第10話 裁きが終わって
私とエルクル様は、全てを終えて、王城の一室に来ていた。
あの後、ザゼンド様はこっぴどく怒られていた。周りの令嬢達に責められて、かなり参っていたあの姿には、流石に少し同情してしまう。
だが、結局は自業自得である。たくさんの女性と関係を持った彼の軽薄さが、これで治ればいいのだが。
「ふう、これで、彼も懲りるといいのですけどね……」
「ええ、そうですね……」
かなりの騒ぎになったため、私もエルクル様もそれなりに疲れていた。
怒った令嬢の中には、近くにあった物を投げようとする人もいた。そういう人を止めたりして、中々忙しかったのだ。
「本当に、彼は許されない人です。まったく、どうして、ああいうことをするのか、僕にはまったく理解できませんよ」
「浮気のことですか?」
「ええ、そうです」
エルクル様は、ザゼンド様の行動に怒りを感じていた。
今まで接してきてわかっているが、エルクル様は誠実な人である。だからこそ、あのような軽薄な男は許せないのだろう。
よく考えてみれば、私のことを好きになって、その表情を見抜けるようになる程、この人は一途な人なのだ。恐らく、浮気なんて考えるような人ではないだろう。
そう考えると、少し恥ずかしくなってきた。私は、そんなにも思われているのだ。なんだか、とても温かい気持ちになる。
「それに、それを隠して、あなたにひどいことを言って、婚約破棄したことも許せません。そういう人の気持ちを考えない行いをするなんて、あってはならないことです」
「そうですよね……」
エルクル様は、私がひどいことを言われたことも怒ってくれた。
それについては、私も色々と思っている。あのようなことを言われた怒りが、私が今回の裁きを下した理由だが、後から考えてみると、そこに関しては仕方ないと思うようになっていた。
私が、無表情で不気味なことは、残念ながら事実である。彼がそれにストレスを覚えていたことは、真実だったのではないか。そのように思ってしまうのだ。
最も、彼がやっていたこと自体は許されることではなかった。そのため、今回の裁きに対して、後悔は感じてはいない。
「何はともあれ、これで彼の裁きは終わりました。これからのことは、彼が判断していくことですが、できるだけ良い選択をしてくれることを願っていますよ」
「ええ、そうですね……流石に、これで懲りてくれるといいのですけど……」
とにかく、これでザゼンド様に対する裁きは終わった。
エルクル様の言う通り、今後、彼が良い選択をしてくれればいいのだが。