3 殺意
(浮気を認めた上で俺を「愛している」だと)
妻に強い怒りが沸いてきた。
あの男に会っている時の艶やかな妻の姿が蘇ってきた。
「リストラされたことを知っていたな」
「何のこと」
「俺のことを内心で馬鹿にしていただろう」
「違うわ」
妻が立ち上がりリビングを出ようとした。
「待て、話は終わっていない」
俺の手を妻がはねのけた。
「この野郎」
妻を突き倒した。
そして上に乗った。
「やめて、何するの」
まるで強姦魔に抵抗するように妻は暴れた。
「イヤーッ」
(そんなに俺のことが嫌なのか。さっきは「愛している」なんて言いやがったくせに)
ドス黒い殺意が芽生えた。
俺の手は妻の華奢な首に伸びた。
力いっぱい首を絞めた。
妻が俺の下で足をばたばたさせた。
それでも嫉妬と憎悪にまかせて絞め続けた。
妻はぐったりとして動かなくなった。
急に我にかえった。
慌てて脈を取った。
脈は無かった。
ブラウスを剥ぎ胸に耳をあてた。
心臓も止まっていた。
秒針が時を刻む音だけが部屋に響いた。
はだけた胸から見える白いブラジャーが妙に痛々しかった。
自分のしでかしたことが怖くなった。
動かなくなった妻をゆすって起そうした。