10話目 暴れる猫
本日4回目の投稿。ようやく10話目です♪
なめこ川との再会を祝して、ジャン•ピエールは部屋中を荒らし廻った。
なめこ川はそれを止めようとじたばたした。
「似顔絵そっくり·····」
曽根はなめこ川の描いたポスターの似顔絵とジャン•ピエールを見比べて驚いていた。
下手だなんてとんでもない、瓜二つだ!
ジャン•ピエールはつまり、猫は可愛いものという一般概念は通用しない容貌で、体格も非常に大きい猫だった。
ジャン•ピエールは何か紙を咥えている。なめこ川はそれを見ようと追いかけた。
と、棚の上を飛び回ったジャン•ピエールが稼働している漆の精製機を見て毛を逆立てた。
あぶない突っ込む!
そう思った瞬間、滑車が回る音が響いた。ジャン•ピエールは足からロープで天井に吊るされていた。
「あ、先輩の作ったワナに·······」
漆の作業は、埃や動物の毛などを嫌う為、ペット禁止の仕事場が多い。
しかしながら、ここ数年の間大学構内に野良猫が増加しており造形棟周辺でも頻繁に出没するようになった。どうやら他のコースの生徒が餌をやっているらしい。
海部が1年の時、とうとう猫の数が学部生を上まわる程に増えたことがあった。
猫たちは餌とねぐらを求めて弁当やパンを持った生徒に襲いかかるまでにゲリラ化した。
当時の漆部屋の住民たちは猫の部屋侵入を防ぐ為、苦心の作で数多のワナを猫の通る場所に仕掛けたという。それが今だに残っているのだ。
「ジャン·······」
なめこ川は愚かな飼い猫を見つめた。
おかしい、確かにジャン•ピエールは乱暴なところがあるけど、こんなに無鉄砲に暴れない。
視点も定まっていないし、何だか気がそぞろな様子。
「とにかく、この部屋から追い出して!さもないと、······その子もかぶれるわよ!」
曽根の剣幕に驚いて、なめこ川は暴れるジャン•ピエールをワナから外して部屋の外に出そうとした。
すると、ジャン•ピエールがずっと咥えていた紙がはらりと落ちた。
それは写真で、男性の上半身が写っているのだが肝心の顔の部分にはなぜか貫通させた穴が開いていて、写り主が誰か判別がつかない。
ジャン•ピエールは咥えていた紙にはもう目もくれず、
部屋の外に出されるとジャン•ピエールは途端に走り出した。
なめこ川にはまるで追ってこいと言ってるかのように見えた。
「待ってえ~~」
なめこ川はいけずなジャン•ピエールを追いかけて走り出した。
と、猛突進の上回るスピードでそれを追い越す者がいる。曽根だった。
曽根は一目でその写真は自分が呪いに使用した高木の写真の一枚だと気づいたのだ。
それは確かに呪いの為に隠し撮りした高木のスナップ写真だ。
あの場所が暴かれたのかもしれない。
曽根はジャン•ピエールをも追い越して裏山の方へと疾走し、やがて見えなくなってしまった。
曽根が何処へ向かったのか、なめこ川には知る由もなかった。





