこ川は二階の廊下側の窓から眺めて目を輝かせつつも、極度に恥かしがり屋のなめこ川は高木に出くわさないように、あわてふためきこの場を去ろうとしていた。

こんな性格のため、同じコースの専攻も恥ずかしくてできなかった。


と、なめこ川は突然首根っこを捕まれて漆部屋に引きずり込まれる。


「そんなところから覗いてないで、入ってよ」


「の・覗いていたんではないんです!やゃわわん…すみません!!わ私はネコを探して偶然ここを通りかかっただけで…ゆ・ゆ許してください~」


そんな可哀想な少女を見て、不適な女王のように、曽根は笑った。


「ほほほ!ようこそ、漆部屋へ!」





「あんた、誰?」


高木が漆部屋に入るとなめこ川が漆部屋を昭和のお母さんのような割烹着姿で立っている。

高木の登場に動揺しながらも、とりあえず掃き掃除をし始めて高木のムロ(個人用の塗りたての作品を保管する木の箱)を倒して大騒ぎする。


「誰って、先輩に生意気よ!彼女は貧田(ひんだ)先輩、4年生、れっきとした漆部屋の生徒なのよ!(ウソだけどな!!)」


「何言って······俺が知らない先輩がいるはずがない」


と大真面目に答える。


「彼女····いや、貧田先輩は去年の夏ごろから就職活動であまり部屋に来ていらっしゃらなかったのよ?今年度は新学期が明けてから今日が初かもね。

というわけで新学期の9月から自分の専攻のコースに分かれたばかりの1年のあんたには初対面かもしれないけど正真正銘の先輩よ。

漆部屋は年功序列、貧田先輩は海部先輩に次いでのTOP2!

特にあんたからは神というわけ。分かってるわね、先輩の言うことは何でも聞きなさいよ!!」


一匹狼だった高木は同級生と交流が少なく、同じ1年生でも、特に目立つ生徒でもないなめこ川の顔を覚えていなかった。

一方、高木は常にリーゼントにオールバックの頭髪、黒革ジャンのライダースーツ、ブーツ、アクセサリーにチェーンを腰にぶら下げジャラジャラ鳴らして歩く出で立ちで、オールドアメリカのロカビリースタイル(?)とでもいうのだろうか。

彼自身はスタイルも申し分なく大変に整った顔立ちであるのに、その偏ったファッションがそれを相殺しモテないという残念な結果に結びついていた。

とにかく女性の多い学科の1年生の中ではその風貌が浮いて同学年からさえも遠巻きにされていた。


「まあ!貧田先輩ったら、久しぶりだからって遠慮しないで、掃除なんて後輩に任せてくださいって言ってますのに、ね、おら!高木!」


なめこ川は首をかしげた。割烹着を無理やり着せて掃除道具を持たせてきたのは曽根からだった。

漆部屋を覗いていた罰なのかと従っていたのだ。

そうなのだ。

高木にストーカー紛いをしているのがばらされたら身の破滅なのだ、大人しくするしかない。


「·······俺がやりますよ、貧ナントカ先輩」


高木は嫌そうにため息を付き、それでも、唐突に現れた小さな先輩から掃除道具を奪い取り掃除を始めた。いかついファッションとは裏腹に意外と真面目な性格である。


「なめこ川ですう。そ、······でも、い、いちねん·····ですう······」


とぼそぼそ、なめこ川の声は、

わざと出した曽根の作業音にかき消されてしまった。


「高木、あんた風邪はどうしたの」


「ああ、何故かずっと治らなくてここしばらく酷かったけど、今日はずいぶんいい。治ったみたいだ」


「ったく、先輩には敬語で話しなさいよ····」


相変わらず生意気な後輩に、曽根は、改めて何度目になろうかの舌打ちをした。


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