【48話】不可解な建物
研究員がカメラを設置した翌日。
檸檬「!」
倒れていたカメラに気づき、持ち上げる檸檬。
カメラをくまなく調べる。
檸檬「壊れては…いなそう。」
マリー「やめてよ〜、壊れたら給料から引かれるし。」
檸檬「うん…。」
マリー「三脚が弱かったかな?風が強かったとか…」
檸檬「分からない。録画はされてるみたい。」
マリー「調べてみないとね。」
檸檬とマリーはカメラを持って、森を出ていった。
緋月「…やったぁ。」
研究員たちが去ると草むらから出る緋月たち。
胡蝶「素直に帰ってくれたな。」
マーリン「良かったわ。」
聖雷「とりあえず、宿に入ろう。」
*
研究所に着いた檸檬とマリー。
マリー「はぁぁ、また虫に刺されてるよ。」
檸檬「マリーの血が美味しいんじゃないの?(からかって)」
マリー「イヤだ、檸檬くんが吸われればいいのに。」
檸檬「なんてことを言うんだ…。」
テーブルにパソコンを広げ、カメラの中のデータを確認する。
檸檬「昨日の夜で録画が止まってる…。」
マリー「バッテリー切れね。あんた、持っていかなかったでしょ?」
檸檬「うぅ…。」
そして、カメラの映像を流す。
そこには、普通の光景が映っていた。
マリー「あたしたちが設置したときね。レモンくんの声が入ってるわ。」
檸檬「そうだね。」
すると、突如現れる白い塊。すごい速さで移動していた。
マリー「何あれ。動物?」
そして、映像が急に乱れ始める。
地面に落ちる音。反転する視界。
檸檬「倒れたのか!?」
マリー「動物の仕業だったのね。」
檸檬「まさか、突っ込んでくるとは思わないよ。」
そして、視界が完全に真っ暗になる。
その後も映像は流れ続けたが、特に変わった所はなかった。
檸檬「…。」
マリー「成果なし、か。」
檸檬「動物がいたことはわかった…。」
マリー「無理があるよ、あんた。」
檸檬は、倒れた時の瞬間をスローにし、じっくりと見てみた。
檸檬「(見ながら)うーん、やっぱり白い動物がぶつかって来てるね。猫…かな。」
マリー「おっちょこちょいなのかな。」
檸檬「もっとスローにしてみよう。」
どんどん速度を下げて映像を分析する。
すると、カメラが倒れる瞬間に、不思議な光景が映り込んでいた。
檸檬「!」
白い猫のうしろに、大きな建物のような何か。
ぶれていて分からなかったが、確かにそこに存在していた。
マリー「何これ…。」
檸檬「建物…?こんなの、近くに無かったよね。」
マリー「違うものってことは無い?もう1回ちゃんと見て。」
映像を巻き戻してスローで何回も見直してみるが、その瞬間しか建物のようなものは映っていなかった。
マリー「手品みたい…。一瞬だけ、これが映るなんて。」
檸檬「理事長に報告だな。」
マリー「うん。」
檸檬とマリーは研究室を飛び出した。
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宿のリビング。
緋月「やっと、帰って来られたよ!」
聖雷「…運が良かったね。」
マーリン「ふふ、シユウのおかげよ。」
シユウがマーリンの方を向いて鳴く。
聖雷「それにしても昨日の夜は最悪だったなぁ…。」
それは昨日の夜の出来事。
影楼の小屋は狭いため、全員で小屋の中で寝ることが出来なかった。小夜はお家に帰り、残される胡蝶と聖雷と緋月。
聖雷「じゃんけん…ぽん!!!!」
全員「!!!!」
じゃんけんの結果、聖雷と緋月と胡蝶が勝ち、1人負けする影楼。
影楼「くっそぉぉぉ、ふざけんじゃねぇぞ!!!!」
本気で悔しがる影楼に、喜ぶ3人。
緋月「自分のお家なのに負けてる。」
聖雷「ごめんね、影楼くん。」
怖い顔で睨む影楼。
影楼「てめぇら…。覚えとけ…。」
そういうと、寝袋を持ち、小屋を出ていく影楼。
そう、これは地獄のじゃんけんだった。
聖雷「まさかの影楼1人負けだからね。びっくりしたよ。」
緋月「だって、1人だけ小屋の外で寝るって言うから。」
聖雷「じゃあ、僕達でじゃんけんして決めようって言ったら、「俺様を仲間はずれにするとはいい度胸だな。」とか言ってきて、結局負けてるし。」
マーリン「何だかんだで楽しいのよ。」
聖雷「キャンプみたいで楽しかったなぁ。お魚も食べられたし。」
胡蝶がリビングに入ってきた。
胡蝶「ただいま。」
聖雷「胡蝶おかえり。大丈夫だった?」
胡蝶「あぁ。」
胡蝶は、森の周辺の見回りをしていたようだった。
胡蝶「異常は無かった。」
聖雷「良かった…。」
マーリン「森の外にカメラ仕掛けられてたら大変よね。」
緋月「だったら安心だね。」
胡蝶が苦い顔をした。
胡蝶「…カメラを倒したことによって、余計に怪しまれた可能性もある。安心はできない。」
緋月「…。」
胡蝶「またカメラを設置しに来るかもしれない。それ以上に厄介なことにもなるかもしれない。」
聖雷「…そうだよね。」
不安が募り、空気が重くなる。
マーリン「大事にならないことを祈りましょう。それしかできないわ。」
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ローズ「…。」
建物のようなものが映った映像を見せる檸檬。
ローズ「そうね…。今はなんとも言えないわ。」
マリー「どうしてです?こんなにはっきり映っているのに。」
ローズ「現地調査をしても、見つからないと思うわ。張り込みをしても、ね。今度またカメラで映像を撮ったとしても、動物たちに今度こそ壊されるかもしれないわ。」
檸檬「そうですよね…。」
ローズは少し考えた後に、ある提案をした。
ローズ「…少し、私の提案を聞いてくれるかしら。」
檸檬・マリー「?」
ローズは棚の資料を漁り始める。そして、ひとつのファイルの中身を見る。
ローズ「あったあった。森に詳しい人とかに聞いてみるのも手だと思ったの。」
檸檬「あの森のですか?」
ローズ「えぇ。責任者は…いないけど。あの森を詳しく知っている人ならいるでしょ?例えば、よく行っている人とか。」
マリー「あの森に、よく行く人なんて居るの?」
ローズ「いるわ…だって……ね?」
ローズは黙って檸檬の方を見た。