003 猫に名前を付けました。
目の色が印象的なルビーアイなので……。
それをイメージして名前を付けたいな。
綺麗で。
呼びやすくて。
男の子っぽい名前。
日本語で言えば『紅玉』がルビー。
名前にするならコウギョク。
ちょっとこのファンタジーファンタジーした世界と違う感じ?
どっちかっていうと中華な響き。
『ルージュ』はどうかな?
フランス語で赤という意味。
大概、ヨーロッパとファンタジーは相性が抜群だ。
その流れで。
西洋ファンタジーとか言うし。
日本なら和風ファンタジーで。
中国なら中華ファンタジーで。
アジア? ならアジアンファンダジー。
というかいきなりアジアからくくりが大雑把過ぎ?
アジアンファンタジーというのは、つまりは東南アジア? という分けではなく、日本のようでも有り、中華っぽくも有り、アジア混ざってますみたいな?
じゃあ東洋ファンタジーでよくない?
それも有り。
『ルージュ』か……。
日本だと口紅という意味で和製化している。
有りと言えば有りだが……。
猫の体を隈無く診断してみましたが、若い雄猫さんなのです。
ええ。
隈無く診断しましたとも。
ルージュじゃ可愛い過ぎるのかな?
ルビーは英語なんだけど。
語源はラテン語。
ちなみにラテン語ってほぼローマ字読みなんだよね?
大元の言語がローマ字読みなら、もともとルーツは字面通りの発音なのだろうか?
まあ。権威有る言語ではあるが、バチカン以外ではほぼ滅んでますけども。
ラテン語で赤は『ルベウス』
ちょっと威厳有り過ぎない?
ギリシャの神『ゼウス』と一字違い。
魔女の名付けは、なかなか深みに嵌まって来ました。
うーん。
猫ってさ。
もっとライトな名前が一般的だよね?
ミケとか。
ブチとか。
まあ見た目で決めてるよね。
毛色で。
で……。
この子の見た目は黒い毛に紅い瞳。
やっぱり、初心に返って『ルビー』なんだけど。
捻りが欲しいよね。
いや。
猫の名前は捻らないけども。
『ルビー』
『ルベウス』
『ルージュ』
三つを微妙な感じで混ぜてーー
『ルビウス』とか
『ルルーシュ』とか
『ルース』とか
ルルーシュってのは……アレですし。
よし。
『ルース』でどうだろ?
呼びやすいし。
短いし。
ビとベウスの片鱗が見えないが、気にしたら負けだ。
響き押しだ。
「ルース」
小さな声で発音してみた。
ルースは日本では台座に填まっていない宝石の事を指す。
英語だとルース・ストーン。
ルビー色の瞳を持った猫さんにぴったりだと思う。
「ルース」
声に出すと、尚のこと愛おしい。
猫は神様は作った最高傑作の生き物だと思います。
だって、このサイズ。
お家で飼えるミニチュアサイズ。
ライオンや虎はネコ科でも家は無理だし。
ちょっと怖いし。
猫はジャストサイズ。
腕に抱くと人の赤ちゃんくらいの大きさ。
母性本能がくすぐられる。
前世は未婚、年齢イコール彼なし、ですけども。
魔女は黒猫をスリスリと頬で撫でた。
可愛すぎる。
猫は毛が全身に生えている。
犬より毛むくじゃらだ。
お腹も全部毛むくじゃら。
夜がどんなに暗くても。
時間がどんなに長くても。
この生き物が側にいてくれたなら。
魔女は生きて生けると思いました。
明日からはーー
長寿の薬作りに励もうと思います。
だってーー
この奇跡の生き物の、寿命は人間の四分の一。
だからーー
魔法の力を惜しみなく注ごうと思います。
子猫が、飼い主の時を超えて、やがて先に歳を取り、そうして時を止めてしまう、その最後はーー
もう経験したくないのです。
魔女は魔女に生まれた事を初めて喜びました。
魔女は魔女として、自然の理を曲げて生きて行くのです。