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魂は誰を呼んでいる?  作者: 置き時計スプラッシュ
第2章──学園生活と冒険の始まり
12/58

普通な始業式

 ピピピピ。ピピピピ。


「う…ん…」

 もう7時半なのか。眠い。もう少し寝ていたい気持ちもあるが、今日は大事な日だからな。起きないと。

『ライ!おはよう!』

「おう、おはよう。ふあ〜あ、お前は朝から元気だな」

『まあね〜、寝る必要がないからね』

「そういえば俺が寝てる間って何してるんだ?」

『ん?ライの体で遊んでるに決まってるじゃん!』

「おいコラ、当たり前のように人の体で遊ぶんじゃねぇ」


 今日は始業式。初めての登校日だ。初日から寝過ごして遅刻するわけにはいかない。

 急いで顔を洗い、歯を磨き、制服に着替えて食堂に向かう。


「行ってきまーす」


 と、扉を開けた瞬間。


「やあ!待ってたぞ盟友よ!」


 ばたん。かしゃん。

「ああ!なんでチェーンまで掛けるんだよ!?」

 なんでアキラがいるんだ。


「なあ!これからご飯だろう?一緒に行こうじゃないか!盟友よ!」


 いちいち決めポーズをとっているアキラが画面に映る。朝から元気だなぁ、こいつは。

「お前、寮生じゃないだろ?どうやってここまで来たんだ?あと盟友やめろ」


 前にも言ったがこの建物は1、2階が食堂で、そこから上は全て寮となっている。食堂と寮の入り口はセキュリティの関係で別々に分かれており、寮の入り口の扉にはロックが掛かっている。その扉は専用の情報をダウンロードした端末をかざさないと開かないようになっている。もちろん俺はダウンロード済みだ。


「それはね…正義と勇気による神秘の力で…ゴフッ」

「冗談言ってる場合か」


 と、日本刀の鞘でどつかれるアキラ。

「あれ、立花さんまで…どうかしたんですか?」

 そういえば立花さんは寮生だったな。だからアキラは入ってこれたのか。


「今日は始業式だから、少し心配でな。様子を見にきたんだが…コイツを連れてきたのはやはり失敗だったな。まあそれはいいとして、一緒に飯行かないか?まだ食ってないだろ?少し話もあるしな」


 そうだな…断る理由も無いし、ここはご一緒させてもらおう。




「悪いな、朝早くから」

「いえ、大丈夫ですよ。むしろお礼を言いたいです。俺のことを気にかけてくれて」

 食堂で会話しながら朝食を取る俺と立花さんとアキラ。

「それで、話って何ですか?」

「ああ、そうだ。話って言うのはこれからのオカ研の動きについてだが…アカネ、聞いているか?」

「うん!聞いてるよー!」


 急に口元を奪われるせいで、口の中にあった食べ物がボタボタと落ちる…!


『おいコラ!何しやがる!』

「あ、ごめん、ちゃんと戻すから」


 そして、手に持っていた箸で口の中へ戻そうとする…が。


 バキッ。


「…あっ」

 力が強すぎて箸が真っ二つに折れてしまった!


「ほぎゃあああああ!」


 そして、折れた箸は勢いよくアキラの鼻に突き刺さった!

『こらぁ!余計なことするな!』

「口に戻してあげようとしただけだよ!」

『床に落としたやつまで口に戻そうとするな!』




「そろそろ話の続きをしていいか?」

「はい。大丈夫です。すみません」

 立花さんが掃除を手伝ってくれた。こんにゃろ、アカネめ。朝から迷惑かけやがって。


「まず、幻虫についてだが、あれの調査は一旦ストップしようと思う」


『うん。それがいいと思う』

 やはりアレと過度に関わるのは良くないと判断したんだろう。良い判断だと思う。命を狙われるのはゴメンだしな。

「それで、これからはアカネの言う『光る箱』と『おっきな球』について調べていこうと思う。どうだ、異論はあるか?」

『うん、大丈夫。逆にそれくらいしか出来ることが無いしね』

「とくに異論はないですね。それで行きましょう」

「よし。じゃあまた部活でな」

 と、食器を棚に戻しに行く立花さん。…そういえば立花さんのご飯の量って俺の3倍くらいあったよな?

「…立花さんって食べるの早くね?」

 俺まだ半分も食い終わってないんですけど!?



 ちなみにアキラはずっと鼻に箸を刺したまま朝食を食べていたらしい。ちょっとでも相手してあげたらよかった。



 


「それでは、始業式を始めます。まずは…」


 この学園は学年ごとのクラスの数は少ない。しかし始業式には幼稚園児から高校生まで全員が出席しているので、結構な人の数が体育館に集まる。

 そんな中で、俺は唯一の転入生なので、体育館の隅っこでおとなしくしていた。

「どうだ?ここでの生活には慣れてきたか?」

 隣にいたのは担任になる予定の下川先生だった。

「まだ慣れないです。この学園広すぎますね」

「そうか。まあじきに慣れるさ。何かあったらどんどん頼ってくれよ」

「あ、ありがとうございます…!くぅ〜っ!」

「お、おい、どうしたんだお前」

 ああ、いい先生だ…!泣ける…!泣けてしまうよ!

『ライ、恥ずかしいからやめて』




『終わったね〜、あー、退屈だった〜!』


 あれから何の滞りもなく式は終わった。やっぱりどこの始業式も面白くないもんだなぁ。体育館にでっかい画面が4つもあったことには驚きだったけど。さすがは新世界学園。やたらと金がかかってる。

『もっと面白いことしたらいいのに。カラオケ大会とか』

「一応学校だからな。ふざけたことはできないんだろ」

『じゃあ前のリーフムーンズは?』

「…あれは例外だ」

 今思ったけど、アイツらも結構金かけてたな。ハチマキ作ったり、部屋にスポットライト設置したり…手間かかってるなぁ。




「…という訳で、今日から新たに仲間が加わる。じゃあ、自己紹介」

「今日からここでお世話になる荒木雷です。よろしくお願いします」

 あれからしばらくして、俺は2年1組の教室で自己紹介をしていた。転校生が毎回しているアレだ。

「よく来た相棒!スーパー歓迎するぞ!」

「同じクラスだね〜、よろしく!」

 アキラと赤坂さんも同じクラスか。


「貴様…今日こそは罪を償ってもらうぞ!絶対に逃がさんからな!」


「うわっ!?」

 リーフムーンズのリーダー!?アイツも同じクラスかよ!

「おっ、もう知り合いがいるのか。いいことじゃないか。しかしこいつとも知り合いとはな…驚きだよ」

 そう言ってリーダーに目を向ける下川先生。俺はこんな奴と知り合いになりたくなかったけどな!


「お前の席はあそこだ。隅っこだけど許してくれ」

 と、下川先生は教室の端に寂しそうに置かれている机を指差す。後ろの隅っこか…まあいいか。あそこなら多少アカネと会話してもバレないだろう。


 俺がアカネと会話する時、他人はアカネの声が聞こえないため、周りに人がいないか注意している。変な目で見られたくないからな。

 それでもし近くに人がいた場合はなるべく口元を隠して口パクに近い小声で会話している。それでも変な目で見られたり、病気の心配をしてくれたりと色々と面倒なのだが。でも1番後ろの席なら隠す必要は無いかもしれないな。




「よーし、連絡は以上だ。授業は明日からだからな。遅刻しないように。解散!」

 立花さんは鍛錬、アヤねぇとエマはバイト、赤坂さんは兼部しているバスケ部に行くとのことで、今日は人が全然集まらないのでオカ研は休みという事になっている。

「さて、俺は学園長室に行くか」

 前に気になっていた、俺の転校が仕組まれていたかもしれない件について聞きたいことがあるからな。



「荒木君、でよかったかな?」


「ん?」

 荷物をまとめていると声を掛けられる。誰だろう、知らない顔だな。

「僕は隣の席の竹田海斗、カイトでいいよ。よろしくね」

「ああ、俺は荒木雷。よろしく」

 握手を交わす。ああ、この人もまともそうだ。嬉しいな…ってなんかこの島に来てから感覚狂ってるな。まともな人に会うだけで嬉しくなるとは…

「荒木君ってこの後予定ある?」

「予定?この後何かあるのか?」


「実は僕のバイト、今人手が足りてなくて…もしよかったら手伝ってくれないかな?」


「バイトか…前の学校では禁止されてたからな。経験が無いんだよなぁ」

「あ、それは大丈夫。荒木君なら何とかなるよ」

「俺なら?どう言うこと?」

「前の風紀委員との鬼ごっこ見てたんだ。あれだけ動ければ大丈夫!」

 あー、あれか。あの後体ボロボロだったんだけどな。それより鬼ごっこで判断するって…どんなバイトなんだよ。

「あ、でも荒木君は初めてだから危ないことはしない!…と信じてる、僕は」

 おい、なんだこの曖昧な表現は。

『ライ?学園長室に行くんじゃなかったっけ?』

 あ、そういえばそうだった。この後学園長室に行く予定だったけど…まあそれは今度でもいいか。

「アカネ、予定変更な」

『まあそう言うと思ってたけどね。初バイト頑張ってね〜』

 …なんか腹立つけどまあいいや。

「よし、わかった。俺でも出来るなら手伝うよ」

「ありがとう!それじゃあついて来て!」

 もし危険だったらその時はその時だ。何とかなるだろ。昨日だってそれで乗り切ったしな!




 ちなみにリーフムーンズのリーダーは席を立とうとした瞬間にアキラと赤坂さんによって始末されていた。


「む、無慈悲だぁーっ!」


 教室を出る時にそんな声が聞こえた気がした。

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