【36話】友達の裏返し
翌日の夕方。
緋月は初音の家に泊まっていた。一緒にくつろぎながら、初音はスマホを見つめていた。
初音「緋月。」
緋月「なあに?」
初音「これから一緒に出かけない?」
緋月「いいよ。どこに?」
初音「会わせたい友達がいるんだ。ダメかな?」
緋月「全然いいよ。」
二人は家を出る準備を始めた。
緋月「初音の友達ってどんな人?」
初音「うーん…無愛想だけど、優しい人かな。」
緋月「へぇー。」
*
外へ出た2人。
初音「こっち!」
初音に手を引かれ、緋月は街の外れたところにやってきた。
緋月「ここ、どこ?」
初音「大丈夫。道わかるから。」
緋月「…街の外れにこんな所あったんだ。知らなかった。」
初音「…。」
さらに道を外れ、街からどんどんと離れていった。しばらく歩くと、人気が無くなってきた。工場地帯のような場所が見えてくる。
緋月「工場?」
初音「うん。」
緋月「初音の友達、こんなところにいるの?変わってるね。」
初音「そう。ちょっとだけね。」
工業地帯を進むと、天井の高い倉庫のような所に辿り着く。外見は少しボロボロだった。
緋月「…。」
初音「ここよ。」
緋月「ねぇ初音。本当に友達がここに居るの?なんか気味悪いな。」
すると、初音は両手で緋月の手を握った。
初音「大丈夫。心配しないで。」
緋月「う、うん。」
*
倉庫の扉がギシギシと音を立てて開く。
中は薄暗かった。
緋月「やっぱり、おかしいよ初音。1回外に…」
初音「紹介するね。私の友達よ。」
すると、奥から人が現れた。
緋月「…!」
奥から現れた人は、緋月を見るとニヤリと笑った。
?「久しぶりじゃねぇか。藤本。」
緋月はその人に見覚えがあった。
緋月「桐崎…?」
身体が硬直し、恐怖で震え出した。
*
小学校の教室。チャイムが鳴ると、先生の指示で帰りのホームルームをする。
生徒「ありがとうございました!さようなら!」
挨拶を終えると、ランドセルを背負い、教室から出ていく生徒たち。
女子1「先生、さようなら!」
先生「さようなら。」
その中で1人、日直の当番だった緋月。黒板を消していた。
すると、教室に残っていたクラスメイトから話しかけられた。
男子1「なあなあ、藤本くん。」
緋月「…なあに?」
男子1「手伝ってあげようか?」
緋月「大丈夫だよ…。僕一人で出来る!」
男子生徒が黒板消しを持ってきて、緋月と一緒に消し始める。
後ろで他のクラスメイトはその様子を見ていた。
すると、男子生徒がわざと黒板消しを緋月の顔の前に落とした。
緋月「うわぁ!」
男子1「あ、ごめーん。(笑いながら)」
後ろのクラスメイトも笑った。顔が粉まみれになり、咳き込む緋月。
緋月「うぅ…。」
男子1「藤本くん、大丈夫ー?」
緋月「…大丈夫!」
緋月は必死に笑顔を作った。
男子1「…。(イライラする)」
すると、もう1人の男子生徒が近づいてきて、腕を掴む。
緋月「痛!」
掴まれた拍子に袖がめくりあがる。緋月の腕には
複数の痣。
男子2「うわ!こいつ、あざがあるぞ。」
男子1「気持ちわる!」
嘲笑う男子生徒。
緋月「…。」
緋月は泣くのをずっとこらえていた。そして、教室を出ようとした。
しかし、また男子生徒に止められてしまった。
男子3「今日はオレたちに付き合ってもらうぞ。」
緋月「え。」
男子2「これから、公園で鬼ごっこするんだ。藤本、来るよな?」
緋月「…ちょっと僕、用事があって…」
男子1「あ、でも藤本はこんなあざだらけだからできないよ。」
緋月がなんとか逃げようとしても道を塞がれてしまった。すると、後ろにいた桐崎が緋月の腕を抑えた。
緋月「痛い!」
桐崎「藤本、オレたちの言うことが聞けないのか?」
緋月「うぅ…。」
桐崎は緋月に威圧をかけた。そして、緋月のカバンから体育着を奪った。
緋月「僕の…!」
桐崎が緋月体育着を持って走った。
男子1「返して欲しかったら追いかけてみな!」
緋月は桐崎を追いかけた。しかし、学校を出たところで見失ってしまった。
緋月「うぅ…。ひどいよ…。」
夕方。とぼとぼと帰る緋月。
家の前につくと、体育着の袋があった。
緋月「あ!」
急いで中身を確認する。するとそこには、泥まみれの体育着がしまってあった。
緋月「…ごめんなさい、お母さん…。」
*