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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【8話】緋月のごまかし


 宿に緋月たちが泊まりに来てから数日後。

 僕は、マーリンさんから買い出しを頼まれて街に行こう準備していました。

 

聖雷「(メモを見ながら)えっと…。豆腐、調味料、絆創膏、ボディーソープ。あとは、僕の本。」

 

 僕は、メモをポケットに入れると、リュックを背負った。

 

シユウ「にゃ。」

聖雷「行ってくるね。マーリンさんと遊んで待っててね。」

 

 シユウの頭をやさしく撫でると、僕は宿を出た。

 

聖雷「行ってきます!」

 

 

*

 

 昼の森。夏だから当然暑い。

 多少、木のおかげで日陰が出来ているが、街には日向しかない。

 

聖雷「うぅ…。暑い…。」

 

 僕は生まれつき身体が弱いため、少し歩くだけでも疲れてしまう。

 夏だと、もっとひどい。

 俺は近くの切り株に腰掛けた。

 

聖雷「こんなんじゃ、だめだ。街に出たら倒れちゃうよ…。」

 

 実は、僕はあまり街に出たことがなかった。

 買い出しに行くことは何度もあったが、結局他人を頼ることになっていた。

 

聖雷「今度こそは頑張るぞ…」

 

 街は苦手だった。

 もともと街のはずれに住んでいたからなのか、人の多さに酔ってしまう。

 

聖雷「そろそろ行くか…。」

 

 僕は立ち上がり、街へ向けて歩いた。

 

 もうすぐ街へ出る…。

 僕は覚悟を決めて街へ出ようとした。

 すると、ちょうど森と街の境目のところに、人が倒れているのを見つけた。

 

聖雷「人…!?」

 

 パニックになった。

 僕はどうしたらいいか分からなかった。

 人が倒れている。それは間違いない。

 

聖雷「あわわわ…どうしよう…。」

 

 すると、倒れている人が微かに動いた。

 僕はそれに気づくと、近づいてみることにした。

 

聖雷「………あのー…。」 

 

 声が震えた。だが、相手は聞こえてるみたいだった。

 その人は、ゆっくりと身体を起こし始めた。

 

?「うぅ…。」


 その人が顔を上げた。僕はビックリした。

 倒れていた人は緋月だった。

 

緋月「………聖…雷……?」


 間。

 

聖雷「ひっきー………?」


 僕は緋月に抱きついた。

 

緋月「(驚いて)うぉ!どうした?聖雷っち?」

聖雷「ひっきぃ…。」

 

 僕は泣いていた。

 恐怖から解放されたのと、心配が混ざっていた。

 

緋月「大丈夫?」

聖雷「ううぅ…。」

 

 

*

 

緋月「落ち着いた…?」 

聖雷「(少し涙目)うん…。」

緋月「…いやー。びっくりしたよ。聖雷っちがいきなり飛び込んでくるなんて思ってもなかったからさ!」

聖雷「…ひっきーは、どうして倒れてたの。」

緋月「…。」

 

 僕は、緋月の身体を見て、あることに気づく。

 

聖雷「その傷…。」

緋月「…バレちゃった?」

 

 緋月の腕や脚に、複数のあざと擦り傷。

 顔は、少し腫れていた。

 

聖雷「どうしたの!その傷。」

緋月「大したことないよ。」

聖雷「大したことなくないよ。ここに倒れていたのも…。とりあえず、応急処置をしなきゃ。」


 緋月を近くの切り株に座らせた。

 僕はリュックを置いて、再び森へ戻った。

 

 

*

 

緋月「ごめんね。聖雷っち。」

 

 僕は薬用植物を緋月の傷口に塗る。

 緋月に少し栄養のあるものを食べさせた。

 

聖雷「ううん、平気。」

緋月「治療に使う植物なんてあるんだね。知らなかった。」

聖雷「そっか。」

 

 応急処置が終わった。

 緋月の傷口と痣のところは多少楽になるだろう。

 

緋月「聖雷っち、ありがとうな。」

聖雷「…何があったの。」

緋月「え。」

聖雷「ひっきー。何があったの。」

 

 緋月は僕のことを顔を見ると、辛さを誤魔化すように笑った。

 

緋月「いやぁ…。お母さんに、怒られちゃって。」

聖雷「…。」

緋月「んで、喧嘩になって。追い出されちゃった。」

聖雷「…。」

緋月「…でも、俺っちが悪いんだ。学校にちゃんと行かなかったり、成績が落ちたり、悪いことばっかりするから。」

聖雷「…。」

緋月「んで、追い出されちゃったから…宿に行ってみようとした。そしたら、道が分からなくなっちゃって。ご飯食べてなかったから、クラクラしてきて。それで、倒れちゃったんだね。」

聖雷「…。」

緋月「聖雷っちが見つけてくれなかったら、俺っち、死んでた。ありがとうね、聖雷っち。」

 

 緋月が自分の母のことを話している時、僕のことを考えて暗くしないようにしてくれていて。

 でも、辛さを隠しているのはわかっていた。

 

聖雷「…お母さんにやられたの。」

緋月「…うん。お母さん、いつも仕事が忙しいからストレスが溜まってるんだよね。それを俺っちが爆発させちゃったんだ。馬鹿だから。」

聖雷「…。」

緋月「いくら殴られても、俺っちのお母さんは1人だから。俺っちは殴りたくない。ただ、俺っちが耐えれば…」


 緋月は言葉が詰まっていた。

 

聖雷「大丈夫だよ。」

緋月「…。」

聖雷「ひっきーは悪くない。」 

緋月「…。」

聖雷「ゆっくり、宿に行こうか。」 

 

 僕は緋月を支えながら宿を目指した。

 お互い、一言も喋らなかった。

 緋月はずっと俯いたままだった。

 


*

 

聖雷「ただいま。」

 

 僕と緋月は宿に入る。

 いつもの台座に、マーリンがいた。

 マーリンは誰かと話しているようだった。

 僕に気づいたマーリンが緋月を見た。

 

 マーリンは、胡蝶と話していた。

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