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僕たちは  作者: 猫眼鏡
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【27話】一か八か


小夜「…道に迷った?」

 

 進んでも進んでも宿が見当たらない。ウロウロしていた。

 

小夜「(おかしいな。ここらへんにいつもは宿があるはずだ。)」

 

 小夜は、昔マーリンが言ったことを思い出した。

 

小夜「(あの研究者がいるから、宿の姿が見えなくなっているのか…?)」

 

 すると、遠くの方に檸檬の姿を見かけた。

 檸檬はこちらに向かって歩いて来ていた。

 

小夜「(まずい、あの研究者に見つかったら、今度こそ森からつまみ出される。)」

 

 一旦、草むらに隠れた。草の間から檸檬の姿を観察する。

 

──────────────────────


檸檬「地質は問題なさそうだな。次は植物か。」

 

 地質の検体をバッグにしまうと、再び機械をかざし始めた。

 

檸檬「この森は、昨日調べた通り、かなりの木が生えているな。木の実も穫れるし、環境はいい方だけど…。」

 

 手元にあるファイルを開き、中の資料を読んだ。

 

檸檬「やはり、地域の人からしたら寄りにくいか。昔に小さい子が事故で亡くなってるからね。その頃から、森は危ないって認識が捨てられないみたい。」

 

 辺りの木を調べ始めた。

 

──────────────────────


 檸檬の動きを見計らって草むらから出て、目につかないところに移動した小夜。


小夜「(間違いない。ここらへんは宿の裏口付近だ。マーリンさんは宿の存在を一時的に隠してる。研究者の目に入らないようにだろうな。)」

 

 すると、小夜の目の前にいきなり、宿が現れる。

 

小夜「え。」

 

 窓には、影楼と聖雷。裏口側の方をジェスチャーで指していた。

 小夜は裏口を見た。裏口の扉は開いていた。

 中から胡蝶が手を振っていた。

 

胡蝶「(小声)小夜、早く来い。」

小夜「(小声)胡蝶!」

 

 いきなり、森の中に響く高音。

 檸檬の持つ機械から鳴っていた。

 

檸檬「!?」

 

 檸檬が驚いた。檸檬は宿は見えていないが、機械の音に反応し、後ろを振り返ろうとしていた。

 

檸檬「あれ?エラーかな。」

 

 木に向かって機械を掲げる檸檬。その機械を地面に置いて、辺りを見回そうとしていた。

 

胡蝶「(小声)早く!!こっちへ!!」

 

 小夜は裏口に全力で走る。

 胡蝶は小夜の手を引き、強引に宿の中へ連れ込んだ。

 その瞬間に檸檬が宿の方に振り向いた。

 

聖雷「…!」

影楼「気づかれたか!」

 

 完全に後ろに振り向いた檸檬。

 

檸檬「…!」

 

 窓から様子を見ていた2人はなにもできなかった。

 

聖雷「うわわわあああどうしよう…絶対気づかれたよね。」

影楼「いや…、あれをみろ。」

 

 窓から再び檸檬を見た。

 

──────────────────────


 いきなりの高音。機械から鳴ったものだった。音と軽い振動に驚いてしまった。

 機械のエラーなのか調べるために、手に持っている機械を地面に置いて振り返った。

 

檸檬「…!」

 

 振り返った瞬間、強い風が吹いた。

 しかし、そこにはエラー音が鳴った機械の元以外、なにもなかった。

 

檸檬「…。」


 檸檬は元の機械を調べる。とりあえず、音を止めた。

 それ以外は異常がなかった。

 

──────────────────────


 胡蝶は小夜を受け止めた。

 なんとか宿の中に入れたらしい。

 

小夜「うぅ。」

胡蝶「…大丈夫か?」

小夜「うん。胡蝶こそ。」

胡蝶「俺は大丈夫だ。…無事、宿の中に入れたな。」

小夜「でも、胡蝶に引っ張られた時、研究者がこっちを見ようとしてた。」

 

 そこへ、聖雷と緋月と影楼がやってくる。

 

影楼「なんとかバレなかった。」


 その言葉で一気に安心した。

 

聖雷「兄ちゃん、鈍感で良かった。」

緋月「いやぁ、でもかなりの賭けだったね。聖雷っちの兄ちゃんの後ろで宿を出すなんて。」

小夜「兄ちゃん…?」

胡蝶「あの研究者。聖雷の兄の檸檬。」

小夜「そうなんだ。」

 

 そこへ、マーリンがやってくる。

 

マーリン「危なかったわ。あと少しで小夜ちゃんの姿が消えるのがバレてしまうところだったわ。」

胡蝶「…にしても、あの機械の音はなんだったんだ。」

影楼「宿が出た瞬間に鳴ったもんな。…ったく。」

マーリン「…。」

 

 マーリンが深刻そうに答えた。

 

マーリン「…あの機械が何なのかはわからないけど、間違いなく宿を出したせいね。何かが反応してしまったんだわ。」

聖雷「兄ちゃんは気づいてなさそうだったけど…。機械が反応してた…。」

マーリン「そうね。…でも、小夜ちゃんが安全で良かった。」

小夜「マーリンさん、宿のみんな、ありがとう。」

 

 

*

 

 やがて調査が終わると、檸檬は帰っていった。

 全員、安堵する。

 

聖雷「(窓の外を見て)やっと帰ってくれた。」

影楼「…疲れたぜ。」

 

 壁にもたれ掛かる聖雷と影楼。


緋月「やっと外に出られるよ〜。」

胡蝶「貴様は外に出る用事が無いだろう。」

緋月「うるさいなぁ〜。」

小夜「…でも、このまま閉じ込められなくて良かった。」

胡蝶「まあな。小夜が帰れなくなっていた。」

影楼「…俺も今のうちに小屋に帰る。チビも家に帰るだろ?」

小夜「うん。」

 

 小夜と影楼は宿を出た。

 

 外へ出ると、真っ赤な夕焼け。

 

影楼「研究者の奴、こんな遅くまでなんかやってたのかよ。」

小夜「そうだね。」

影楼「ったく。」

 

──────────────────────


 夜。水無月環境研究所の檸檬の研究室。

 研究所はもうとっくに閉まっていたが、檸檬はただ1人、パソコンをいじっていた。

 

檸檬「やっぱり、今日のエラー音はおかしい。機械も買ったばかりだし、森でエラーを起こすようなポンコツじゃない。何かあったはずだ。」

 

 機械の情報を分析する。画面いっぱいに映し出されるERRORの文字。

 そこから、あることが分かった。

 

檸檬「検出不可能…。」

 

 エラーを起こした機械の原因は、解明されていない、空気を感じ取ったからだった。

 

檸檬「…これは、理事長に伝えなきゃ。」

 

 檸檬は資料を鞄に詰め、研究室を飛び出した。

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