表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無表情で不気味と婚約破棄された令嬢は、王子に溺愛されています。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/24

第21話 彼の前では

 私は、今日も王城を訪れていた。

 前の訪問から、私は結局、一回も笑顔を形作れなかった。一人では、まだ笑顔を作ることができないようである。


「お待たせしました……おや、今日も笑顔が見えていますね」

「え?」


 そんな私に対して、久し振りに会ったエルクル様はそのようなことを言ってきた。

 笑顔が見える。その言葉の意味が、私にはまったくわからない。


「私、笑っていますか?」

「ええ、笑顔だと思います。最も、小さな笑みですが。でも、確かな笑みですよ。やはり、ご自宅でも練習されたのですか?」

「あ、いえ……」


 私は、エルクル様の言葉に驚いていた。

 とりあえず、私はこういう時のために持って来ていた手鏡を取り出す。今の自分を、とにかく確かめたいのだ。


「えっ……」


 鏡に映った私は、その表情を驚きのものに変えた。

 それに変わったことも驚きだが、そもそも笑顔ができていたのに驚いて、私はこの表情になったのである。

 何故かわからないが、私は笑顔以外の表情まで戻って来ていた。私の顔に、急に色々と変化が起こっているのだ。


「おや、そういう表情もできるようになったのですね? 訓練の成果ですか?」

「えっと……」


 そんな私に対して、エルクル様は特に驚いていない。

 彼の中では、私は先日の訓練である程度表情を作るコツを掴み、家に帰ってからも特訓して、こうなっているとなっているのだろう。

 その考えは、至極全うなものだ。普通に考えたら、そう思うのが自然だろう。


「その……実は、私、家ではまったく表情が変わっていなかったのです」

「え? でも、今は変わっていますよ?」

「その……ここに来てから、変わったというか。自分でも驚いているのですが、私はこの瞬間に表情を取り戻しているのです」

「そうなのですか……?」


 私の言葉に、エルクル様は驚いていた。

 私自身も、この現象に驚いている。私は、どうして、急に表情を取り戻すことができたのだろうか。


「それは……不思議なことですね。もしかして、成功体験がある王城では、表情が作りやすくなっているということでしょうか?」

「成功体験……あ、いえ、少し違うかもしれません」


 私は、だんだんと自分の中で整理ができてきていた。

 この王城で、私が表情を作れるようになった理由。それは、この地にあるという訳ではないはずである。


「多分、私が表情を作れるようになったのは、エルクル様のおかげなのだと思います」

「え? 僕のおかげ?」


 私の言葉に、エルクル様は目を丸くした。

 恐らく、この理由に間違いはないだろう。私が表情を作れるようになったのは、エルクル様と会ったから。彼がいるから、私は表情を作れるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ