【79話】気になる高校
小夜「お待たせ。」
緋月「おー、お疲れ!一緒に帰ろ!」
小夜「うん!」
小夜の面談が終わると、真っ先に宿へ向かうことにした。
街の中を歩く2人。
緋月「うわー、やっぱりみんな、始業式だったんだね。」
同じ制服の中学生と、違う制服の中学生がたくさん街中を歩いていた。
小夜「そりゃね。」
緋月「入学式も今日なのかな?」
小夜「うちの学校は違うけど、他はそうかもね。」
緋月「そっか。」
すると、緋月が少し嬉しそうに小夜の腕を握った。
緋月「ねぇ小夜っちー、今日ね、面談でいい情報が手に入ったんだよ。」
小夜「何?」
緋月「えっへへ、聞いて驚くなよ〜。」
*
緋月「失礼しま〜す!」
担任「はい、どうぞ。」
静かな教室に元気な声が響き渡る。
担任の先生も少し苦笑いだった。
担任「元気だね、藤本くんは。」
緋月「えっへへ、ありがとうございま〜す。」
担任「前の担任から聞いているよ。」
緋月「そっすかー。で、今日の面談は何を話すんすか?」
担任「おやおや、やる気満々だね。いいね。まずは、学校生活のことだね…」
担任の先生は緋月と学校生活についての話をした。
担任「…藤本くんは、学校に来るようになってきてるし、問題は無いと思う。成績以外は。」
緋月「やっぱり。」
担任「もう少し点数をどうにかしないとね。」
そして、担任は手元の資料を漁った。
担任「この成績では…ねぇ。」
緋月「なっ…。」
担任はプリントを差し出した。
それは去年の成績表だった。
表には、1の文字が多く書いてあった。
緋月「うぅ…。」
担任「さて、進路の話も一緒にしちゃいますか。…藤本くん、高校は決めてありますか。」
緋月「えっと…。」
担任「決めてないんですね。だったら、あなたに合う高校をいくつか紹介しますね。」
すると、担任は高校のパンフレットをいくつか出してきた。
*
小夜「…成績表どうだったの。」
緋月「えー、別に、大したことないよ。」
緋月が照れくさそうにしていた。
小夜「絶対悪かっただろうね。」
緋月「でもね、内申2上がった!」
小夜「なんの教科…?」
緋月「体育と家庭科。」
小夜「意味無い。」
緋月「ぷー。」
2人は話をしながら歩いていると、あっという間に宿へ着いた。
緋月「えっへへー、聖雷っち、驚くぞー。」
宿の扉を開け、リビングに駆け込む緋月。
緋月「たっだいま〜。」
聖雷「おかえり!…あ、小夜も来た!」
小夜「お邪魔します。」
マーリン「あら、2人とも。」
リビングでくつろいでいるマーリンと聖雷とシユウ
緋月「聞いて、実はね、小夜っちと同じクラスになったの!」
マーリン「良かったわね。」
聖雷「すっごい!一緒に登校できるね!」
緋月「あとね、俺っち、気になる高校を見つけたんだ!」
小夜「え。」
緋月「そうなんだ。みてみて。」
緋月は資料をカバンから取り出した。
*
担任「毎年、先輩が行ってるところでもあるが、この高校はどうだ?」
緋月の前に1冊のパンフレットが置かれた。
緋月「…こおり…しつ…?」
担任「はぁ…氷室高校。」
緋月「なんで、そこを?」
担任「まず、氷室駅から徒歩7分で割と近い。偏差値は48~70だ。」
緋月「70!?無理だよ。」
担任「安心しろ、受験するクラスによって変わる。最高で70って事だ。6展開のレベルに合わせたクラス制度で、文系は1組、2組、3組、理系はA組、B組、C組と分かれてるんだ。発展、基礎、エンカレッジ(支援)の3コースずつある。
緋月「エンカレッジ?」
担任「基礎の基礎から学ぶことが出来るところだ。」
緋月「へー。俺っちにぴったりかも!」
喜ぶ緋月。だが、担任は困った顔をしていた。
担任「ただ…藤本くんの成績だと、また内申が足りない。」
緋月「え。」
担任「せめて、オール3までは行かないと…。」
緋月「オール3!?」
今の緋月の成績からは程遠い数値だった。
緋月は顔が硬直した。
緋月「うぅ…。」
担任「しっかり勉強しないと合格は難しい。まぁ、この高校だけじゃないけど。」
緋月「…でも、俺っちがんばります!」
*
聖雷「氷室…高校?」
緋月「うん!近いよ。」
小夜「へぇ、そんなこと話してたの。」
緋月「成績はまだまだだけどね。」
小夜たちは、パンフレットを見ながら皆で緋月の話を聞いていた。
マーリン「でも…この前決めた一日一時間以上勉強にすれば、少しは伸びるんじゃないかしら?」
聖雷「そうだね、小夜もいるし。」
緋月「…うん!」
緋月は、ガッツポーズをした。
緋月「よーし、俺っちも勉強頑張るぞ…!」
緋月の今までにない火の付き方に安心するマーリン。
こうして、緋月は受験をするために、内申を上げる努力をするのであった。