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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【5話】聖雷と星座


 森にやってきた緋月と小夜と聖雷とマーリン。

 シユウは聖雷に抱かれている。

 4人は森の中を歩く。

 少し歩いたところで、大きな樹の近くで足を止めた。

 

聖雷「ここらへんかな。」


 聖雷は背中に背負っていた籠を床に下ろした。

 シユウも床に下ろした。


マーリン「まずは、ガラムの実ね。」

 

 マーリンは、ガラムの木を見て、聖雷と目を合わせた。

 すると、聖雷は木にしがみついた。足場をつくり、手を伸ばし、少しづつ、木を登っていく。

 

小夜「凄い…。」

緋月「すっげぇ!」

 

 小夜と緋月は木を登っていく聖雷をずっと見ていた。

 あっという間に、聖雷は実まで届いてしまった。

 聖雷は生えてる実を摘み、下の籠を見た。

 

聖雷「落とすよー。」

 

 聖雷は籠目掛けて木の実を落とした。

 マーリンは籠を真下で持ち、聖雷の場所に合わせて籠を動かした。

 実は籠の中に落ちた。

 

マーリン「聖雷、入ったわ。」

聖雷「やった!どんどん落とすね。」


 聖雷はどんどん実を摘み、籠へ落としていく。

 小夜と緋月はそれを見ていた。

 やがて、聖雷は木から降りてきた。


聖雷「こんな感じだよ。」

緋月「すげぇよ!聖雷っち。」

 

 緋月と聖雷はハイタッチをした。

 

聖雷「次は君たちの番だよ。今度はあっちの木に行ってみよう。」

 

 聖雷は違う木を指さした。

 その木はガラムの木よりも背が低く、登りやすそうだった。

 

小夜「この木は?」

マーリン「ケソの木。背が低くて、木の表面がちくちくしているから、登りやすいのよ。」

 

 上を見ると、葉の方に実がなっていた。

 

聖雷「ほら、ひし形の黄色い実があるでしょ?それはケソの実。」


 緋月はケソの木に登ろうとしていた。


緋月「よいしょっと。」

 

 緋月が上まで登ると、ケソの実をもぎ取った。

 小夜は下で籠を構える。

 

緋月「いくよー?」

 

 緋月がケソの実を落とした。

 籠の中に実が入る。

 小夜と緋月は顔を見合せ、ニコリと笑う。

 

聖雷「すごい!」

マーリン「さすがね。この調子でお願いね。」

 

 木の実収穫は、夕方まで続いた。

 小夜と緋月は飽きることなく収穫した。

 

 

*

 

緋月「ただいま〜。」

 

 宿に帰ってきた。

 緋月は木の実が山盛りになった籠を下ろした。

 

マーリン「お疲れ様。ありがとね。夕飯をつくるから、ちょっとだけ待っててね。」

聖雷「せっかくここまで手伝ってもらったんだし、今日は宿に泊まっていけば?」

小夜「えぇ、そんな。」

聖雷「こっちは大丈夫だよ。それに…小夜と、ひっきーともっと話したいんだ。ねぇ、いい?」

緋月「うん!いいぞ!」

 

 緋月は聖雷の言葉を反論することなく受け入れた。

 小夜も、迷ってはいたが、受け入れた。

 

小夜「お言葉に甘えて…。」


 

*

 

 夕食。聖雷の部屋に行くと、料理が並べられていた。

 

緋月「うわぁ!美味しそう。」

小夜「…。」

聖雷「どうぞどうぞ。遠慮なく食べて。」

「「「いただきます!」」」

 

 元気よくいただきますを言うと、緋月はご飯を勢いよく食べた。

 

緋月「美味しい!」

マーリン「良かったわ。」

聖雷「この料理もね、森で採れたものしか使ってないんだよ。」

小夜「え。」

聖雷「例えばご飯。実はこれ、米じゃないんだ。」

 

 緋月はご飯を食べる手を止め、聖雷の方を見る。

 

緋月「え!」

聖雷「これはね、米と同じような味なんだけど、米よりも栄養価が高いんだ。土の中から取れるんだよ。」

小夜「根菜?」

マーリン「まぁ、そんなものだわ。粒になって収穫できるのよ。」

緋月「米のように食べてたけど、よく見た違うね。」

マーリン「ええ。この森では米のかわりに、そのタロスイモっていうのを食べるのよ。」

小夜「(聞いたことの無い植物ばかりだ。)」

緋月「カオスイモ。」

聖雷「タロスイモ!こっちのおかずの葉っぱは、タロスイモの葉の部分。タロスグサだよ。」

 

 聖雷がタロスグサのおかずの皿を緋月の前に持ってくる。

 

緋月「タロスグサは、ニラっぽい。」

聖雷「味は全然違うよ。」

緋月「へぇ。食べたことないのばっかだ!」

 

 森で採れた食材を聖雷が紹介しながら、緋月と小夜は食べていった。

 

緋月「ふぅ…お腹いっぱい!」

聖雷「こんなに食べるとは思わなかったよ。」 

緋月「あぁ。でも、久しぶりにお腹いっぱい食べた。聖雷っち、ありがとね。」

聖雷「うん!こちらこそ。」

 

 ご飯を食べ終わると、お風呂を貸してくれた。

 森で暮らしたことがない小夜と緋月にとっては、かなり貴重な経験だった。

 

小夜「お風呂、次いいよ。」

緋月「あーい。」

 

 小夜がお風呂から上がると、緋月が交代でお風呂場へ向かった。

 聖雷の部屋に向かうが、中には誰もいなかった。

 なんとなく探しに行くと、屋上の方で、話し声がした。


聖雷「綺麗だな…。」

 

 屋上では、聖雷が空を眺めていた。

 聖雷の本には星座図鑑。

 小夜は、聖雷の方に後ろから近づいた。

 すると、聖雷は小夜に気づいた。

 

聖雷「ん?ああ、小夜か。」

小夜「邪魔して申し訳ない。」

聖雷「ううん、大丈夫だよ。」

 

 聖雷は優しく笑った。


聖雷「隣においでよ。一緒に星を見よう。」

 

 そう言うと、聖雷は小夜に向けて手招きした。

 小夜は聖雷の隣に来て、星を眺めた。


聖雷「今日はすごく星が見えるんだ。ずっと晴れてたからかな。」

小夜「そうなの?」

聖雷「うん。ここ最近は天気が悪くて、あまりはっきり見られなかった。」

小夜「…聖雷はさ、星が何で好きなんだ?」

聖雷「星ってさ、一つ一つ、明るさとか光る場所とか、全然違うんだよね。すごく明るい星もあれば、暗い星もある。でも、星という存在は光り続ける。そこが好きなんだ。」

小夜「…。」

聖雷「どんなに暗くても、どんな場所の星でも、絶えることなく光り続ける。それが僕は好きなんだ。」

小夜「そっか。」

聖雷「引いちゃった…?」

小夜「全然。」

聖雷「良かった。小夜は、好きなものとか、あるの?」

小夜「まぁ、ある。」

聖雷「僕に教えて!」

小夜「理科かな。」

聖雷「僕と似てる。僕は星以外にも、自然とか、動物も大好きだよ。」

小夜「似てるかもな。」

聖雷「えへへ。」


 聖雷と小夜が駄弁っていると、お風呂から上がった緋月がやってきた。

 

緋月「(聖雷たちを見つけて)あ!こんな所にいたんだ。探したぞー。」

聖雷「えへへ。ごめんごめん。」

緋月「誰もいなかったから心配になったよ。」

聖雷「ひっきーも一緒に星を見ようよ。」

緋月「おう!潰れたカエルの星座はどこにあんだ?」

聖雷「(呆れて)はくちょう座。今日は見えない。」

緋月「そうなのか…?」

 

 3人は笑い合いながら夜空を見上げた。

 


*

 

 森の中の小さな山。その頂上で、マーリンは夜空を眺めていた。

 すると、誰かがマーリンのもとへやってきた。

 

マーリン「あら。あなたも来たのね。」

?「 …。」

マーリン「今日はいつもより楽しかったわ。こんなに人が集まったのも、初めてよ。」


 マーリンが空を見上げて嬉しそうに話す。

 

マーリン「聖雷も楽しそうだったし。2人も笑ってた。」

?「…。」

マーリン「あなたはどうかしら。」

?「…あの子が楽しければ、いいんじゃない。」


 マーリンはにっこりと笑った。

 2人が再び夜空を見上げる。

 星はいつもより輝いて見えた。


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