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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【29話】最悪なテスト返し


 テストの日から数日後。ついに全教科の結果が返ってきた。

 テスト返しが終わると、制服のまま、真っ先に宿へ向かった。

 宿のリビングには、2人の姿。

 

緋月「げ。」

 

 リビングのテーブルの周りに座っていたのは小夜ではなく、聖雷と胡蝶。シユウもいた。

 

聖雷「今日、テスト返しだったんだって?僕たちも楽しみにしてたよ。」

胡蝶「ちゃんと出来たんだろうな。」

緋月「…なんで知ってるの。」

 

 聖雷は少しからかうように笑った。

 

聖雷「小夜から聞いた。猛勉強してたから、結果が気になって。」

胡蝶「教えてもらったんだから出来て当然だ。小夜が来たら見せてもらうぞ。」

緋月「そんなぁ…。」

 

 すると、小夜がやってきた。

 

小夜「あ、先来てたんだ。」

緋月「小夜っち〜。ひどいよ、二人でテストの結果発表するっていったのに。」

小夜「言っちゃだめだった?」

胡蝶「貴様、俺たちに言えないような点数を取るつもりか。」

緋月「そんなんじゃないよ。」

聖雷「まぁ、とにかく小夜が来たから、発表しようか。」

 

 緋月と小夜はテーブルの周りに座った。

 カバンから答案用紙を取り出し、まだ見えないように裏返した。

 

小夜「じゃ、始めるか。まずは国語。」

緋月「うん!せーの。」

 

 緋月は国語の答案用紙を裏返した。

 右上に書かれた数字は21。

 

胡・聖・小「…。」

緋月「ほらね、やっぱり俺っちこんなに取れた!前よりもグーンと上がってるよ。小夜っちのおかげだよ。ありが」

胡蝶「貴様…!」 

 

 緋月が胡蝶に睨まれる。

 

緋月「なんでぇ…。」

聖雷「100点満点…だよね。」

緋月「そうだよ!前は4点だった。10点以上上がったよ!」

小夜「伸びたけども…これはいいと言えないね。」

 

 胡蝶が他の教科の答案用紙もめくり始める。

 

緋月「ちょ、胡蝶!」

 

 緋月が止めようとするが、すべて胡蝶に点数が見られてしまった。

 

胡蝶「貴様…!小夜の教えをすべて無かったことにしやがったな!!!!」

 

 胡蝶が緋月が口論になる。数字と英語の答案用紙を見る聖雷と小夜。

 数字11点。英語3点。

 

小夜「…。」

聖雷「さ、小夜っちのせいじゃないよ。絶対。あはは…。」

 

 あまりの点数の酷さに言葉を失う小夜。

 それを励ます聖雷。喧嘩する緋月と胡蝶。

 場は混乱していた。

 

小夜「どんな回答をしたんだ…。」

 

 小夜はカバンから問題用紙を取り出し、答えと照らし合わせてみる。

 緋月と胡蝶も寄ってきた。

 

小夜「国語は漢字がめちゃくちゃだね。読み取りもだけど。」

 

 すると、胡蝶が解答用紙の中からあるものを見つける。

 

胡蝶「なにこれ。」

 

 胡蝶が指したものの問題を見てみた。

──────────────────────

 [問題]下線の漢字の読みを平仮名で書きなさい。

 (5)芳しい花の香り。

   ̄ ̄ ̄

──────────────────────

胡蝶「…緋月の解答がおかしい。」

 

 この問題に対しての緋月の回答は「いやらしい」。

 

聖雷「ひっきー、これはまずいよ。テスト中に変なこと考えてたでしょ。」

緋月「違うよ、これは小夜っちに教わったの。」


 胡蝶と聖雷が一斉に小夜の方を見る。

 

小夜「絶対に教えてません。」

聖雷「だよね。」

胡蝶「ここにも馬鹿な回答がある。」

──────────────────────

 (7)ゴミの塊

   ̄

──────────────────────

 この問題に対して、緋月の回答は「たましい」。

 

小夜「惜しいんだよな…。」

聖雷「捨てられたゴミたちに残留思念って考えれば合ってるね。」


 緋月の答案用紙を見るのが楽しくなってきた3人。

 

胡蝶「次は数学。奇跡的に計算問題が合ってたようだな。」

 

 そしてまた、奇妙な回答のところで目が止まる。

──────────────────────

 [問題]x=2のとき、以下の式のyを求めなさい。

 (1)y=x+8

──────────────────────

 この問題に対して、緋月は「y=x=2+8」と書いた。

 

小夜「はぁ…。」

緋月「だって、そのまま入れたらこうなるよ。」

小夜「だろうよ。訳分からなくなってるし。」

胡蝶「ほとんどそんな回答になってる。」


 呆れる胡蝶と小夜。最後に英語の答案用紙を見た。

 

胡蝶「これはひどい。」

小夜「1問しか当たってない。しかも記号問題。」

──────────────────────

 [問題]次の英単語の読み方と意味を答えなさい。

 (1)change

 (2)same

 (3)important

──────────────────────

 3人は緋月の回答を見ると笑った。

 

胡蝶「くっ…。馬鹿すぎる…。(笑いながら)」

緋月「え?なんでよ。」

 

 緋月の回答はこうだった。

 (1)change ちゃんげ お茶?

 (2)same さめ 海のサメ

 (3)important いぽたん 人の名前

 

緋月「サメはあってる自信ある。」

聖雷「絶望的だね。」

胡蝶「貴様…本当に小夜に何を教わってたんだ。」

緋月「小夜っちは、英語を普通に読みすぎて発音良すぎてよく分からなかった。」

小夜「ひっきー…。」

 

 そこへ、マーリンがやってきた。

 

マーリン「賑やかね。あら、小夜ちゃんも来てたの?」

小夜「はい。」

聖雷「マーリンさんおかえりなさい。ひっきーのテストの結果を発表してたんだ。」

マーリン「私にも見せて。」

 

 マーリンが答案用紙をすべて見た。

 

マーリン「国語が21点…?数学11点!英語が3点…。」

胡蝶「奴の場合、勉強してこの点数なんだ。」

マーリン「小夜ちゃんは。」

 

 小夜が自分の答案用紙を見せる。それをマーリンが受け取り、見る。

 

マーリン「…小夜ちゃんはがんばってるのね。」

 

 小夜の答案用紙には98、100、97の文字。

 

緋月「小夜っちすげー!」

小夜「…そこまで勉強してないけど。」

マーリン「勉強したなら、これくらい取れて当たり前なのよ。」

緋月「うぅ…。」

 

 マーリンが少し考えた。その前で大人しく座る緋月。

 

マーリン「…決めたわ。緋月ちゃん、明日から毎日、1時間は勉強しなさい。」

緋月「えぇ!?」

マーリン「当然よ。この点数じゃ、将来は心配だわ。行く宛が無くなっちゃうわ。」

聖雷「言われちゃったね。でも、がんばろう!」

緋月「うぅ…。」

マーリン「分かった?」

緋月「はい…。」

 

 緋月がマーリンの元で1日1時間は勉強することになったらしい。これで少しはましになって欲しいと思っていた。

 その日は、マーリンに付きっきりで1時間、勉強を見てもらっていた。

 その頃、ウッドデッキでは。

 

聖雷「小夜、お疲れ様。ひっきーに勉強教えるの、大変だったでしょ。」

小夜「まあまあね。」

聖雷「まさかマーリンさんが勉強しなさいって言うなんて思ってもいなかった。」

小夜「そうなの。」

聖雷「ああ見えて、マーリンさんは人の人生に踏み込まないからね。教えてくれることはあっても、強制的にやらせることは今まで無かったよ。」

小夜「ひっきーがバカすぎたのかも。」

 

 聖雷が空を眺めながら考え事をする。

 

聖雷「マーリンさんって、ひっきーの将来を心配してるのかもね。」

小夜「え。」

聖雷「…珍しいかも。そんなことがあるなんて。僕には絶対無かったよ。」

小夜「そうなんだ。」

聖雷「まぁ、少し嬉しいかも。行く宛が無くなっちゃったら困るのは自分だもんね。僕も考えておかなきゃ。」

小夜「宿がなくなったらってこと?」

聖雷「うん。大人になったら仕事して、マーリンさんに恩返しするんだ。それだけは決めてる。でも、何の職業につくかとかはさっぱり。」

小夜「…そんなもんだよ。今のうちは。」


 小夜が少し笑う。

 

小夜「今、俺たちの同級生を見てても、しっかりとした夢がある子って少ないからね。まだ考える余裕があるんじゃないかな。さすがに高校生になってそれはまずいかもしれないけど。」

 

 聖雷が小夜の顔を見て笑った。

 

聖雷「そうだね。」

 

 空を眺めながら聖雷と小夜は話していた。

 時々、下の階から緋月の泣き声がした。

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