【過去編】檸檬の家族(1)
この話は、聖雷の過去編の番外編です。
【52話】新しいおうち を読んでから来るともっと楽しめます。
僕は、透夜。5歳。
僕には弟がいるんだ。2歳の聖雷。
園長先生と、聖雷と、他の子供たちと孤児園でずっと暮らしてた。
でもある日、僕はパパとママに会ったんだ。
孤児園のリビング。
僕は、新しいパパとママと手を繋いでいた。
園長先生が聖雷を抱き抱えている。
透夜「せいら、ぼく、ママとパパとおでかけしてくるね。」
僕は手を振ると、パパとママと一緒に玄関へ向かった。
聖雷「にいちゃ!にいちゃ!」
聖雷の声が後ろで聞こえた。
ママ「…ごめんね、透夜。」
透夜「え。」
ママは、僕の手を強く握った。
玄関を出ると、僕たち3人は園長先生に挨拶をして孤児園を出た。
*
車の中。
透夜「ママ、パパ。どこいくの?」
ママ「えへへ、透夜の新しいおうちよ。」
透夜「おうち?」
ママ「あぁ、これから一緒に暮らすね。」
ママはニコニコしながら僕のことを撫でた。
パパは運転しながら、僕のことを気にかけてくれた。
聖雷が生まれた時、ママは僕と聖雷を一緒に撫でてくれていた。
ママの両手は、いつも僕達で埋まっていた。
透夜「…せいら。」
聖雷が、いない。
僕は急に不安になる。
透夜「せいら、せいら。」
ママ「…。」
透夜「ママ、せいらはどこ?」
ママ「…あのね、透夜。」
僕はもう聖雷と会うことは無かった。
ママとパパは、僕を大切に育ててくれた。
そして、小学生になった頃。
透夜「本当にいいの?」
ママ「えぇ。」
透夜「やったぁ!」
僕は孤児園に遊びに行くことにした。
聖雷に会いに行くのはもちろん、園長先生に話したいこともいっぱいあった。
学校が終わると、真っ先に孤児園へ向かった。
孤児園は、僕が最後に見た時から全く変わっていなかった。
そして、玄関のインターホンを鳴らす。
園長「はーい…。」
そして、園長先生が玄関のドアを開けた。
透夜「園長先生!」
園長「…まさか。」
透夜「七星透夜だよ。」
園長「あら…!」
園長先生は僕を抱きしめた。
園長「こんなに大きくなって…。」
透夜「えへへ。」
孤児園の中に入ると、僕の知らない子たちがたくさんご飯を食べていた。
透夜「懐かしい!」
園長「そうね。今はご飯の時間なのよ。」
すると、外で遊んでいる子供たちの中にに見覚えのある子がいた。
透夜「あ、あの子。」
園長「ええ、覚えてる?」
僕が小さい頃によく遊んでくれていたお兄ちゃんだった。
透夜「まだ、ここにいるんだ。」
あとでパパから聞いた話だけど、この孤児園は18歳まで居られるらしい。
里親が見つからなかったり、どうしても親にトラウマがある子たちは18歳までいるんだって。
園長「あの子はもうすぐで中学生よ。でも、里親が見つからなくてね。」
透夜「…そういえば!」
僕は駆け足で昔の僕の部屋へ向かった。
園長「ちょっと?」
部屋へ着くと、ドアは開いていた。
透夜「聖雷…?」
中には、誰いなかった。
透夜「…もう、新しいママが見つかったか…。」
園長「いいえ。」
園長先生は後ろから僕のことを撫でた。
園長「透夜くん、よく聞くのよ。聖雷くんはね…。」
*
僕は中学生になった。
今でも、聖雷のことを探している。
ママ「透夜。」
ママが僕の部屋のドアをノックした。
透夜「入っていいよ。」
ママ「ありがとう。」
ママは僕の部屋に入ってくると、お盆に乗ったご飯を渡してきた。
ママ「勉強、頑張ってる?」
透夜「…まあね。ちょっと考えごとしてた。」
ママ「そっか。頑張ってね。」
それだけ言うと、ママは部屋から出ていった。
透夜「はぁ。」
机の上に飾られているのは、まだ幼い聖雷と僕の写真。園長先生も写っていた。
あの日園長先生が言っていたこと、それは。
園長「透夜くん、よく聞くのよ。聖雷くんはね…ここを出ていったの。」
透夜「え。」
聖雷は、6歳の頃に孤児園を出ていったらしい。
僕が孤児園を久しぶりに訪れる2ヶ月くらい前の話だったらしい。
里親が見つかった訳でもなく、「出ていった」と言われて、僕の頭は混乱していた。
透夜「聖雷…。」
聖雷が今どこで何をしているのか。それは園長先生も何も分からないらしい。
ただ1つ言えるのは、聖雷はこの街のどこかで暮らしている可能性が高いということだった。
聖雷はある日突然、荷物を持って出ていったらしい。手紙を置いていったらしいが、その内容はただ一言。「ぼくはほしになります。」
行方不明のような感じではあるが、生きていることは間違いないらしい。
聖雷を街で見かけたという人もいるのだ。
僕は聖雷のことを思い出しては心配していた。
もう一度、会いたい。その気持ちは強くなっていった。
やがて、僕は高校生になった。