表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちは  作者: 猫眼鏡
7/160

【7話】俺の家族と友達の家族


 聖雷たちの宿に泊まってから数日後。

 俺は区民プールに来ていた。

 バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロール。

 一通り泳いだので、プールサイドで休憩する。

 

小夜「(…体力が落ちたな。ちょっとの期間、泳がなかっただけでこれか。)」

 

 久しぶりに泳いだからか、疲れるのが早かった。

 プールを別に習っているわけではないので、自由に泳いでるだけだ。

 泳いでいる間、少し考え事をしていた。

 

 ここ最近、俺は同級生と会ったり、宿を見つけたり、猫がしゃべったり、色々なことがありすぎた。

 今まで自分の見ていた世界がすべて崩れていくようで、どうも信じ難いことばかりだった。

 

 そんなことを考えながら泳いでいると、時間はあっという間に過ぎていった。

 すると、プールにアナウンスが流れた。

 

アナウンス《まもなく、閉館致します。》

 

小夜「もう閉館か。」

 

 俺はプールサイドに上がり、タオルを取り、更衣室へと向かった。

 

 

*

 

 更衣を終え、俺は自転車で家に帰る。

 外へ出ると、太陽は落ち、昼のような暑さはもう無かった。

 

小夜「(涼しいな。)」

 

 

 家に着いた。

 中へ入り、自分の部屋に向かおうとすると、家政婦に呼び止められた。

 

小夜「どうしたの?」

家政婦「先程、奥様から電話がありまして。かけ直してくれませんか?」

 

 母から電話があったようだ。家政婦は、電話の子機を渡してきたので、受け取った。

 俺は、母に電話をかける。

 

小夜「…ママ、元気かな。」

 

 3コール待ったところで、母が電話に出た。

 

母《もしもし。》

小夜「ママ。俺だよ。」

母《元気だった?》

小夜《ああ。ママこそ、仕事忙しいでしょ。元気?》

 

 ママの声は、電話越しでも分かるくらいの嬉しさが伝わってきた。

 

母《元気よ。あなた、学校はちゃんと行ってる?勉強はついていけてる?》

小夜「うん…。学校は行ってないけど、勉強は大丈夫。自分でいつもやってるから。」

母《そう。良かった。》

小夜「ママは、仕事どうなの。忙しい…よね。」

母《まあね。来月までドラマの撮影もあるし、チョイ役だけど、映画も出るのよ。》

小夜「映画か。」

 

 母は、比較的有名なテレビ女優。

 事務所に所属していて、ドラマや映画などで活躍している。

 それもあって、ほとんど家に帰れずにいる。

 

母《そう。大変なのよ。》

小夜「…次はいつ帰ってくる?」

母《まだわからないかな。今、海外なのよ。日本に戻れても家に帰れるかはわからない。》

小夜「そっか…。」

母《とと(父)は元気?》

小夜「会ってない。最後に会ったのは…いつかな。去年だったかも。」

母《元気だといいけど…。》

小夜「うん…。」

 

 すると、電話越しにマネージャーであろう人の声が聞こえてきた。

 

母《ごめん。そろそろロケだから。電話切るね。元気でね。》

小夜「じゃあね…。」

 

 母は電話を切った。

 

小夜「はぁ…。」

 

 俺は黙って部屋に戻る。

 正直、母に会えなくて寂しい気持ちがあった。

 俺の両親はどっちも仕事が忙しく、ほとんど帰ってこないので、家政婦に家を任せていた。

 小さい頃からずっと。

 時々、両親が家にいれば、ちゃんと学校も通ってたのにと思うこともあった。

 

 …でも、俺は両親がちゃんといる。

 世の中には、片親だったり、親に裏切られた子供だってたくさんいるのだ。

 そう考えると、俺は恵まれている方だ。

 

小夜「ひっきーたちは…どうなんだろうか。」

 

 緋月は、親からの虐待だ。

 噂でしか聞いたことがないが、学校で、緋月はいつも長袖を着ている。

 夏服の制服姿は誰も見たことがなかった。

 聖雷は、なぜ宿で暮らしているのかは分からないが、多分、それなりの理由があるのだろう。

 友達の親と自分の親のことを考えると、俺は本当に恵まれていると感じた。

 

 そんなことを考えていると、家政婦が部屋の前にやってきた。

 

家政婦「夕飯が出来ましたよ。」 

小夜「はーい。」

 

 家政婦はリビングにもどった。

 これ以上家族のことを考えるのはやめよう。

 そう思い、俺もリビングへ行った。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ