【68話】助けられていたのは
目を開けると、目の前には人がいた。
影楼「チッ…。」
影楼だった。
影楼は、桐崎兄の腕を掴んでいた。
桐崎兄「なっ…。」
影楼「待たせたな、キツネ野郎。」
桐崎兄たちは動揺していた。
桐崎兄「ふっ、まあいいや。てめぇの方からやってくるとはなぁ。」
影楼「何の話だ。」
桐崎兄「分からないのか?てめぇの居場所を探るためにこいつを拉致したんだよ。」
影楼「あー、そうかよ。」
すると、影楼は桐崎兄の腕を降ろし、離した。
桐崎「影楼…。」
影楼「ひっさしぶりだなぁ。てめぇも、透もよぉ。」
胡蝶「…知り合いなのか。」
影楼「あぁ。」
桐崎兄「気に食わねぇな。」
すると、桐崎兄は素手で影楼に襲いかかる。
影楼は避けながら、桐崎兄を胡蝶から遠ざける。
桐崎兄「おいおい…逃げてんのか?」
桐崎兄は攻撃を仕掛ける。影楼は避け続けるが、隙を狙って反撃する。
桐崎兄の鳩尾に一発入る。
桐崎兄「ぐっ…。」
桐崎兄が怯むが、足で影楼の首を絞める。
影楼「あがっ!」
影楼が倒れる。桐崎兄が倒れる。
桐崎兄「くそっ…。」
桐崎兄は腹を抱えて苦しんでいる。
足で首を絞められている影楼。
影楼「うぅ…!!!」
踵でグリグリと首を絞められる。
影楼は必死に身体を動かし、なんとか脱出した。
影楼「はぁ…はぁ…。」
桐崎兄「…はは、弱くなったな。影楼…。」
すると、桐崎が後ろから襲いかかってくる。
影楼は間一髪でかわした。
桐崎「影楼…!!」
影楼「くっ…無理だ…。」
桐崎は回し蹴りをする。運悪く影楼に当たる。
胡蝶「影楼!」
桐崎は影楼を捕らえる。
桐崎「へへっ。」
桐崎は影楼の腹と背中を殴る。
影楼は殴られながらも逃げ、桐崎の後ろに回った。後ろから桐崎の背中に飛び込む。
影楼「残念だったな。」
桐崎にしがみつき、後ろに投げ飛ばす。
桐崎「ぐっ…。」
お互いがボロボロになっていた。
胡蝶は不安そうに影楼を見ていた。
胡蝶「(なにか…できることは無いだろうか。)」
あたりを見回してみるが、武器になりそうなものは遠くにしかない。
胡蝶「(くそっ…この縄が外れれば…!)」
桐崎と影楼がやり合っている中、静かに立ち上がる桐崎兄。
胡蝶「(…まずい!)」
桐崎兄は床に置いてあった金属の棒を持ち、影楼に襲いかかった。
胡蝶「やめろ…!!!」
影楼は思い切り脚を打たれる。
影楼「ぐはっ!!」
バランスを崩し、その場に倒れる。
胡蝶「影楼!」
影楼は倒れたまま動かなくなる。
桐崎「へへっ…兄貴、さすが。」
桐崎兄「危なかったぜ。」
桐崎たちはゆっくりと影楼に近づく。
胡蝶「やめろ、やめろ!!」
桐崎「影楼、お前はもう終わりだ。」
桐崎兄は、影楼の上で金属の棒を振り降ろそうとした。
小夜「やめて!!!」
声の先を見ると、小夜が立っていた。
胡蝶「小夜…?」
桐崎「…は?」
小夜は影楼のもとへ走っていく。
影楼「小夜…来るんじゃねぇ…。」
桐崎兄「てめぇ、それ以上動いたら殺すぞ。」
桐崎兄は棒の先を小夜に向けた。
影楼「小夜に…手を出すな…。」
影楼は桐崎兄の足を掴んだ。
しかし払われ、踏まれてしまう。
影楼「ぐっ…。」
小夜は近づくのをやめた。
小夜「影楼を殺さないで。」
桐崎兄「…。」
すると、桐崎兄が桐崎に命令をした。
桐崎兄「おい、こいつを捕まえろ。」
桐崎「…はい。」
小夜は逃げようとするが、桐崎兄に棒の先で壁へと追いやられた。
桐崎は小夜の腕を掴む。
小夜「離して!」
桐崎は小夜の身体を持ち上げ、腕を壁に押さえつける。
桐崎「女のくせに…。」
桐崎は小夜の首に指を押し込んだ。
小夜「うぐっ…。」
影楼「やめ…ろ。」
桐崎兄は影楼を強く踏みつける。
胡蝶「(…どうしたらいいんだ!)」
圧倒的に不利な状況に対面し、ただ見てることしか出来なかった。
*
1時間前。
マーリンは胡蝶が攫われたことを宿のみんなに相談していた。
緋月「あわわ…どうしよう!」
聖雷「胡蝶…。」
マーリン「幸い、森の中であったから私が確認できたけど、街の中だったらどうしようも無かったわ。」
すると、聖雷が立ち上がる。
聖雷「助けに行こうよ、みんなで。」
緋月「そうだよ。」
しかし、影楼はいい顔をしなかった。
影楼「…全員で言っても、やられて帰ってくるだけだ。」
緋月「どうして。」
影楼「透ってやつがいるからだ。」
聖雷「とおる?」
影楼はため息をつくと、話し始めた。
影楼「桐崎透。桐崎の兄だ。」
緋月「兄!?」
影楼「昔、喧嘩したことがあってな、決着がいつまで経ってもつかなかった。」
聖雷「影楼くんでも…?」
影楼「あぁ。」
すると、静かに影楼は言った。
影楼「…俺は今から胡蝶の所へ行く。おめぇらは待ってろ。」
聖雷「そんな。」
影楼「大丈夫だ。」
影楼は、聖雷と緋月の目をまっすぐ見つめた。
聖雷「…。」
マーリンの情報を頼りに胡蝶のいる場所へたどり着いた。
影楼「…やっぱな。」
街のハズレにある、河川敷から見える、古い建物。
その小屋に胡蝶がいるとマーリンが言った。
影楼「…透。ぜってぇ殺してやる。」
小夜「…。」
小夜は、影楼を不安そうに見ていた。
影楼「…すまねぇな、お前も巻き込んで。」
小夜「いいの。」
影楼「危ない目にはぜってぇ遭わせねぇ。」
小夜「…。」
影楼「お前は外で待ってろよ。何かあったら宿のメンバーに連絡しろ。それだけやってくれればいい。」
小夜「…わかった。」




