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妖精の隠れ家 プロローグ  作者: 天喰朧
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依頼1-1 姉弟

いつものように依頼が舞い込んできた。依頼人は優しげな青年『上村拓真』は姉のやっていることを止めて欲しいと依頼する。止められなければ殺してしまっても言いとさえ言葉を並べた。

それに怒りを現にするバレンタインは青年の胸ぐら掴むも本心は……。

 辺りは物静かで寂しく、外装がボロボロなビルから外にまで響き渡る声で人一人呼ぶ女が少しボロくなった部屋で騒いでいた。

 「バレンちゃーーーん!バレンちゃん!!」

 その部屋で騒いでいたのは長い髪をフワッと揺らめかせながら怯えながら虫も簡単に殺すこと出来なさそうな女がもう一人の女の名前を呼ぶ。

 「なんだよ?」

 短髪の女が呆れた顔と遠い声で答える。

 「虫っ!!虫よ!!早くやっつけて~!」

 「虫は無視して下さーい」

 バレンは適当に言葉を返す。

 「無理~。早くどっかやって!バレンちゃーん!!」

 それでもで騒ぐ女に苛立ちを露骨に出すバレンは少し苛立ちを乗せて言葉返す。

 「それぐらい自分で殺せばいいだろうッ」

 「無理無理、ムリィ~~~~」

 虫は差ほど大きくなく、小さなハエに女は大騒ぎをしていた。

 「あのねー、モンローさーん」

 「なに?バレンちゃん?ヒィッ!!きゃぁあぁぁーーーーっ」

 その瞬間敵と思ったのかハエはモンローの方に向かっていくと……、モンローはハエに向かって拳を前に突き出し激しい轟と地響き共にハエは消えた。が、それと一緒に壁も消え去った。

 バレンタインはそのとてつもない音聞いて何事かと奥から駆けつけて来ると、そこには窓が一つしかなった暑苦しい壁が開放的な景色が広がっていた。

 「モンローー!、ハエくらいで壁ぶっ壊すなよ!!」

 「だってだって~、こっちに向かってきたんだもの!!・・・だからつい」

 バレンタインは苛立ちを隠せず頭を抱え呆れていた。

 「だからって!ハエと一緒に壁まで吹っ飛ばすことないだろう!!」

 「だったらバレンちゃんがすぐに来て退治してくれればこんなことには・・・。」

 「はぁ!オレのせいかよ!」

 バレンタインは溜め息一つつき、頭を掻き考えていた。この見晴らしが良くなった壁をどうするか呆然と見ていた。

 とりあえず、ブルーシートで無造作に穴を覆ったのを見てバレンは満足げな顔していると家兼事務所のドアにノックオンがした。

 「すみませーん。」

 その人影がドアを恐る恐る開けた。見るとバレンタインとあまり年の変わらない二十代前半くらいの青年が開けた扉の先に立っていた。

 「いらっしゃい」

 バレンタインはいつものように気楽に青年に向かって声をかける。

 「依頼?」

 「はい」

 青年はそこの立っていた短髪の女性よりもブルーシートで覆われた壁が気になりながら苦笑いでバレンタインの問いに答え、ソファに招かれた。

 「よいしょっと、それで依頼の内容は?」

 目の前の棒付きキャンディーが入った入れ物を手に取り包み紙を取り口に運びながら依頼内容を聞こうとするバレンタイン。

 青年は戸惑いながらも口を開く。

 「依頼は・・・」

 そう言いかけるとモンローが奥のキッチンからカップを持ちながら出て来ると知らない青年に少し驚きつつもいつもの営業スマイルで出向かい、これまたいつもの営業文句を言う。

 「いらっしゃいませ。ようこそ、妖精の隠れ家に。私は社長のモンロー。そしてあなたの前に座って居るのがバレンちゃんです。」

 「は、はい」

 青年は戸惑いながらモンローのいい意味で空気の読めなさを飲み込み応える。

 「モンロー、依頼内容聞こうとしてたの!空気読めよ~」

 「だってだって~、バレンちゃんが勝手に話進めてるからでしょ!私は今お客さんが居らしてることしたんだもん!」

 モンローはバレンの呆れた姿にむくれながらバレンの横に座った。

 「ごめんなさい。お見苦しいところをお見せして」

 ホントだよと言いたげに溜め息つくバレンのを横顔見ながらまた少しむくれるモンローはすぐに元の営業スマイルで依頼に顔を向けて依頼聞こうとした。 

 「それでまずはあなたのお名前から聞いて良いかしら?」

 「はい、僕は上原拓真言います。」

 自己紹介した後、少し間が空き依頼内容を話はじめた。

 「今日ここへ来たのは姉を、姉を止めて欲しいからなんです。」

 バレンは足を組ながら頬杖して聞いていた。

 「姉を止めるってお前の姉ちゃんはどんな悪いとこしてんだよ?」

 「僕の姉は、僕と同じ医大に入っていたのですが、突然、本当に突然来なくなってしまったんです。噂によれば姉の研究がどこかの医療メーカーに買われて姉も一緒に行ったとか・・・」

 詰まらなそうにボーッと聞いていたバレンはあくびを一つして。

 「つ・ま・り!お前の姉ちゃんを取り返して欲しいってことだろう?」

 「違います!」

 拓真は即答した。それの即答に頬杖をがっくとさせるバレンタイン。

 「あっそ」

 苦笑いで一言呟いた。

 拓真はうつむき顔を曇らせて詰まりなら言葉を並べた。

「姉を……殺してください…。」

 バレンタインの顔付きが変わり、モンローは口に手を当て驚き隠せなかった。

 「お前、今何を口走ったのか分かってるのか?」

「わかっています。」

 バレンタインは眉間に皺を寄せ苛立ちを隠せなくなり、棒付きキャンディーも落とす勢いで依頼人の胸ぐらを掴みかかる。

 男は胸ぐらを掴まれたまま口をつぐみバレンタインをじっと見る時間が流れる。

「姉は人を殺したかも知れないんです。だから僕が姉のやったことの責任を取らないといけないんです。」

 言い切った青年は少し俯き、バレンタインはその顔見て胸ぐらを離して座り直した。

「なんで、お前が姉ちゃんの尻拭いしないといけねぇんだよ?姉ちゃんなら自分で責任取れるだろう?」

 青年はそこから言葉が詰まった。

 それを見て思わず口を出してしまうモンロー。

「上原くん?」

 青年は何かを思い出したかのように怯えながら人差し指の第三間接を軽く噛んだ。

「おい、聞いてッか?」

 明らかに様子が可笑しくなった青年を見てバレンタインは嫌な予感がしていた。

 「お前の姉ちゃん、一回人殺してるのか?」

 バレンタインは言葉を包まず青年に聞く。

 「……はい」

 モンローはバレンタインの方を向き真剣な顔し、バレンタインは悩むように頭を掻き俯く。

モンローは青年方に顔を向き直し質問する。

 「上原くん、それはニュースになったもの?」

 「いえ、報道はされませんでした。」

 「それはなぜ?」

 「僕の家系は代々医者をしてきたんです。祖父は大学病院も作った人で警察にも政界にも顔が利きます。なので隠蔽されたのだと思います」

 バレンタインはその話をじっと聞いていたが舌打ちをして顔あげる。

 「本ッ当、胸くそ悪りぃ話だよ。それで何かその人殺しの姉を殺せって親に言われてきたのか!?あぁん!」

 「バレンちゃん、落ち着いて!」

 モンローはバレンタインの怒りが最高潮になっているのを宥めてどーどーと言わんばかりに背中を擦る。

 「だったら、どうすれば姉を止めらると言うですか!僕には何も出来ないぃ……。」

 バレンタインの怒りに触発されたのか青年も声を荒げ涙を溢す。

 それを見たバレンタインは少し落ち着きを取り戻し、青年はどうしたいのかを訪ねる。

 「僕は姉を止めたい…なにか強制的にやらされているなら助け出したい!!」

 モンローは青年の本音が聞いて笑顔になり、バレンタインは太股辺りをパチンと叩いて立ち上がり決め台詞を言おうと口を開きかける。

 「わかりました!上原くん、あなたの依頼、妖精の隠れ家が引き受けます。」とモンローが言ってました。

 バレンタインは意気込んで意気揚々と立ち上がったのに決め台詞をモンローに取られてしまったので無言のままゆっくりと座るしかなかった。


 「ごっほん、それでお前の姉ちゃんを助けるとしてどこに連れ去られたんだよ?」

 バレンタインの問いかけに上原は俯いて黙り込み、モンローは手を顎にあて考え込んだ。

 「そうね~、情報をもう少し欲しい所よね~。お姉さんがどこの医療会社によく出入りしていたか、わからないかな~?」

 モンローの質問に上原は顔を上げて必死に思い出そうとし、それをモンローはじっと見つめ、バレンタインは焦れったいと貧乏揺すりをして苛立ちを表す。

 あっと、上原は思い出したような顔をするとバレンタインは貧乏揺すりを止め、モンローは上原をじっと見て、モンロー、バレンタインは話に耳を傾ける。

「会社は分からないんですが、電話の会話で薬の試作品が完成したと姉の部屋から聞こえました。」

 バレンタインはぼそりと「薬か…」と呟き、モンローは両手をパチンと音を出した。

「じゃー、医療メーカーをしらみ潰しにさがしましょう!」

「あのね~、モンローさん!どこに連れ去られたかもわからないのに『試作品薬』だけでどう捜すんだよ」

 バレンタインは呆れたようにモンローに問いかける。

「大丈夫よ。いつかは見つかるわ」

 溜め息をつくバレンタインを余所にモンローは立ち上がり「早速、捜しにいましょー!」と言いながら拳天井に掲げるのであった。

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