12話目 曽根さんと猫たち
繋がりが悪いので前回の12話目を削除しました。
なめこ川と貧田先輩の出会いは裏話として完結後に出す予定です。
曽根は猫たちが何か一点を見つめているのに気づいた。
そこには呪いの大樹がある。
曽根には見えなかったが、高木がその樹ににしこたま吸い込まれた後だ。
この広場に集う猫という猫はそちらをじっと見ているのだ。
(チョウチョが飛んでいるのでも、ましてお魚がぶらさがっているわけでもない。)
曽根は周囲を伺った。
(誰かいるかと思ったけど、誰もいない。)
もしや、猫はこの世のものならぬものをみるというが·······と、考えてみたがたいして面白くもならない。
ふん、と曽根は鼻で笑った。
現実主義の曽根は幽霊など怖くない、というより存在自体を否定している。
そんな曽根が仇敵を呪詛するという行為に到ったのには、並々ならぬ事情というものがあった。
樹の側面はもはや高木の写真で埋め尽くされている。
数枚は顔の部分に杭を打ち付けた後が残る。
そのうちの一枚が落ち、ジャン•ピエールが咥えて行ったのだろう。
曽根はこの場所に日中こんなに猫が集うことを知らなかったので驚いたが、人を見ても物怖じしないので、大学構内で生徒たちに餌を貰っているのと同一猫たちなのだろう。
そこへ、茂みをかきわけて巨大な猫が登場した。
堂々としたボス猫、ジャン・ピエールだった。
すると日当たりのよい場所を空ける猫がいる。
彼は子分たちには見向きもせず開けられた場所へどっかと座りこんだ。
ジャン•ピエールはすぐに樹の中に閉じ込められた高木の気配に気づいた。
呪いの大樹を凝視している。
曽根はやはりその方角に何か、といぶかしむ。
樹の中でうずくまって外を睨んでいた高木も、こいつはどこかで見かけた猫だなと首を捻っていた。
霊魂の高木は思考力が次第に曖昧になってきているのに焦りつつも、
今までの思い出と感情が走馬灯のように駆け巡ってくる。
漆部屋で曽根にいびられた思い出も巡る。
憎しみが怨念のように吹き荒ぶ。
(曽根!俺がこうなったのも、俺が嫌いなお前がこうして呪ったせいなんじゃないか!?)
高木が声にならない声で曽根をなじると、ジャン•ピエールが触発されて曽根に向かって毛を逆立てて鳴き始める。
それに倣い子分猫たちも
にゃーんにゃーんにゃにゃにゃーーーん!
一斉に曽根に向かってなき始める。
曽根は皆に囲まれ非難されているような格好だ。
「ど、どうしたのよあんた達」
(見損なったぞ!呪いを解け!曽根!!)
「や、やめなさい」
(俺の身体を返せ!!!)
曽根と猫の大騒ぎは
森の木々に当たり散らし裏山一帯に反響した。





