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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【83話】反芻するもの


影楼「愛ーー!!愛ーー!!」

 

 おれは警察と一緒に森の中を探していた。

 

母「愛ーー!!ママよーー!帰っておいでーー!」

 

 身体が弱い母ちゃんも一緒になって探していた。

 

警察「もっと奥の方で見失ったのかな?」

影楼「はい。」

警察「じゃあ、行ってみようか。」

 

 おれは警察たちを秘密基地の近くまで案内しようとした。

 

影楼「………あれ。」

 

 しかし、つくったはずの秘密基地は見当たらなかった。

 

警察「どうしたんだい?」

影楼「たしか、ここにおれがつくった秘密基地があるはずなのに…。」

母ちゃん「秘密基地?」

 

 秘密基地の近くにあった池を見つけたが、隣にあるはずの秘密基地は何度見ても見つからなかった。

 

警察「…その秘密基地ってところで見失ったのかな?…どこにも無いけど。」

影楼「本当にあったもん!」

 

 おれは必死にその周りも探した。木の枝と縄で作ったものだったので飛ばされていてもおかしくない。

 しかし、そこには木の枝すらも残っていなかった。


影楼「……………え。」

警察「少し、落ち着こうか。深呼吸して。」

影楼「……夢、なの…?」

 

 おれは自分のほっぺを抓った。

 痛みはあった。

 

影楼「じゃあ……なんで……。」

警察「翔くん。」

 

 警察の人はおれを心配してくれたのか、母ちゃんと一緒にこれ以上は探さないようにと言った。

 霧の濃い森は、母ちゃんのような女性やおれのような子供には危ないからだった。

 警官に森の外まで送ってもらうと、警察の人達はまた探しに戻った。

 おれたちは、交番で待っていることになった。 


*

 

 

 夜の交番。

 おれは母ちゃんと、女性の警官と3人で待っていた。

 

警官「どうぞ。」


 警官の方が、お茶を出してくれた。

 

母ちゃん「……ありがとうございます。」

警官「いえいえ。坊やも。」

影楼「……ありがとう…ございます…。」

 

 おれは、もらったお茶をすぐに飲み干した。

 

警官「うふふ、よっぽど探し回ってたのね。」

影楼「…当たり前ですよ。おれの、妹だから。」

警官「奥さんは、大丈夫ですか。」

母「……。」

 

 母は、さっきまでパニックになっていた。

 今は少し落ち着いているが、表情1つ変えず、ずっと手を胸に当てていた。

 

影楼「母ちゃん。」

母「…ん?……あ。(警官に)ごめんなさい。」 

警官「いいのよ。今は落ち着ける状況では無いかもしれないですが、休んでください。我々が必ず見つけますから。」

母「…ありがとうございます……。」

 

 母ちゃんは、その言葉で少し安心したのか、涙が出てきていた。

 母ちゃんもおれも、不安で不安で仕方なかった。

 ふとズボンのポケットに手を入れると、中に何かがあるのに気がついた。 

 

影楼「ん?」

 

 出してみると、それは。

 

影楼「あ…。」

 

 ハートの飾りがついたヘアゴム。愛のだった。

 

影楼「愛の…!」

 

 愛が、秘密基地に忘れたと言って取りに戻ったヘアゴムが、おれのポケットの中から出てきた。

 

影楼「………。」

 

 おれは、どうしようもない気持ちでいっぱいになった。気がつくと、大粒の涙が零れていた。

 

影楼「うぅ……。」

 

 愛のヘアゴムをぎゅっと握りしめた。

 警官がおれの頭を撫でてくれた。

 

影楼「うわあぁぁん…ごめんなさい…!ごめんなさい!」

 

 我慢していたものが一気に解放されたかのように、大声で泣いた。

 色んな感情が脳の中で渦巻いて、めちゃくちゃになって、吐き出したものだった。

 

警官「あなたはよく頑張ったよ、1人で。」

 

*

 

 

 翌日。

 おれは交番で待っているうちに寝ちゃっていたらしく、目覚めたのは家だった。

 

影楼「…う?」

 

 起き上がり、リビングまで行くと、父ちゃんが帰ってきていた。

 

影楼「父ちゃん?」

 

 父ちゃんと母ちゃんは話をしているようだった。

 おれの方に気がつくと、父ちゃんたちは顔を合わせてなにかを伝えていた。

 

父「……翔。」

影楼「おかえり、父ちゃん。」

父「翔。…………話があるんだ。」

 

 父と母は、暗い顔をしていた。

 

影楼「…なに。」

父「…………あのな。……愛…のことだけど。」

影楼「…。」

父「…………。」

 

 父が顔をしかめていた。

 

父「………愛は」

影楼「きっと見つかるよ。」

父「…え。」

影楼「父ちゃん、死んだと思ってるの?そんなことないよ。愛は生きてるよ。」

父「何言ってるんだ。」

影楼「生きてるよ。」

母「…翔、お父さんの話を聞いて。」

影楼「愛はまだ森にいるよ。だから、おれが見つけないといけないんだ。」

 

 おれは2人の話を無視してリビングを出ようとした。

 だが、父ちゃんに止められた。

 

父「話を聞くんだ、翔!」

影楼「離してよ。愛を探しに行かないと…。」

父「待て!」

影楼「なんだよ。」

父「愛はもういないんだ!!!!」

 

 父はおれの手を握りながら怒鳴るように言った。

 おれのからだがびっくりしてピクリと動く。

 

影楼「………愛………が……いな…い………?」


 そうか、俺は、逃げていただけだったんだ。

 

父「…そうだ。昨日の夜。翔が寝た後、愛は見つかった。……………事故だった。」


 「事故」

 その言葉が、どうしても理解できなくて。

 

父「……森にある、山の崖から落ちて、……………亡くなったそうだ。」


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