表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちは  作者: 猫眼鏡
16/160

【15話】ようこそ、マーリンの宿へ


 よく晴れた日の昼。

 予定通り、宿の改築をしていた。


聖雷「うぅ…疲れたよ…。」

小夜「がんばれ。あと少し。」

 

 森の木を切って木材を作る胡蝶。

 それを運ぶ聖雷と小夜。

 影楼は、マーリンの指示で家を組み立てていた。

 

影楼「おい、遅せぇぞ聖雷。」

聖雷「(びくっとして)はぁい。」

小夜「それにしても、木材、重いね。」

 

 影楼はニヤッと笑う。

 

影楼「まぁ、女にしては力がある方じゃねぇか?」

聖雷「珍しい。影楼くんが人を褒めるなんて。」

影楼「っるせぇ。」

 

 影楼はまた作業し始めた。

 小夜と聖雷は顔を見合わせて少し笑うと、木材の運搬に精を出した。

 

影楼「ところでマーリンさん、今回はどんな感じに仕上げるんすか?」

 

 すると、マーリンが宿の建設計画の紙を取り出した。

 

マーリン「まず、ざっくり言うわね。宿は3階建てで、1階と2階は逆台形型の断面よ。3階は長方形ね。2階にはウッドデッキをつくるのよ。部屋自体は2つくらい増やそうと考えているわ。」

影楼「おう。」

マーリン「デザインは影楼に任せるわ。」

影楼「おう。」

 

 影楼は黙々と作業を続けた。

 マーリンは完成を楽しみにしながら指示している。

 すると、緋月がやってきた。荷物を持っていた。

 

聖雷「あ。緋月!」

緋月「ただいま。」

聖雷「おかえり。持ってきた?」

緋月「うん。いっぱい詰めてきたよ。」

聖雷「お母さん、大丈夫だった。」

緋月「うん。家に居なかった。だから、置き手紙置いてきたよ。」


 緋月は近くの木の近くに荷物を置き、改築の手伝いを始めた。

 

小夜「ねぇ、聖雷。緋月、今から何があるの。」

聖雷「今日から本格的に泊まるの。だから、家から荷物を持ってきたんだ。」

小夜「あ、そっか。」

 

 緋月はいつもよりワクワクしているような気がした。

 それを見て、小夜も嬉しくなった。

 


*

 

 休憩時間。

 ペットボトルの水を飲みながら、近くの日陰で身体を休めた。

 

緋月「(水を飲んで)ぷはー。」

胡蝶「かなり木を切ったな。」

聖雷「僕もう腕が疲れたよ…。」

影楼「まだまだだぞ。」

マーリン「…でも、影楼が来てくれて本当に助かってるわ。私たちだけだと何年かかるか…。」

聖雷「本当だね。ありがとう、影楼くん。」

シユウ「にゃー。」

影楼「おう。」

 

 宿のメンバー全員は、動き続けた。

 途中で交代をしたり、休憩をしながら、宿ができるまでずっと作業し続けた。

 そして、5日が経った。

 

 

*

 

緋月「ついに…。」

 

 3階建ての建物に、2階にはウッドデッキ。

 入り口は、猫の形をしていた。

 前よりも、広くなっているらしいが、あまり面積は広く使っていないようだった。

 入り口の松明に日が灯ると、宿は完成した。

 

全員「やったー!」


 緋月はすぐに宿の中へ走った。

 聖雷もシユウも興味津々だった。

 胡蝶は呆れつつも聖雷たちを追いかけた。

 

影楼「こんなもんでいいか?」

マーリン「ええ。嬉しいわ。」

小夜「本当に、ありがとう。俺はあんまり関係ないけど。」

影楼「いや。そんなこたぁねぇ。」

小夜「え。」

マーリン「実はね、小夜ちゃんのために、余分に部屋を作ったのよ。」

影楼「あぁ。だから泊まりに来ても大丈夫だぞ。」

小夜「本当?」

マーリン「えぇ。この考えは影楼が考えたのよ。優しさ、受け取ってあげて。」

影楼「い、言うなよ…。」


 マーリンは笑顔で小夜のことを見つめた。

 影楼は後ろで恥ずかしそうにしていた。

 

小夜「ありがとう。影楼。」


 3人は宿に入った。

 

 宿の中。

 綺麗で広いフロアに皆、心が踊った。

 

緋月「うわぁ!ひろーい。」

聖雷「リビングもあるよ。これで、みんなでご飯が食べられるね。」


 1階には、フロア、リビング、キッチン、マーリンの部屋。

 宿のみんなが全員くつろげる場所だった。

 

影楼「2階から上は個人の部屋だ。3階に、空の部屋がある。小夜はそこを使え。」

小夜「うん。」

 

 小夜は3階へ上がった。

 緋月と聖雷はリビングの畳で寝転がっていた。

 

緋月「畳だ〜。」

聖雷「みんなで鍋とかしたいね。」

 

 皆、新しい宿に気に入ったようだった。

 影楼は安堵した。

 


*

 

 新しい宿の探索を終えると、マーリンは全員をリビングに集めた。

 マーリンの前に座る5人。

 聖雷の膝の上にはシユウ。

 

マーリン「わざわざ集まってくれてありがとう。本当は、緋月ちゃんだけを呼ぶつもりだったんだけどね。全員、この話を聞いてもいいと思ったわ。」

緋月「話って?」


 マーリンは真剣な顔で話を始めた。

 

マーリン「緋月ちゃんが正式に宿で暮らすことになったから、宿でのルールを話すわ。他の人も聞いても大丈夫よ。関わる上で大切なことなのよ。」 

緋月「はい。」

マーリン「まず1つ目。宿に泊まるからには週に一回、私のお手伝いをすることよ。事情がある時は言ってくれたらなんとかするわ。」

聖雷「お手伝いは、毎回何をやるか分からないからね。何が来てもいいように、構えておくんだよ。」

緋月「うん!」

マーリン「2つ目。風呂掃除は必ず当番がやることだわ。」

聖雷「当番と言っても…。僕と緋月だけだね。時々胡蝶になるけど。」

マーリン「3つ目。街へ行く時は必ず宿のメンバーに言うことよ。聖雷か、私に言ってちょうだい。」

聖雷「宿から一度、家に帰る時もだよ。忘れると心配になっちゃうから。」

マーリン「4つ目。この宿は私の特殊な力によって、普通の人から見えないようにしてあるのよ。関係者は宿にすんなり行けるようになってるわ。」

 

 小夜は何かを思いついたように顔を上げた。

 

小夜「(宿の存在を知らなかったら、宿に辿り着かないというわけか。だから、宿を初めて来て以来、迷わなかったんだ。)」


マーリン「5つ目。これが最後よ。」

 

 マーリンは一度、大きく息を吐いた。

 

マーリン「この宿のことは、絶対に誰にも言わないことよ。」

 

 緋月は少し驚いていた。

 

緋月「言っちゃだめなんですか。」

マーリン「えぇ。絶対に。」

緋月「…。」


 少しの間、沈黙が続く。

 すると、聖雷が口を開く。

 

聖雷「本当はね、言うつもりじゃなかったんだけど…。」


 マーリンと聖雷が目を合わせて合図をした。

 

聖雷「マーリンさんは、特別な存在なんだ。特殊な能力も持ってるし、喋る猫なんて普通、いないでしょ?そんなマーリンさんが外の人にバレたらまずいの。だから、誰にも言わないで。」

緋月「特殊能力?」

マーリン「えぇ。魔法みたいなものよ。」 

緋月「すげぇ!」

聖雷「ずっと暮らしていけば、分かるよ。」


 緋月は魔法という言葉を聞くと、興味津々にマーリンのことを見つめた。


マーリン「…でも、緋月ちゃんは守ってくれそうね。この様子を見ていると。」

 

 緋月はキラキラとした目でマーリンを見ていた。

 呆れる胡蝶と小夜。鼻で笑う影楼。

 

マーリン「とりあえず、宿のルールは分かったかしら。」

緋月「はい!」

 

 マーリンは、にっこりと笑う。

 

マーリン「良かったわ。じゃあ、正式に登録ね。」

 

 マーリンは緋月の方を見た。

 

「ようこそ、マーリンの宿へ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ