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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【78話】運命のクラス替え


 いつもの道。

 街に向かって歩く道がいつもよりピンク色に染っている。

 辺りから聞こえてくるのは大人と子供の声。

 

緋月「おーはよ。」

小夜「あぁ、おはよう。」

 

 今日は始業式。

 緋月と小夜は洗ったばかりの綺麗な制服に身を包み、桜並木を歩いていた。

 

緋月「とうとう、今日から3年生だね。」

小夜「そうだね。」

緋月「受験かぁ…。」

 

 緋月は頭を抱えていた。

 

小夜「ひっきー、去年からずっと高校決めろって言われてるのに何もしてないもんね。」

緋月「それは小夜っちだってそうでしょ。」

小夜「うぅ…。」

 

 2人は他愛もない話をしながら学校へ向かっていた。

 

緋月「あ、そういえば。」

小夜「ん?」

緋月「今日クラス替えだね。」

小夜「そうだね。」

緋月「嫌な奴とあたらないといいなぁ。」

小夜「…うん。」

緋月「小夜っちだって、からかってくる女子たちと一緒のクラスだったら嫌でしょ?」

小夜「そうだね。」

緋月「…でも、小夜っちと友達になれて良かったかな。」

小夜「どうしたの、いきなり。」

緋月「えっへへ、だって、友達になれなかったら俺っち本当に学校に行かなかったもん。それは小夜っちだって一緒でしょ?」

小夜「…うぅ、そうだね。」 

 

 二人は笑いあった。

 

 歩き続けていると、10分もしないうちに学校に着いた。

 2人は別々の教室に入り、それぞれの担任からクラス替えのことについての説明を受けることになっていた。

 

*

 

 

 朝の教室。

 

小夜「…。」

 

 がやがやとした教室の中に、小夜が入っていく。

 

クラスメイト1「今日クラス替えじゃーん。私、みんなと離れたくないー。」

クラスメイト2「それな。それに、今年受験生だよ?」

クラスメイト3「まじだりー。」

 

 クラスメイトが駄弁っている中、小夜は席につき、静かに担任の先生を待っていた。

 

 先生が教室に来ると、黒板に1枚の大きなプリントを貼り付けた。

 

担任「ほら、クラス替えだ。自分のクラス確認しろー。」

 

 黒板に群がるクラスメイト。

 小夜は全く見えない状態だった。

 

小夜「うーん…見えないな…。」

 

 自分のクラスがわかった人たちが喜んだり悲しんだりしているのを尻目に、小夜はようやく黒板の前まで行くことが出来た。

 

小夜「A…。」

 

 3-A組になった。

 その情報だけを確認すると、荷物を持って教室に向かった。

 


 廊下へ出ると、移動をする生徒たちがたくさんいた。


小夜「(この中を移動するのか…。)」

 

 小夜は少し面倒くさそうにしていると、後ろからいきなり声をかけられた。

 

緋月「さーよっち!!!!」

小夜「うわぁ。」

 

 緋月が耳元で小夜の名前を呼んだので少し驚いてしまった。

 

小夜「なによ。」

緋月「えっへへ、クラスどこになったのかなーって。」

小夜「ひっきーは何組?」

緋月「教えなーい。」

小夜「えー。」

 

 緋月はバッグを肩にかけると、人の間を縫って走っていった。

 

小夜「なんなの…。」

 

*

 

 無事にA組の教室へ辿り着くと、席に座った。

 まわりをそっと見回す。どうやら、このクラスには知っている人は少なそうだ。いや、寧ろいないに近い。 

 

小夜「(まぁ、でも集中して勉強できそうだ。)」

 

 新しい担任の先生が来ると皆が静かになった。

 

担任「えー、今年からAクラスの担任をします。よろしくお願いいたします。」

 

 担任の先生は、笑いながら自己紹介をしていた。

 

担任「じゃあ、クラスを間違えている人がいないか確認するぞ。呼ばれたら返事をするんだぞ。まずは…」

 

 出席簿の読みながら担任の先生が出席を確認する。

 

担任「宇野沢。」

生徒「はい。」

担任「木島。」

生徒「はい。」


 やはり、知っている人はほとんどいなかった。

 

担任「谷田。」

生徒「はい。」

担任「戸畑。」

生徒「はい。」

 

 生徒の名前を呼んでいるところで、小夜は気づいてしまった。

 

担任「葉月。」

生徒「はい。」

担任「藤本。」

緋月「はい!!!!」

 

 声のする方に目を向けると、そこには、緋月がいた。

 

緋月「えっへへ、小夜っち、驚いた?」

 

 しかも、隣の席だったのだ。

 

担任「茉莉衣。」

小夜「…は、はい!」

 

 名前を呼ばれて咄嗟に返事をする小夜。

 声が少し裏返ってしまった。

 

緋月「えっへへ、今の返事、変なのー。」

 

 小夜はまだ状況を把握出来ていなかった。

 

小夜「え…。」

緋月「俺っちもAクラスだよ。小夜っち。」

小夜「えええ。」

 

 隣の席に座る緋月はいつもより活き活きしているように見えた。

 

小夜「まて、隣の席ということは…出席番号も隣?」

緋月「そうだね。藤本の次は茉莉衣。」

小夜「そんな…。」

緋月「一緒だね、小夜っち。」

 

 小夜たちはそのままホームルームを受け、始業式が終わると教室を出た。

 

*

 


緋月「いやー、まさか、小夜っちと一緒だとは思わなかったよ。」

小夜「そうだね。面談、何時からだっけ。」

緋月「あと10分後。」

小夜「その次は俺だな。」

 

 始業式の後は、担任の先生と早速面談が入っていた。緋月の次に小夜の番なので、廊下のベンチに座って待っていた。

 

緋月「今日さ、終わったら小夜っちも宿行く?」

小夜「どっちでもいいよ。」

緋月「じゃいこうよ!聖雷っちに、クラス一緒だったって、自慢しに行こう!」

小夜「そうだね。」

 

 緋月が担任の先生に呼ばれて教室に入る。

 小夜は1人でベンチで待っていた。

 


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