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第12話 訓練開始

 私とエルクル様は、とある部屋に来ていた。

 その部屋は、鏡やベッドが置いてある部屋である。

 ここは泊れる客室だ。その部屋が、訓練にはいいと判断したのである。


「えっと、本当にここでいいのですか?」

「ええ、このような大きな鏡があれば、私も自分がどのような表情かわかります。ベッドがあれば、色々と試せると思いますし、ここでいいと思います」

「ベッドで試す? いや……まあ、いいでしょう」


 エルクル様は、この部屋を選んだ時から、少しだけ動揺していた。

 もしかして、こういう部屋に二人きりなので、緊張しているのだろうか。

 よく考えてみれば、今まで会っていたのは話すために設けられた客室だ。この部屋とは、まったく異なる場所である。

 ここは、完全に個人的な空間だ。そういう部屋に、男性と二人きりになるのは、まずいのではないだろうか。


 しかし、私とエルクル様の関係は、別に何かあっても問題ない関係である。そのため、それがまずいことという訳ではないだろう。

 そもそも、エルクル様はそのようなことをしてくる人ではない。誠実な彼が、何かしてくるなど考える必要はないだろう。


「さて、とりあえず、鏡の前に行かせてもらいます」

「あ、はい」


 考えをまとめた後、私は鏡の前に座った。

 そこには、まったく無表情な私がいる。本当に、まったく表情がない。


「……一つ、お聞きしたいのですけど、エルクル様から見ると、私の今の表情はどのようなものなのでしょうか?」

「どのようなもの?」

「ええ、私も、エルクル様のように変化が見抜けるようになりたいのです。だから、参考までに教えて頂けませんか?」


 そこで、私はエルクル様に自分の表情について聞いてみた。

 私の無表情の中に、エルクス様は表情を見つけている。それを教えてもらいたいのだ。

 自分の表情が、少しでもわかるようになったら、気が楽になるだろう。だから、知っておきたいのだ。


「そうですね……なんというか、少し緊張しているような感じですかね。顔が強張っているというか、そういう感じです」

「そうですか……」


 私の現在の表情は、緊張しているらしい。

 恐らく、先程変なことを考えたから、そのような表情になっているのだろう。

 確かに、多少の緊張は自覚している。それが、表情に出ているとは思っていなかったが。

 顔が強張っている。それが、そう判断した理由のようだ。だが、まったくわからない。


「えっと……僕のこれは、ずっと顔を見ていて、わかるようになったことです。その……強い思いがあって、理解したことですから、すぐにはわからない……というか、もしかしたら、他の人ではできないかもしれません」

「あ、そうなのですね……」


 私の表情で落ち込んでいると判断したのか、エルクル様はフォローしてくれた。

 その内容は、少し恥ずかしいものだった。自分に対する思いを、こうも素直に告げられると、中々来るものがある。

 しかし、その言葉で少しわかった。エルクル様の判断方法は、この一回でできるようになるものではない。これだけで、落ち込んだりしてはいけないのだ。

 こうして、私をエルクル様の訓練が始まったのである。

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