009 猫と空の下。
少し改稿しました!
ポツリと置かれた箱というのは。
心をザワつかせる物の一つ。
高い空の下。
魔女は月に一度、近くの町に薬を売りに行きます。
薬はそこそこのお値段で買い取ってくれて、そして魔女は少しだけ欲しい物を買ったりします。
本とかお塩を買ったり。
一ヶ月振りに会う人間は、とても新鮮で賑やかで。
眺めるだけなのだけど、それでも胸がいっぱいになり、少し人恋しくなったり。
人に生まれた子供は町に住む。
魔女は森に住む。
距離はちょっぴりあるけれど、人と魔女はやっぱり似ている。
かなり近しい存在だと思うのだけど。
DNAとかどうなのかな?
前世だったら調べられるから、前世の科学力は偉大だな?
その帰り道、魔女は木箱を見つけました。
広い空の下で。
ポツリと置かれた木箱。
魔女の心はザワつきました。
土を固めた粗末な道で。
殆ど人が通らない、森へと続く道。
前にも後ろにも人は歩いていない。
頂こう。
魔女は一瞬でそう結論付けました。
あの箱は頂こう。
大抵、ああいう箱は頂くに限る。
雨上がりの空は綺麗に晴れていて。
そんな空の下。
ポツリと箱が置いてある。
拾うにはお誂え向きではないか。
良いものに違いない。
魔女は月に一回、町に薬を売りに行くけれど。
箱を見つけたのは初めてで。
少し興奮し始めました。
犬でも猫でもアヒルでも。
山羊でも牛でもオールオッケー。
守備範囲は広いと思う。
しかしここは異世界。
ファンタジー的な世界は家畜は捨てない。
アヒルはないか?
ひよこもないかな?
育てて食べるのは人間の十八番だし。
山羊は大きすぎるかな?
牛も箱には入らない。
犬は番犬になるし、いらなければ子犬の時に家畜市場で売る。
と来ればーー
猫でしょ!
魔女は早歩きから競歩になりました。
前世では運動には自信がなかったけれど。
ウォーキングは流行っていた。
早歩きもきっと行けるはず。
競歩は異世界で、習得しようと思います。
猫キタ。
猫キタかも。
魔女は速やかに箱を拾いました。
そうして振り返りもせずに、森への道を急ぎます。
忍者のように音もなく。
陰のように目立たぬように。
やっと森まで着いて、中をそっと確認した時。
嬉しくて魔女は泣いていました。
人も恋しかったけど。
猫も大概恋しかった。
雨上がりの空の下で、魔女は宝物を拾いました。