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魂は誰を呼んでいる?  作者: 置き時計スプラッシュ
第1章──ようこそ、新世界島へ!
11/58

我々は…!

 それから夕方になり、それぞれの部屋に戻ることにした。


「良かったな、アカネ」


 制服から私服に着替えながら声をかける。


『…うん。でもやっぱり危険な目には遭わせたくないなぁ〜、どうしよう?』

「そもそも何をどうしたら危険なんだ?」


 そういえば具体的に何をすることが危険なのかいまいちはっきりしていなかった。


『多分だけど、今のところは何もしてこないと思う。あいつらはおっきな球を狙ってるんだよ。でも私たちはその球のことを何にも知らないから、それほど危険視されてないと思うんだよね』

「でも、一応監視はされてると」

『そうなんだよね〜、あの幻虫を放ってるってことはそう言うことなんだろうね』


 つまり、「その組織を追っかけ回してるぞ!」っていう派手な動きを見せるとまずいってことか。


『でも、あいつらはこっちの世界の言語知らないから会話とか調べるのとかは全然大丈夫だと思うよ?』

「そっかそっか」


 そうだよな。2年間幻虫を追っかけ続けた上田先生がピンピンしてるんだし。まあ、今は無事、って可能性もあるけど。


「ちなみにそれって期限あるのか?アカネの世界が滅亡するカウントダウン…的な」

『うーん…あの集団が滅ぼす前に…って感じかな。明確なタイミングは無いね。でも幻虫を使ってるってことはまだあいつらも手探り状態だと思うから、そこまで心配しなくて大丈夫だよ』

「よかった。そこまで状況は深刻じゃなかったのか」

『深刻だったらこっちに来た初日に遊んでなんかなかったよ』


 ああ、あの川にダイブしたやつか。


『いやー、最初は操作が難しかったよー。曲がること出来なかったしね』

「じゃあ外走るんじゃねぇよ!」

『でもいいじゃん。事故らなかったし』

「いやあれ事故だろどう考えても!」


 溺れてたら事故っていうか事件になってたし。あぶねー。






「腹減ったな〜」


 そういえば昼飯食べてなかったな。もう夕方だし、飯食いに行くか。


『食堂に行くの?』

「ああ。おにぎりも無くなったしな」


 食堂はここの棟の一階と二階にある。そういえばここの食堂に行くのは初めてだな。


「どんなメニューがあるんだろう?」

『楽しみだね!食べさせてあげようか?』

「フルパワーで食事なんてしたら死ぬわ」


 アカネが操作している間はどの動作もフルパワーになる。勉強させるとペンを折るし、握手しようものなら相手の手を握り潰すだろう。食事なんてさせたらどうなるか...まあ大惨事になることは間違いない。





「ここか。食堂は」


 丁度晩ご飯の時間帯なのか、沢山の生徒と教師で賑わっている。さて、俺も食券を…?


「あれ?食券売り場はどこだ?」


 どこを探しても見当たらない。困ったな、また迷子だ。



「おっ、お前は…」



「ん?」


 1人でウロウロしていたところで後ろから声を掛けられる。


「よぉ!無事だったんだな!はっはっは!死んだと思ったぞ!」


 そうしてバンバン背中を叩いてくる。この笑い方といい、まさかこの人は!


「へっぽこ木村さんじゃないですか!」

「おー、そうだ!…って誰がへっぽこだ!」


 以前、俺が保健室でモンスター美智子さんに襲われた時に助けてくれなかった木村さんだ。


「いや、あの時は悪かったと思ってるさ。だか考えてみてくれ。ライオンと1対1で闘っても負けは見えてるだろ?俺の判断は正しいんだ。犠牲は少ない方がいいんだ。わかるか?」

「わかります。あんたが俺を見捨てたってことは」

「合ってるけど!?そんな言い方しなくてもいいじゃん!?わかった!今日の晩飯奢るからそれでチャラな!」

「1番高いやつでお願いします」

「こいつ…まあいいや。どうせ1人で迷子になってたんだろ?ついてこいよ」

『ライって結構根に持つよね』

「ほっとけ」


 しかし迷子で困ってたのは事実。正直助かった。





「すまん!ちょっと今月厳しくて!」


 そう言って1番安い焼き魚定食を奢ってくれた木村さん。


「いえいえ、気にしてないですよ。財布もへっぽこな木村さん」

「めちゃくちゃ気にしてるじゃん!」

「それより、どうしてそこまで厳しいんですか?ギャンブルしたんですか?」


 俺は味噌汁をすすりながらそう聞く。


「いやしてないよ!…ちょっとな。買っちまったんだよ」

「何をですか?」

「観葉植物だよ。前から欲しくてな」

「へぇ、でも趣味でそんなピンチになるって…」


「いや、注文ミスで100個買っちまったんだよ」


「…バカですね」


 てかどうミスしたら100個になるんだ。


「うるせぇ!いや、そんなことより少し買ってくれねぇか?部屋中サボテンだらけで気持ち悪いんだよ!」

「タダならもらいますよ。一個だけ」

「くっ…でも捨てるよりマシか。いいだろう、一個くれてやろう。はい、どうぞ」


 すると背負っていた、やたらゴツゴツしたリュックサックから一つ小さな観葉植物を取り出し、俺にくれる。


「持ち歩いていたんですか?」

「ああ、これでもまだ余っているんだけどな。よかったらもう一つ…」

「いらないです。ご馳走様でした」


 食べ終わった俺はポケットに観葉植物を丁寧にしまい、食器を棚に戻しに行く。


「ああ、待って!ちょっと!」

『なんか今日のライ冷たいね』

「いいんだよ、あの人へっぽこだから」

『それ理由になってないけど…』



 食器を棚に戻し、食堂から去ろうとしたその時。



「お前が荒木雷だな?」



 何かの集団に囲まれる。


「そうだけど…何だ?お前ら」


 よく見ると、どこか見覚えのある腕章が…?


「あ!お前ら風紀委員か!」

「正解、だが不正解だ。おいみんな!連れてけ!」



「「「うす!」」」



 掛け声と共に一斉に襲いかかって来た!


「え!?ちょ、待て…!」

「問答無用!」


 体勢も整っていなかった俺はもろにスタンガンをくらう。


「うっ…」


 なす術もなく倒れる俺。最後に見たのはこいつらの足の隙間から見えたあのへっぽこ木村のへっぽこらしい顔だった。






 バシャッ!


「うっ!?」

「起きろ」


 水をぶっ掛けられて目を覚ます。


「何だ…ここは…?」

『あ、起きた!大丈夫?』

「確か…風紀委員が…俺を…ん?」


 気がつくと、俺は椅子に座らせられていた。手は後ろで縛られ、足は椅子に固定されている。リアルに拘束されるなんて人生初めてだ。思ってたより痛いな、これ。


「アカネ、逃げられそう?」

『出来なくはない…けど、ライが軟体動物になっちゃう』

「あ、それなら結構です」


 とか余裕をぶっこいてるけど…実はめっちゃ怖い。何なんだよ、部屋薄暗いし…


『ごめんね、私がいながら…』

「いや、アカネは悪くないって。それよりも…」


 俺は、周りを取り囲んでいる多数の影に質問を飛ばす。


「お前ら何者だ?」


 まだ目が慣れていなくて、顔が視認できない。不気味だ。にしても突然俺を襲うなんて……まさか、アカネの言っていたあの組織の手先なのか…?



「そうだな…名乗っておこうか。我々は…!」



 すると、リーダーらしき人物が指をパチンと鳴らしたと同時に、薄暗かった部屋が明るく照らされた!


「うわ、眩しっ!」


 そこに現れたのは……!




「我々の我々による葉月様のための秘密組織!その名もォォォ!」



「「「リィィィフ・ムゥゥゥンズ!」」」



 変なポーズを取った、変な集団だった。


「…は?」


 思考が追いつかない。何言ってんだこいつら?


「お前は新入りらしいな!だから少しの罪は見逃してやっていた!だが…お前は超えてはならない一線を超えた!」

「……え?」


 新入り…?一線…?こいつら何言ってんだ?


「貴様…葉月様にあんなことをしておいて…とぼけやがって!」

「葉月様…?」


 あ、もしかして葉月様って風紀委員長の二ノ宮さんのことか?それにいつの間にか全員が巻いているあのハチマキ…葉っぱと月のイラストが描かれている。なるほど、さっきのリーフムーンズってそういうことか。つまり…



「お前ら二ノ宮さんのファンクラブ的なやつか!」



 なるほどなるほど。葉月様って呼んでることからも推測がつくな。確かに二ノ宮さんの小柄ながらもあの勇ましいところと凛々しい顔に惚れてファンになる人がいるのもおかしくないかもな。なんだ、アカネの言うあの組織かと思ってたんだが…拍子抜けだな。


「ファンクラブ…だと?貴様、そんなゴミのようなものと一緒にするな!我々は!そう!せーの!」



「「「リィィィフ・ムゥゥゥンズ!」」」



「二度と間違えるな!このクズが!」

「うるせぇよ!どっちも似たようなものだろ!」


 こんな狭い部屋で叫びやがって!音が跳ね返ってうるさい!


「で、その…りーふむーんずが俺に何の用だよ。わざわざ拉致なんてしてさ」


 特に危なそうな集団じゃないことが判明して、心の底から安堵しつつ、質問する。


「もちろん、葉月様をお守りするためにお前を始末するのだ」

「し、始末!?」


 前言撤回。危ない集団かも。



「おい、お前。こいつの罪を一つ言ってみろ」



 そして下っ端と思われる1人が前に出る。


「うす!コイツは葉月様を葉月様と呼ばないことっス!」

「そう。まず一つ。お前は頑なに『葉月様』と呼ぼうとしない!」

「そうだそうだ!」

「捻り潰してやれ!」

「頭かち割ってやれ!」


 外野うるせぇ!


「頑なって…そもそもほぼ初対面なのに様付はおかしいだろ」

「阿呆か!葉月様の輝きを見れば様付けなど当然だろう!常識も知らぬのか!クソから出直してこい!」

「んなもん知るかぁぁ!」


 そもそもすぐ拉致る奴が常識語るんじゃない!



「そして、次!お前!言ってみろ!」



 そしてさっきとまた別の下っ端が前に出る。


「うす!葉月様の寝ているところを襲ったことっス!」

「そう。これは重大な罪だ!よりにもよって葉月様を…!許される行為ではない!」

「そうだそうだ!」

「鼻へし折ってやれ!」

「三枚おろしにしてやれ!」


 外野ほんとうるせぇ!


「そもそも俺は襲ってないし!てかそこに誰か居たなら直接俺に言えばよかったじゃねぇか!」


 すると、集団が静まり返る。


「だって、葉月様の寝顔なんて…」

「直視できるわけないよな…?」

「もし見てしまったら、それこそ切腹ものだよな…?」


 全員モジモジしだして大人しくなった。さっきまでの気迫はなんだったんだよ。



「だああああーっ!それもこれもお前のせいだ!お前は今から打ち首の刑だ!」



「完全に今の八つ当たりだろ!?」


 恥ずかしさを隠すために打ち首って酷くない!?


「お前ら!こいつを縄で縛り上げろ!ここで今から俺が首を飛ばしてやる!」

「おい!ちょっと待て!落ち着け!」


 俺の抵抗も虚しく、グルグルと縄で縛り上げられる。てか妙に手馴れてやがる!なんだコイツら!?



「くっ……」



 ものの数十秒で、俺は指1本すら満足に動かせなくなった。


「ふふふ、これで葉月様も安心だ。害虫は駆除せねば…!」


 と、木刀を構えるリーダー。屈強な二の腕が目に入り、少し怖気付く。


「おい、本気かよ、な、話し合おうよ、な?」

「もうお前と話し合うことは無い。俺が今興味あるのは、お前の首がどんな風に転がるか、だけだ」

「怖いって!なぁ、冗談だろ!?おい!お前らも…」


 と、周りのモブたちに視線を移すが…



「ハヅキサマニコウフクアレハヅキサマニコウフクアレハヅキサマニコウフクアレ…」

「コノオトコニバツヲコノオトコニバツヲコノオトコニバツヲコノオトコニ…」

「ガイチュウハクジョスベキガイチュウハクジョスベキガイチュウハ…」

「ハヅキサマノパンツミタイハヅキサマノパンツミタイハヅキサマノ…」



 ダメだ、呪文みたいなの唱えてて聞く耳を持たない。てか1人俺よりやばい害虫混ざってんぞ、おい。




「荒木雷、お前はもう終わりだ!しねぇぇぇぇぇ!」




「くっ……!」



 と、その時!




「おらああああああああああああああああああ!」




 バンっ!と、硬く閉ざされていた扉が開く!



「電光石火☆パーフェクトブレイクゥゥゥ!」



「「「!?」」」


 瞬間、リーフムーンズが吹き飛ばされていく。


「ふははは、見たか見たか!友を救うために放つ一生に一度の大技!さあ、次にこの技の餌食になりたいのはどいつだ…?」

「おい、いきなり矛盾してるぞ」

「そこはほっといてくださいよ!立花さん!」


 あれは…アキラに立花さん…!助けに来てくれたのか!


「ここなの?合法的に目玉を狙い撃ちしていいのは?」


 赤坂さんまで…!


「ああ、好きなだけ潰してこい」

「やったー!でゅふふふふ…」


 この人だけ目的が違う気がするのは気のせい…だよな?



「どりゃあー!次だ次!ヒーローは負けないんだ!わははははははは!」

「あははははは!狙い放題だ!」

「「ぎゃあああああああああ!」」




「よお、助けに来たぞ」

「立花さん!」


 乱闘のスキを突いて俺の後ろに回り込んでいた立花さんがカッターナイフで縄をスパッと切ってくれる。


「あ、ありがとうございます!でも、どうしてわかったんですか?俺が襲われてるって」

「こいつだ」


 と、立花さんの頭に飛び乗るパキパキ丸。


「お前、ほんと優秀だな…」


 頭を撫でようとするが、逃げられる。こんにゃろ、やっぱり生意気だっ!


「貴様ら、オカ研の連中か!逃すな!逃すなぁぁぁ!」


「とっとと逃げるぞ」

「あ、はい!」






「ありがとうございました!」

「いいのよ、礼なんて。仲間なんだから助けるなんて当然でしょ?」


 オカ研の部室にまで逃げてきた。ここなら大丈夫だろう。


「でも、大ごとにならなくてよかった!ライ大丈夫?」


 タオルを持ってきてくれるエマ。そういえばびしょ濡れだったな。


「ありがとう。怪我はしていないから」

「そーう?なら良かった!心配したんだよー」

「それで、何があったの?」

「あー、それはですねー…」


 髪の毛を拭きながら俺は起こったことを皆に話す。


「そんなことがあったのね」

「ま、この学校じゃそこそこ有名だしな。悪い意味で」

「しょっちゅう暴れてるからねーリーフムーンズは。慣れちゃったよ」

「そうだったんだ…」


 よく解体されないな、あの過激派ファンクラブ。そもそもアイツらが風紀委員だったか…



「それより、俺はアカネに言っておきたいことがある」



 と、話が一段落したところで、立花さんが話に割って入ってきた。


「な、なにかな」


 俺は口を貸した。


「今回の1件で、お前は俺達に借りができただろ」

「う、うん」


 立花さんは、少し高圧的な態度でそう言う。アカネも少し押され気味だ。


「拉致られて、命の危険…までは行かなくとも、大怪我から救ってやったんだ。だいぶ大きな借りだと思わないか?」

「お、思います」


 敬語になってるじゃねーか、アカネよ。



「と、いうわけで、だ」



 すると、立花さんは高圧的な態度から一変して、柔らかく、優しい雰囲気でこう言った。




「俺たちを信頼してもらう…これで貸し借りをチャラにする。これでどうだ?」




「………」

『………』


 そういう事か…


 立花さんは回りくどい言い方をしているが、端的に言えば「世界を救う手伝いをさせろ」と言っている。

 アカネはオカ研のみんなに、幻虫の調査をしないよう頼み込んだ。これは…命の危険があるなら、そうするのが当然だと思う。アカネの行動に俺は不満は無い。


 でも、オカ研のみんなは違う。今まで調査してきたものが、突然現れた変な奴にやめろと言われたんだ。


 命の危険がある、と言われても、現実感が無いのも仕方がないと思う。でも、アカネはアカネにしかない知識をチラつかせてしまった。キツい言い方になるが、アカネのやったことは、盛り上がった好奇心を冷めさせてしまうような行動なんだ。

 もちろん、アカネに悪気は無い。むしろ、その幻虫の危険性を伝える上では効果的ではあったと思う。でも、このオカ研では裏目に出てしまった。


「俺達はお前ほど大きな目的のためにあの幻虫を追っかけてるわけじゃない。ただ、俺達は真剣だ。ふざけてそうなメンバーばっかだが、やる時はやる。妥協はしない。決断は曲げない。行動力だって、今回で示せただろう」


「そうだな!赤坂とかおふざけ代表だもんな!」

「いやどう考えてもアキラの方でしょ!?」

「なにぃ!?」


 俺がオカ研に来てからまだ1週間も経ってない。でも、そんな短い期間でも、行動力と決断力の凄さは思い知ることが出来た。

 幻虫を見に行った時も、みんながみんな真剣だったし、俺が幻虫を見れた時も、本気で喜んでいた。そして、ついさっきリーフムーンズから助けてくれた時も、圧倒的な人数差でも俺を助けるために奮闘してくれた。アヤねぇが「仲間なんだから」と断言してくれたことも嬉しかった。


 これらは全て、俺のこと、アカネのことを仲間として認めてくれているからこそ起こり得たことだろう。立花さんも貸し借りとか圧力のある言葉を使っているが、本心はそこには無いと思う。



「ここではっきりさせろ。中途半端に信頼されても困るんだ」



 立花さんの真意は…アカネも分かっているはず。


「………」


 しばらく考え込むアカネ。


『アカネ……』


 とはいえ、アカネが抱えているものは、俺やオカ研の皆では想像できないくらい大きなものだ。なんてったって世界まるまる1つだもんな。アカネですらどのくらいのものなのか把握出来ていないのかもしれない。


「……私は」


 しばらく時間が経った後、アカネは口を開いた。


「私は、自分に負けてた。だから、あの幻虫は謎の集団の偵察機、なんて噂をみんなに押し付けてた」


「………」


 普段はうるさい赤坂さんやアキラまでもが、真剣な眼差しでアカネの話を聞いていた。



「もちろん、噂が本当かもしれない。でも、本当である確証はないし、私の判断は間違ってないと思う。でも……そこに自信は無かった。自分の意思が無かった。逃げてたんだと思う。今の私は覚悟が足りなくて、中途半端だから。みんなを信じきれてなかったから」


 アカネは諦めというか、白状するようにそう話す。そんな様子の(アカネ)を見て、立花さんは表情を緩めた。




「だから、自信がつくまで…その時まで、みんなに助けて欲しいです。オカ研のみんなはいつでも前を向いてて、眩しくて、かっこいいから。みんなに背中を押して欲しい。みんなと頑張りたい。みんなとなら世界1つくらい余裕で救える…って思えるようにしたい!」




 部屋は静まり返っている。だが、アカネの魂の声が脳内では響きわたっていた。




「だから…お願いします、力を貸してください」




 そう言って、アカネは静かに俺の頭を皆に下げた。


「……っ」


 一瞬の沈黙。そして…




「「「任せろ!」」」




 全員がそう叫び、俺のそばに駆け寄ってきた!


「なんだぁ〜アカネ〜、そうかそうか〜、自信が無いのか!でも安心しろ!このアキラ様が二人三脚で支えてやろう!はははははは!」

「えっ、うわっ!」


 ぐわしっ、と肩を組むアキラ。いてぇ…衝撃は俺に来るのに…


「よく言ったよーアカネちゃん!でも私カッコイイよりはかわいいって言われたかった!減点!」

「もうカエデそんな事言わない!Heyアカネ!Good job ! よく頑張ったね!ワタシも協力するからね!」

「うふふ、私も応援するわ。でも、皆やる気いっぱいね…ねえ、立花君、私達の出る幕はあると思うかしら?」

「ありまくると思うぞ。主な仕事はルート矯正だろうけどな」



 アカネの決断で、みんながみんなとても嬉しそうにしている。もちろん、俺も嬉しい。何が嬉しいかって、アカネの心の負担が減ったこともそうだし、何より、オカ研にアカネの居場所ができたことだ。



「みんな…みんな…本当にありがとう…!」

『………』



 もう少しだけ、体は貸しといてやるか。アカネの嬉しそうな姿が見れるなら、筋肉痛なんて安いもんだ。










 あれから部屋に戻り、明日の準備をすすめる。


『明日は始業式だね〜、楽しみ?』

「まあ、それなりにな」


 不安が吹っ切れたせいか、アカネの機嫌がいい。よかった。やっぱりアカネはこうでなくては。


 あれからリーフムーンズのメンバーは二ノ宮さんにこっぴどく叱られたそう。全然反省してなかったそうだが。むしろ笑顔だった奴らの方が多いんだと。やっぱり変態の集団だったか、アイツらは。



「さて、明日に備えて早く寝るか」

『うん!おやすみー』

「おやすみー」



 色々あったせいで今日はぐっすり眠れそうだ。

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