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004 猫と少年。

 魔女は寝過ごしてしまいました。

 外はもう明るい。

 太陽は高い位置にあり、小鳥は既に餌を探しに出掛けている。

 

 猫と出会えた奇跡と興奮で。

 寝坊してしまった。


 夜が長い日は。

 昼が短くなる。


 体感と主観の時刻は、いつだって体の中に存在する。

 魔力も満ちて来る気配。

 夜の長さは魔女の生態にお誂え向きなのだ。


 魔女は昼下がりになって耳をくすぐる感触で起きました。


 猫っ!


 見紛うこと無き猫の感触。

 どんなに切望したか分からないくすぐったさ。

 魔女はこの感触をいつまでも味わっていたいと思うのです。

 猫は元来の照れ屋で、目が合うと少し距離を置く習性がある。

起きてしまったら、離れてしまうかもしれない。

 けれど恐る恐る目を開く。

 そして絶句……。


 魔女の耳元に顔を寄せているのは猫じゃない。

 …………。

 魔女の視線の先には、淡い銀色の髪をした少年。

 

 魔女は泡を吹いて倒れそうになりました。

 どうして人間がいるのでしょう??

 十三歳か十四歳か?

 前世でいうと中学生くらいの男の子。


 黒い意匠の凝ったローブを着ていて。

 魔女は隣国の服ではないかと思いました。


 隣国は魔法大国。

 多種多様のローブやロッドが売っていると聞いたことがあるから。


 少し現実逃避をしていた魔女は、ベッドに視線を戻しました。


 どうしよう?

 どうすれば良いのかな?


 魔女は独り身なので、男の子と一緒に寝た事がありません。

 前世でも彼氏という存在が皆無だったので、男の人と一緒に寝たことがありません。


 初体験でした。

 初体験キター。

 

 別に何がどうなってもいないのですが。

 初体験という括りにして置こうと思います。


 魔女はおろおろおろおろしながら、辺りを見回す。

 魔女が見た水差しの水は沸騰するし。

 外からは井戸の水が溢れる音が聞こえます。


 魔女は水系の魔法が得意としていて。

 水系の魔法が得意な魔女は、大概回復魔法や薬作りが得意。

 興奮したり慌てたりすると、水に作用してしまう。


 水音が大きかったからか、少年は薄く目を開く。

 紅い瞳。

 宝石の瞳。


 少年は目を覚ますと、ぼんやりと魔女を見つめる。

 次に自分の手を不思議そうに閉じたり開いたりしている。


 どうしよう?

 どうすれば良いのかな?


 ここはベッドの中で。

 今は昼下がりだけれど。


 初対面なのだから、挨拶をした方が良いのだろうか?

 やはり礼儀は大切なのかもしれない。


 長年の一人暮らしで『挨拶』という存在は忘れがちだが、憧れでもある。


「おはよう」かな?

 お昼だから「こんにちは」かな?

 魔女が所在なげに悩んでいると。


「……お姉ちゃん」


 そう言って少年が魔女の首に両手を回して来たのです。


「僕は黒猫。でももっと前は人間だったの」

「?」


 魔女は困惑して首を傾ける。

 黒猫だけども前は人間。

 どゆこと?



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