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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【50話】森の復活を願って


聖雷「おーい、早く早く!」


 スコップなどのガーデニング道具を持ち、聖雷について行く緋月たち。 

 

緋月「待ってよ〜、重いよ…」

小夜「スコップどんだけ持ってきたんだよ…。」

胡蝶「馬鹿が5個全部持ってきて、途中でパスしやがった…。」

 

 森林火災が起きた日から1週間。聖雷は少しづつ元気を取り戻していた。

 森の再生のために、この日は新しい苗を植えることにした。

 

影楼「はしゃぐんじゃねぇ。転ぶぞ。」

マーリン「ふふ、久しぶりのガーデニングね。」

シユウ「にゃぁ。」

 

 そうこうしているうちに、事件現場に着いた。

 

緋月「疲れたぁ。」

聖雷「…やっぱり、変わってないね。」

 

 1週間経ったとは言えど、黒焦げになった木は変わらなかった。

 

胡蝶「そうだな。」

影楼「簡単にゃ、変わんねぇよ。それを、俺らが変えるんだろ?」 

 

 影楼が聖雷にスコップを渡す。

 

聖雷「………うん。ありがとう。」

 

 にっこりと笑う聖雷。

 

緋月「よーし、早速やるぞー!!」


 森の再生に向けて動き始めた。

 まず、燃えた土地の土や煤などの回収。木の伐採。

 

影楼「焦げたもんは全部こん中入れろ。」

 

 影楼が持ってきた台車の中に土や煤を入れはじめる。その間、焦げた木を切る胡蝶と影楼。

 

胡蝶「(オノで切りながら)くっ…かなり頑丈だな。」

影楼「そうやってやるんじゃねぇ、見てろ。」

 

 影楼がオノで木を切り倒した。

 

緋月「うおぉ、すごい!さすがかげろっち〜。」

影楼「(笑って)こんくらい余裕。」

   

 次に、新しい土を運び入れる。

 

小夜「(スコップで土を解す)…こんな感じ?」

影楼「あぁ。小石とかあんま入れねぇようにな。」

小夜「うん!」

 

 台車を支える胡蝶。

 

胡蝶「山盛りまで積んでくれ。あっちはまだ足りないらしい。」

 

 その間、木を植えるための場所を確保するマーリンたち。

 

マーリン「苗は全部で3本。どこがいいかしら。」

聖雷「」

緋月「」

 

 最後に、木の苗を植え、ジョウロで水を与える。

 

緋月「植えたよ。」


 ジョウロで水をかける小夜。

 

マーリン「…よし、完了ね。」

 

 緋月たちは、森の再生の下準備をやり終えた。

 

胡蝶「…かなりの時間がかかったな。」

聖雷「そうだね、宿に帰って休もうか。」

 

 皆、宿へ向かって歩き出す。

 すると、影楼が足を止め、後ろを振り返った。

 

影楼「…?」

聖雷「どうしたの?」

影楼「いや…。」

 

 再び歩き出すが、影楼はまた振り返る。

 

聖雷「…だから、どうしたの?」

影楼「…!」

 

 影楼は驚いた顔をしていた。

 聖雷の前にいる影楼は、影楼が見ていた先が分からなかった。

 全員が振り返る

 するとそこには、見知らぬ少年が隠れていた。

 

影楼「…何してやがる。」

少年「!!」

 

 少年は影楼たちに見つかると、すぐに逃げていった。

 

影楼「おい、待て!」

 

 緋月が少年を走って追う。その後に続いて影楼達も走り始める。

 

小夜「…子供かな?」

聖雷「こんな所で何してるんだろ。」

 

 マーリンは近くの草に隠れた。

 

 森の中を走る4人。

 少年は、全力疾走で逃げる。

 緋月と胡蝶はそれを追い、木の上を渡り走る影楼。

 

影楼「待ちやがれ!!」


 そして、ついに緋月は少年を捕らえた。

 

少年「うわぁ!(手を掴んで)」

緋月「ちょっとだけ、話を聞かせてもらうよ。」

少年「う…うぅ…。」

 

 少年は突然、その場で泣き出してしまった。

 戸惑う3人。

 

影楼「…あ?」

胡蝶「手を離してやれ。」

 

 緋月が手を離す。

 

緋月「…ごめんね、ちょっと強引すぎたかな。」

影楼「今はそっとしておいてやれ。」

緋月「…うん。」

 

*

 

 

影楼「落ち着いたか。」

少年「…うぅ。」

 

 切り株のところに少年を座らせ、水筒のお茶をあげた。

 

緋月「ゆっくりでいいからさ、逃げた理由、教えてくれる?」


 少年は俯いたまま、ゆっくりと頷いた。

 

緋月「君の名前を教えてくれる?」

少年「…空斗あくと。」

緋月「空斗くん?」

空斗「うん。」

緋月「どうして、ここに来たの?」

空斗「…。」

 

 少年は黙ってしまった。

 心配そうに見ている小夜と聖雷。

 

小夜「…なにか、言えない理由があるの?」

空斗「…うん。」

小夜「それは、いけないことをしたから?」

空斗「…!」

 

 少年は顔を上げ、小夜の方を見る。

 

空斗「…僕のことを、知ってるの?」

緋月「?」

空斗「…。」

 

 少年は間を置いた後、話し出した。

 

空斗「僕は、森の様子を見に来たんだ。」

緋月「森の様子?」

空斗「…僕が、燃やしてしまったから。」

 

 皆が驚く。

 

緋月「え…。」

聖雷「え?ねえ、どういうこと?森を燃やしたって…」

 

 少年に問い詰める聖雷。それを止める胡蝶。

 

空斗「昨日の夜、僕が火をつけた。」

緋月「…それは、どうして。」

空斗「………自殺をしたくて。」

 

 少年がゆっくりと話し始めた。

 

空斗「自殺をしようとして、ガソリンを撒いたんだ。でも、火をつけたら恐くなって。それで、逃げちゃった。」


 緋月たちは黙って話を聞いていた。

 

空斗「ごめんなさい…。本当にごめんなさい!」

 

 少年は泣いていた。

 

緋月「…辛いことがあったの?」

空斗「………うん。」

緋月「おうちは、どこ?」

空斗「そんなの、ない。」

緋月「え。」

空斗「ママがね、「悪い子はいらない」って言ったの。だから、僕のことはいらないんだ。」

 

 緋月が顔をしかめた。

 

空斗「いい子にしてるためにね、僕はずっとお留守番してたんだ。……だけど、帰ってくると僕のことを殴るの。」

 

 緋月が顔を背けた。それに気がついた胡蝶。

 

空斗「ママが出ていってから、1週間も、なにも食べてなくて、死ぬしかないって思ったんだ………。」

 

 空斗は俯く。すると、胡蝶が空斗の前にしゃがむ。


胡蝶「…空斗くん。」

空斗「…。」

胡蝶「君がやったことは、いけないことだ。森を燃やしたことではなく、自殺しようとしたこと。」

空斗「…。」

胡蝶「……しかし、無事で良かった。命を落とさずに居てくれて、良かった。」

空斗「…。」

 

 胡蝶の目を見てまた泣き出してしまった。少年は反省しているようだった。

 すると、小夜が立ち上がる。

 

聖雷「…どうにか、できないかな。」

緋月「?」

聖雷「空斗くんを助けたい。」

緋月「………そうだね。」


 5人は顔を見合わせる。

 

影楼「…つっても、どうやって。」

聖雷「お家が無いんだよね…。それなら、一つだけ方法がある。」

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