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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【34話】初めての音色


初音「さぁ、なんでも頼んでいいよ。」

 

 ショッピングをしてからまた数日後。緋月と初音は街中のお洒落なカフェに来ていた。

 

緋月「本当にいいの?」

初音「気にしないで、私お小遣い今日入ったから。」

 

 カフェのメニューを見て注文し、飲み物を飲みながら話していた。

 

緋月「…こんなカフェ、近くにあったんだ。」

初音「お父さんの行きつけなの。お洒落でしょ。」

緋月「うん。飲み物も美味しい。」

 

 すると、店員が料理を持ってやってきた。

 

店員「お待たせしました。イチゴのパンケーキです。」

 

 テーブルに並べられたのはイチゴのソースのかかったパンケーキ。ちゃんと取り皿も用意してあった。

 

初音「さあさあ、食べよう。」

緋月「ありがとう!」

 

 二人はパンケーキを食べながら話した。

 すると、初音が手を止めた。

 

初音「…今日このカフェに行きたいって言ったのはね、理由があるの。」

緋月「理由…?」

 

 緋月も手を止める。

 

初音「…お願いがあるの。」

緋月「え。」


 初音の話し方から、軽いことではないと悟った。

 緋月は、真剣に初音の目を見ていた。

 

初音「私ね、実は…。」

 

 カフェの中に静寂が訪れた。でも、初音の言葉はしっかりと聞こえていた。

 俺っちの胸が熱くなるのが分かった。

 

*

 

 

胡蝶「持とうか?」

聖雷「ううん、大丈夫。」

 

 買い物を終え、宿へ帰ろうと街を歩く聖雷と胡蝶。2人とも、荷物を持っている。

 

聖雷「いやー、大変だったよ。今回の買い物は。」

胡蝶「量が多いもんな。影楼を呼ぶべきだったか?」

聖雷「なんとか大丈夫。」


 しばらく歩いていると、聖雷の荷物が地面に落ちる。買い物袋が破けてしまったことに気づいた。

 

胡蝶「破けたか。」

聖雷「どうしよ…。」

胡蝶「そこの公園で一旦整理しよう。」

 

 公園のベンチで、荷物を整理し、敗れた袋を捨てた。

 

胡蝶「これで大丈夫だな。」

聖雷「胡蝶、あれ。」

 

 聖雷は、公園の別のベンチを見る。胡蝶もそれを見た。

 そこには、男女のペアが座っていた。

 

胡蝶「緋月…?」

 

 緋月と初音だった。二人はこちらに気づいていないようだった。手を繋いで、楽しそうに笑っていた。

 

聖雷「ひっきーだ。」

胡蝶「隣の奴…。」

聖雷「彼女じゃない?ひっきー、隠してたのかな。」

胡蝶「…。」

聖雷「今度、聞いてみよっか。ねぇ、胡蝶。」

胡蝶「…とりあえず、この場を去ろう。」

 

 胡蝶に手を引かれ、聖雷も公園からでた。

 

──────────────────────


 公園のベンチ。

 

初音「今日はどうしよっか。どこか行く?」

緋月「うーん、このままでもいいかも。」

 

 手を繋ぎながら二人は話していた。

 

初音「そうだね。緋月と一緒ならどこでもいい!」

緋月「もー、初音ったら。」

 

 この前、初音が緋月に話したこと。それは告白だった。そして、二人は付き合うことになったのだった。

 

初音「今度さ、またショッピング行きたいな。」

緋月「いいよ!」

初音「やったぁ!緋月大好き。」

 

 周りから見たら痛々しいと思うくらい、イチャイチャしていた。

 

初音「そういえば…、緋月は最近家に帰ってるの?」

緋月「まぁ…ね。」

初音「なにその曖昧な返事。もー。」

緋月「違うところに帰ってるから大丈夫だよ。」

初音「違うところ?」

緋月「…友達の家!」


 宿のことを隠すために嘘をついた。

 

初音「そっか。男の子?」

緋月「…うん!」

初音「良かった。」

緋月「…マーリンさんは猫だから人間に入らないよね。」

初音「猫がいるの?」

緋月「あ…うん!!猫がいるの!」

 

 緋月は必死に誤魔化した。

 

初音「今度行ってみたいな。」

緋月「それは…まだわからないかも。」

初音「そっか。色々あるもんね。」

 

 その後も二人は公園で語り合った。

 

*

 

 

 その日の夜。ウッドデッキで胡蝶は一人、考え事をしていた。

 

胡蝶「(緋月の隣にいた奴は…琴平ことだいら初音か…?)」

 

 胡蝶は初音と緋月と同じ小学校だったので、初音の存在は知っていた。

 

胡蝶「(しかし、どう考えても緋月と付き合うようなキャラじゃない。あの二人に何があったんだ…?)」

 

*

先生「席につきなさーい。授業始まるわよー。」

 

 騒がしいクラス。授業を始めようとする先生。

 

胡蝶「…。」

 

 胡蝶は席につき、教科書を読んで待っていた。

 

先生「今日はお休みの人はいない?」


 すると、初音が手を挙げた。

 

初音「せんせ〜。藤本くんが来てません!」

男子1「またかよ、あのバカ。」

男子2「トイレでうんこしてるんじゃない?」


 クラス中に笑いが起こる。

 

男子1「バカはこなくていいよ!」

 

 すると、初音が胡蝶に話しかけた。

 

初音「ねぇ、オカマくん?藤本くん知らない?」

胡蝶「…。」

 

 初音はからかうように胡蝶をつついた。

 

男子3「初音、だめだよ。こいつはしゃべれないもん。」

男子2「女の子じゃないことがばれちゃうもんね。」

 

 またクラスに笑いが起きる。

 胡蝶は自分が女の子の格好をしていることをクラスメイトからバカにされていた。

 

先生「はいはい、静かに。藤本緋月くんは連絡なしね。」

*

 

聖雷「胡蝶!やっと見つけた。」

 

 聖雷がウッドデッキに入ってくる。

 

胡蝶「考え事してた。」

聖雷「そっか。邪魔してごめん。」

胡蝶「いや、平気だ。」

聖雷「…ひっきーのこと、ちょっと気になってさ。」


 聖雷が胡蝶の隣の椅子に座った。

 

聖雷「宿に帰ってきた時、ひっきーに聞こうかなって。」

胡蝶「最近は遅くに帰ってきているが…。」

聖雷「彼女さんのことがよっぽど好きなんだよ。許してあげよう。」

胡蝶「マーリン様に言うべきか。」

聖雷「ひっきーの口から聞こうよ。ちゃんと。」

胡蝶「…ああ。」


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