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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【88話】GWの遊園地


 ゴールデンウィーク当日。

 子供連れで賑わう遊園地。

 

小夜「うわっ…やっぱ混んでる…。」

音夢「お姉ちゃん、大丈夫?」

小夜「う、うん。…それより、こっちの方がダメそう。」

 

 小夜たちの後ろにいる、2人の男たち。

 緋月と影楼だった。

 

緋月「ううぅ、満員電車だとは思わなかったよ…。」

影楼「さすがに…満員は気持ちわりぃな。」

 

 フラフラしている2人。

 

小夜「はぁ…。」

音夢「お兄さん達、辛そう。」

小夜「きっと大丈夫だよ。」

音夢「そっかぁ。」

 

 音夢はにこにこしながら小夜と手を繋いでいた。

 

小夜「どのアトラクションから乗る?」

音夢「うーんとね、あれ。」


 音夢が指さすのは大きめのジェットコースター。

 上を見るとジェットコースターのレーンがくねくねと曲がり、その上をコースターがすごい速さで走っていた。

 

小夜「うっ…。」

音夢「でも、ならんでるね。」

小夜「あ、そうだね。」

 

 入り口にはかなりの人だかり。

 

小夜「…しょうがないよ、別のところに…。」

影楼「あ?てめぇ逃げんのか?」

 

 影楼が小夜を睨む。


小夜「(小声で)だって、ジェットコースター苦手なんだもん…。」

影楼「音夢が乗りたいって言ってんだ。乗ってあげるべきだろ。」

小夜「でもあそこ、小学生未満は同伴が必要って…。」

影楼「大丈夫だ、任せろ。」

 

 影楼は、音夢のことを見ると、緋月の腕を引っ張った。

 

緋月「え。」

影楼「てめぇ、乗れ。」

緋月「えええええええ。」

 

 すると、音夢が緋月の手を握ってきた。

 

音夢「ほんと?ひづきさん、一緒に乗ってくれるの?やったぁ!!大好き!」

緋月「そんなぁ。」

 

 音夢に手を引かれ、仕方なく緋月もジェットコースターの入り口へ向かう。

 

影楼「なんか、仲良さそうじゃねぇか、あいつら。」

小夜「そうだね、安心した。」


 音夢は初対面でもありながら、緋月と影楼と仲良く接していた。

 

小夜「…てか、影楼も苦手なんだね、ジェットコースター。」

影楼「ち、ちげぇ。」

 

 影楼が目をそらす。小夜が少し笑う。

 

 こうして、小夜たち4人は遊園地のアトラクションを乗ることにした。

 

*

 

 少し時間が経つと、ジェットコースターは動き始めた。

 乗っているのはそう、緋月と音夢。しかも、コースターの先頭にいた。 

 

影楼「あいつ、やったな。」


 小夜と2人で下から見上げて楽しんでいた。

 ジェットコースターが降下すると、絶叫が聞こえてくる。

 

小夜「ふふ、音夢、楽しそう。」

影楼「(笑いながら)あいつ、泣いてんぞ。」

 

 笑っている音夢とはうってかわって泣いている緋月。後ろの席の人が困っているのが見えた。

 

小夜「もう、ひっきーったら。」

 

 ジェットコースターが終わると、音夢たちが帰ってきた。緋月はヘトヘトだった。

 

緋月「はぁ…怖かった…」

音夢「お姉ちゃん!すごくはやかったよ!」

小夜「そっか、良かったね。」

 

 小夜が音夢の頭を撫でる。影楼に介抱される緋月。

 

緋月「もう…乗らん…。」

影楼「泣いてたな、面白かったぞ。」

緋月「うぅ…。」

 

 すると、音夢が小夜の手を引き、次々へとアトラクションの方を目指していった。

 

音夢「コーヒーカップと、メリーゴーランドと、ブランコ。それから…」

 

 はしゃぐ音夢に仕方なくついて行く緋月。

 影楼は少し乗り気だった。

 

緋月「なんで、2人とも、乗り気なの…。」

 

 緋月はついて行くんじゃなかったと後悔した瞬間だった。


*

 

 

音夢「こっちこっち!回ってるよー!」

 

 コーヒーカップで回る音夢と緋月。

 

緋月「えへへ、小夜っち!かげろっちー!」


 2人とも、楽しんでいた。

 

小夜「ひっきー、これは大丈夫みたいね。」

影楼「回るだけだからな。」


 真ん中のハンドルを操作しながら、小夜にピースをする音夢。

 スマホで写真を撮る小夜。

 

影楼「…可愛いな。」

小夜「え。」

影楼「いや、なんでもねぇ。」

小夜「ふーん。」

 

 影楼が少しづつ、音夢に対して心を開いて来ていた。それに気づき、嬉しくなる小夜。


 気がつくと、音夢と緋月はコーヒーカップを乗り終え、戻ってきていた。

 

音夢「次はあれ乗る!」

緋月「おっ、いいね。乗ろっか!」

音夢「うん!」

 

 音夢に連れられて緋月たちはどんどんアトラクションに乗っていく。

 

 そして、ひとしきりアトラクションを楽しんだ後。

 アイス屋さんにアイスを買いに行く音夢。

 遊園地のベンチで休憩をしている2人。

 

緋月「いやぁ〜。音夢っち元気だね。」

小夜「ほんとね。」

緋月「思ったより俺っちも楽しめちゃった。」

小夜「そうだね。」

緋月「音夢っち、すごく面白い子だよ。」

小夜「そう?」

緋月「コーヒーカップの時に、聞いたんだけどさ。音夢っちの将来の夢、アイドルになることなんだってさ。」

小夜「え。」

緋月「そう言ってたよ。」

小夜「音夢がそんなこと…。」

緋月「その話をしてる時、すっげぇ目が輝いててさ。思わず応援したくなった。音夢ちゃん、絶対なれるよ。」

小夜「…。」

 

 すると、音夢がアイスを持って向こうから近寄ってきた。

 

音夢「お姉ちゃん!ひづきさん!!」


 手を振りながら、走ってやって来る。

 しかし、途中で人にぶつかってしまった。

 

小夜「音夢!」

 

 音夢はぶつかった衝撃でアイスが床に落ちる。

 ぶつかった人はそそくさと去ってしまった。

 

音夢「あ、アイスが…」

 

 床に落ちたアイスを見て残念そうに見る音夢。

 小夜と緋月も駆け寄ってきた。

 

小夜「音夢、大丈夫?」

音夢「アイス…こぼしちゃった…。」

緋月「でも、音夢っちは無事でよかった。」

音夢「うぅ…。」

 

 音夢は涙目になりながら立ち上がった。

 

小夜「アイスはまた買ってあげるから、ね。」

音夢「うん…ごめんなさい…。」

 

 すると、音夢のすぐ目の前にアイスを持った手が現れた。

 それは、影楼の手だった。

 

音夢「え。」

影楼「…おらよ。」

 

 影楼は、無理やり音夢の手にアイスのコーンの部分を握らせた。

 

小夜「影楼、買ってきてくれたの?」

影楼「…たまたま同じのを買っただけだ。」

 

 渡されたアイスは、音夢がこぼしたものと同じものだった。

 

音夢「あの、かげろうさん。」

影楼「あ?」

音夢「ありがとう、ございます…。」

影楼「…おうよ。」

緋月「かげろっち、たまには優しいところあんじゃん!」

影楼「うっせぇな。」

 

 すると、音夢の顔には笑顔が戻った。

 そして、アイスを1口食べた。

 

音夢「…おいしい!お姉ちゃん、これ美味しいよ。」

小夜「良かったね。」

音夢「あ、そうだ!」

 

 

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