【過去編】檸檬の家族(2)
幼い頃から機械をいじるのが好きだったので、情報科にすすんだ。
僕にとって、コンピュータをいじることは日課になっていた。
時々、お世話になっていた孤児園のホームページを見て聖雷を探した。
ホームページを見ていると、孤児園の様子が気になってきた。
透夜「久しぶりに、行ってみようかな。」
*
孤児園に着いた。
透夜「やっぱり、変わらないか。」
外観も、中身を全て変わらなかった。
園長先生「いらっしゃい。暑かったでしょう。」
園長先生は、僕のことを覚えててくれたらしく、すぐに中に入れてくれた。
園長先生「もう高校生になったのね。時が経つのが早いわ。」
透夜「そうですね。」
僕は今の状況のことを園長先生に話した。園長先生は喜んで聞いてくれた。
園長先生「透夜くんは凄いわ、昔はあんなに怖がりだったのに。」
透夜「えへへ。」
園長先生「そういえば…、聖雷くんのことは聞いたかしら。」
透夜「?」
園長先生「聖雷くん、この街で暮らしているらしいわ。」
僕は思わず立ち上がった。
透夜「聖雷が!?」
園長先生「えぇ。この前、街で見かけたから話したのよ。そしたら、聖雷くんが猫を抱えてて。」
透夜「猫…?」
園長先生「どこかのいい人に拾われて、猫を飼ってるのかと思って聞いたら、違うんだってね。」
透夜「その話、詳しく聞かせてくれませんか。」
僕は園長先生から聖雷のことを聞いた。
透夜「園長先生、ありがとうございます。」
情報を聞くと、僕はすぐに街へ飛び出した。
街へ行くと、園長先生が聖雷に会ったという場所で待った。
透夜「…お願いだ、聖雷。来てくれ…。」
2時間、3時間経っても来なかった。
僕は、人が歩く交差点をじっと見つめていた。
透夜「…いるわけないか。」
諦めかけていたその時。
僕の前を2人の少年が横切った。
1人は、背が高く、紫色の長い髪をした少年。
その横に、茶色の短髪の少年がいた。
僕は咄嗟にその少年の顔を見た。
黄緑と黄色の瞳に、大きくて丸い目。
僕の目と一緒だった。
透夜「あの…!!!」
僕の声に驚き、2人の少年は振り向いた。
間違いない。聖雷だった。
聖雷「…。」
透夜「…聖雷?」
聖雷は、僕のことを見ても、すぐには気づいてくれなかった。
聖雷「…!なんで僕の名前…。」
紫髪の少年「知ってる人なのか?」
聖雷「ううん。」
僕は、聖雷の手を取った。
透夜「…聖雷。僕だ、透夜。」
聖雷「…!」
気がつくと、涙が溢れていた。
聖雷「兄ちゃん?兄ちゃんなの?」
聖雷は僕のことをしっかりと見ていた。
透夜「あぁ、七星透夜。聖雷の兄ちゃんだ。」
僕と聖雷は抱き合った。
聖雷「兄ちゃん、兄ちゃん…。」
透夜「聖雷。」
聖雷も泣いていた。
聖雷「…探しに来てくれたの?」
透夜「うん。ずっとな。」
聖雷「ありがとう、兄ちゃん!」
僕は、聖雷と近くの公園で話をした。
紫髪の少年は、どうやら同居人らしい。
こうして、僕は聖雷と再会することが出来た。
聖雷とは、時々連絡を取り合って会うことになった。友達の宿で暮らしているらしいので、心配は無かったが、たまには会いたいという気持ちがあった。
そして、僕は高校を卒業すると水無月環境研究所の研究員になった。
聖雷の大好きな自然を守れる、唯一の仕事でもあった。
僕はもう、今年でもう19になる。
聖雷と一緒に暮らしてはいないけど、大切な弟のことを、今度こそ守ってみせる。