【46話】3人の研究員
森の中。
水無月環境研究所の研究員らが荷物を持って歩いていた。檸檬の手には機械。
マリー「疲れたよ〜。レモンくん、まだ?」
檸檬「あと少し。」
ローズ「だいぶ木の姿が変わったな。夏はあんなに青々としていたのに。」
マリー「多分それ、季節の変わり目だからですよ。」
ローズ「ほう。」
すると、檸檬の機械が若干の反応を示した。
檸檬「!」
マリー「ん?」
機械に寄るローズとマリー。
檸檬「やっぱり、ここら辺だ。」
*
緋月「あ〜、だるいよ〜。分かんないよ〜。」
宿のリビング。テーブルいっぱいに勉強道具を広げて、緋月が宿題をやっていた。
胡蝶「五月蝿い。少し黙れないのか。」
聖雷「でも、ひっきーが宿題を真面目にやるなんて珍しいよ。」
胡蝶「そうだな。」
緋月「小夜っちから教わったところ全然わかんない…。」
胡蝶「貴様は何を聞いていたんだ…。」
涙目になりながら宿題を続ける緋月。
すると、マーリンがやってくる。
マーリン「勉強がんばってる?ガラムの実持ってきたわよ。」
緋月「やったー!!」
一目散にガラムの実に飛びつく緋月。
胡蝶「やれやれ。」
聖雷「あはは、元気はいいのにね…。」
聖雷と胡蝶も木の実を食べ始める。
マーリンはそれをにこにこしながら眺めていた。
木の実の匂いに、シユウも寄ってきた。
シユウ「にゃー。」
聖雷「お、シユウ。(シユウに1粒あげて)はい。」
シユウは嬉しそうに聖雷からもらった木の実を食べていた。
すると突然、マーリンの毛が逆立った。
マーリン「!」
急いで鏡を取り出すマーリン。
その行動に驚く一同。
聖雷「どうしたの!?」
マーリン「…まずいわ。」
全員で鏡を覗く。
そこに映っていたのは、3人の大人。
聖雷「兄ちゃん!?」
胡蝶「研究員の人か。」
緋月「ほえ?」
研究員の3人が森に入ってきた。
マーリン「一旦、宿と影楼の小屋を消すわ。」
聖雷「いきなり、どうしたんだろ。まさか…」
胡蝶「なにか思い当たるのか。」
聖雷「…。」
研究員は機械を手に持ち、森のことを調べているようだった。
全員が突然の事で動揺していた。
マーリン「今回は聖雷の兄さんだけじゃないようね。」
緋月「ほんなにいふのは?(そんなにいるのか?)」
胡蝶「(緋月に)食べてから喋れ。」
マーリン「前と同じく、しばらくは待機よ。絶対動かないこと。」
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マリー「ここには…なにもなさそうだけど。」
前回檸檬が不思議な感覚を体験したという場所に訪れた3人。
檸檬「ここで、検出できない何かを感じた。ほら、機械も反応してるでしょ。」
檸檬の手に持った機械は、僅かな反応をしめした。
ローズ「うーん…。ちょっと貸して。」
機械をローズに渡す檸檬。
ローズは機械を持ったまま、色々な方向にかざしてみた。
檸檬「…。」
すると、反応が変わった。
マリー「ん!?」
ローズ「あっちの木の方向に向けると反応が強くなる。」
檸檬「これは…。」
ローズが機械を向けた方向。それは本来、マーリンの宿がある所だった。
檸檬「…でも、それが何なのかは解明できないんだよなぁ…。」
マリー「ただレモンくんがポンコツってことじゃなさそうだね。」
檸檬「おい。」
ローズ「とりあえず、反応が強かった場所をマークしておきましょう。そこの近辺も探索しないとね。」
マリー・檸檬「はい。」
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緋月「なに、あれ。」
窓から研究員らの様子を伺い、檸檬が機械をかざすところを見ていた緋月。
聖雷「この前も持ってたね。急に音が鳴ったやつ。」
緋月「あれ、何に使うんだろ。」
聖雷「さぁ…。」
緋月「木の実が生えてるところをセンサーとかで感知してるのかな。」
胡蝶「目視できるだろ。」
マーリンは鏡を見つめていた。
マーリン「…。」
聖雷「何かわかった?」
マーリン「いいえ。研究員は何をしに来てるのか分からないわ。聖雷のお兄さんから何か聞いていない?」
聖雷「お兄ちゃん、環境の研究員なんだ。だから、森のことを調べてる。それしか知らないな。」
すると、ある違和感に気づく。
胡蝶「…あの研究員たちは、やけに俺たちに近づいて来ていないか。」
聖雷「?」
胡蝶「普通、研究をするとしたら森の全体を歩いて調べると思うぞ。しかし、今回は宿の周りをうろついている。なにか勘づいているように見える。」
すると、マーリンが口を開いた。
マーリン「…そうね。胡蝶の言う通り、違和感には気がついているのかも。」
胡蝶「宿がバレるのも、時間の問題だな。」
窓を覗いていた緋月が聖雷の袖を引っ張った。
緋月「ねえねえ、あの人たち、なんか設置してるよ。」
聖雷「え。」
聖雷と胡蝶は窓の外を見た。
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資料を見るローズ。
マリーと檸檬は近くの捜索をしていた。
ローズ「何かわかったか。」
マリー「何も。」
檸檬「…残念ながら。」
ローズは少し考えた。
ローズ「なにも見つからないなら、もう何も出来ないわね。機械の異常しか原因がないわ。」
檸檬「そんなぁ…。」
ローズ「仕方ないわ。」
すると、マリーからある提案をされる。
マリー「ねぇ、じゃあさ。張り込んでみる?」
ローズ「…は?」
マリー「1日くらい張り込んでみて、何も無かったら帰る。」
ローズ「マリー…。」
呆れるローズ。しかし、檸檬は諦めていなかった。
檸檬「僕、カメラ持ってるよ。」
マリー「おぉ!」
檸檬がカバンからカメラと三脚を出した。
ローズ「しかし、撮ったとしても機械の反応は見られない。バッテリーも持たないし、そろそろ長時間の動作に対応できるように作られていないわ。」
マリー「まあまあ、いいじゃないの。試しってことでさ!」
ローズ「はぁ…。」
マリーに流されて仕方なく承諾するローズ。
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胡蝶「カメラ…?」
聖雷「マーリンさん、まずいよ。カメラを設置された。」
マーリン「えぇ…。」
マーリンは厳しそうな顔をしていた。
緋月「カメラが回ってるってことは、ずっとここから出られないの?」
胡蝶「大まかに言えばそうだな。出られたとしても、俺たちの存在と宿がバレてしまう。」
マーリン「…。」
カメラを設置すると、研究員たちは森を去った。
胡蝶「…どうやら去ったようだな。」
緋月「カメラ、こっち向いてるね。」
聖雷「映ってないと思うけど、少しでも動けばマーリンさんの魔法が解ける。」
宿から出られない状況になってしまったマーリンと3人とシユウ。
すると、マーリンがある事を思いつく。