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5 サマーランド
「俺は本当に死んでいるのか」
俺は少女に尋ねた。
「そうよ」
なんとか自分が死んでいるという事実を受け止めようとした。
「だとしたら、どうしたらいい」
「奥さんのことをまだ愛しているなら自由にしてあげて」
眼を閉じた。
今までの人生が早送りで駆け抜けた。
妻との出会い。
最初のデート。
そして、結婚式……。
「すまなかった」
見ると妻の死体も女の子の姿も姿を消した。
殺風景な部屋に一人でいた。
ビジネスホテルの一室のようだった。
俺は部屋を出ると街を歩いた。
(あの子が言ったように俺は本当にもう死んでいるのか)
歩いてみても街並みは普通だった。
死後の世界とは思えなかった。
生きていた頃の現実と全く変わらない。
ここは死者が最初に訪れるという霊界の一種なのだろうか。